2話 茶葉占い
『マリー、お客さんだよ』
チリンチリンと、玄関扉に付けた鈴の音が聞こえた。
イブの声にマリーは作業をしていた手を止める。
「あら、久しぶりですね」
身だしなみを整えて、フード付きのマントを被る。
マリーの存在はある意味で有名なので、その姿が見えないように。
かちゃり、と扉を開けるとそこには顔馴染みの商会の男と共に、1人の女性が立っていた。
目元には仮面を着け、口元は扇子で隠している。
―――と言う事は。
(貴族の方ですね)
ちらり、とフード越しに男へ視線を送ると小さな頷きが返ってきた。
「どうぞ、こちらの部屋へ」
玄関から入ってすぐ、右横にある応接間へと案内をする。
そこが、マリーのもう一つの仕事部屋であった。
※
―――3年前の事だ。
『そういえばマリー、茶葉占いって知ってる?』
「茶葉占い……?初耳です」
それは茶葉を作るのにも慣れてきたとある日の午後。
休憩用のお茶を淹れようとしていたその時だった。
イブが不意にそんな事を問いかけてきたのだ。
『わたくしも知りませんわ』
『わたしも初耳!』
『オレも知りたい!』
『イブもね、本で読んだ事があるだけなんだけど……クロベルって花があるでしょ?この森にも咲いてる白い花。あれをね、茶器にお湯と淹れて占いたい事を思い浮かべながら光魔法を流すと花弁とお湯の色が変化するんだって。それで何故か魔力の流し手にはその答えが読み取れるって占い』
「凄いですね……」
『それって占い終わった後その茶器の中身はどうするんだ?』
グレンの問いにイブが答える。
『えーとね、確か占われた側が飲み干すんだったはず。クロベルって普通に香草茶にも使われる花だし』
「確かに私もよく飲んでます。この森でもよく取れますし、ほのかな甘みがあって美味しいですものね」
『エコだね……でも光魔法限定じゃ実現できる人かなり少ないよね?希少だもん、光魔法の使い手』
そう、ジェシカの言う通り光魔法の使い手の数はとても少ない。
この国でも国家公認で公表されているのは30名程度だ。
『そうですわね、せっかくお花は近くにあるのに見れないのは残念ですわ』
『オレも見たかったな〜!』
『……あのさマリー』
「どうしました?アーシュ」
『……俺たち一つになったわけでしょ』
『うわっ!なんか言い方がやらしい!』
ジェシカの横槍を無視してアーシュは続ける。
『俺たちの属性魔法をマリーが使うことはできないのかな?俺、光属性なんだけど』
「え」
『は?』
『マジ?』
『ええ!?』
『まあっ』
そうして、驚きそのままに早速試してみることにしたのだが。
結論から言えば、マリーは光魔法を使う事ができた。
茶器に添えた手からは淡い光を放ち、成功したかに思えたのだが。
クロベルの花は真っ白のままだった。
それぞれの占いたい事を試してみたがどれも上手くいかず。
『あ、忘れてた。占う側は自分自身の事を占えないって書いてあったかも……と言うことはやっぱりイブ達は6人で1個体という事……??』
イブがその大切な一文を思い出す頃には外は真っ暗になっていたのだった。




