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つぎはぎマリーの子守唄  作者: 宮澤


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3話 商人ニケ

 試せないのか、と皆で落ち込んでいた時に丁度良く来訪者があった。

 それが茶葉を売りに出している商会の人間、ニケである。


「品物を取りに来た」


「はい、こちらに。……ねえニケさん。少し私に付き合って頂けませんか?」


「―――は?」


 ニケはそのオニキス色の鋭い目元を更に細め、マリーを見つめている。

 一見睨んでいるかのように見えるが、そうでない事をマリーは最近分かってきた。


「いえね、ちょっと占いをしてみたいのだけど相手がいなくて……ニケさん何か占いたい事ありませんか?」


「―――ない」


 深いため息と共に出された声にマリーは少しがっかりした。

 

「そうですか……残念です」


「………」


「………」


「………明日」


「え?」


「明日は、晴れるか?」


「!す、すぐに占ってみますね!座ってお待ちくださいな」


 マリーは慌てて台所へと向かい、お湯を沸かし、茶器に綺麗に洗ったクロベルの花を入れた。


『マリー、光魔法を使う所を見られるのは危ないからここで行ったほうが良いと思うよ』


「そっか、希少なんだものね。ありがとうございます、アーシュ」


『うん。初めてがあの男っていうのは物凄く気に入らないけれど、やっぱり興味あるしね』


『イブは凄く楽しみ。早く魔力流して』


「じゃあ、アーシュ。力を借りますね」


 茶器に両手を翳してマリーは心の中で尋ねる。


(明日は晴れますか?)


 すると、ほわり、と淡く光ったクロベルの花弁がじわじわと水色に染まっていった。

 その美しさにマリーは声も出さずに見惚れた。


『わ、凄い!あの本嘘じゃなかったんだ』


『でもこれ、どっちなんだ?晴れの空?それとも雨?』



「晴れですね」

『晴れ』


 グレンの問いに答えたのはマリーとアーシュだった。


『なんでアーシュも分かるんですの?』


 エバの問いにアーシュは答える。


『……多分だけど、俺の魔力だからかな。マリーが俺らの魔力を使うと、その持ち主も感覚を共有するのかも知れない―――俺とマリーの共同作業……』


『へえ〜!マリー、今度はわたしの魔力使ってみてよ!』


『イブも。気になる』


『あ!オレも!』


「と、とりあえずこのお茶をニケさんに持っていきましょう」


 カップに注いだ空色のお茶を盆に乗せて、マリーは応接間まで急いだ。



「ニケさん、これをどうぞ。そして明日は晴れますよ」


「………凄い色だな」


「あの、これは占いに使ったので、ニケさんに飲んでいただかないといけなくて……」


「………」


 眉間にこれでもかと皺を寄せたニケがそのままにカップを手に取り茶を啜った。



「……っ上手いな。飲んだことのない味だが、後味が爽やかだ」


『なんだこいついきなり評論家になりやがって』


『や、やめてよアーシュ!笑っちゃうじゃん』


『あ、アーシュはマリーに近づく殿方に辛辣になるのはおやめなさいな』


 ジェシカとエバの笑い声は聞こえないふりをして、マリーはニケを見送った。





 それから何度かニケを占った。

 ニケは天気のことではなく、もっと様々な事を聞いてきた。

 そうして、持ちかけられたのだ。

 この占いを自分以外にもしてみないか、と。


 意外にもアーシュはこれに賛成した。

 その理由はマリーには教えてはくれなかったが。

 


 こうしてマリーは、茶葉の生産ともう一つ、占い師という職業も得たのだった。


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