11話 お墓参り②
凛々しい眉をこれでもかと顰めた男は、明らかにマリーを警戒していた。
「……何故妹の名を?」
「いも、うと……」
『……お兄ちゃん。大きく、なってる』
『お兄様!?』
『……まあ、イブの顔は幼い時しか分からないけど、似てるものね』
『色味が全く一緒だな!』
「何故、と聞いているんだが。……私は半月に一度は此処を訪れている。しかし貴女には今まで一度だって会ったことはないはずだ」
トパーズ色の優しい色合いをした瞳は、どこか薄暗く、濁っている。
――イブの生家は辺境伯だ。
領地から王都まではかなりの距離がある。
そこに、高頻度で来ていると言うこの人は。
『……マリー。あの、その、適当に誤魔化して良いよ?なんて言えば良いかな……。グレン、アーシュ思いつく?』
「……妹さん――イブ様と面識があります。……この屋敷で、出会いました」
『マリー!』
『イブ、君のお兄さんは幼い頃から聡かった。どう誤魔化しても無駄だと思うよ。……それにイブだって、会えて嬉しいでしょ?』
『……うん』
イブとアーシュの会話も今のマリーには届かない。
緊張で、喉が張り付く。
「――つまり、貴女はあの……あの事件の生き残りだと……私はこれでも、生存者6名が誰かは確認済みだ。そして、その内の5人とは会ったことがある」
「………」
「……ただ1人、面会の許可が降りなかった人がいる。――マシュー殿が少しでも貴女が傷つく可能性のある事を全て、許さなかった」
「そう、だったんですか……」
マリーの知らなかった事実に、酷く驚く。
(マシュー様は本当にずっと、守り続けてくれている……)
「貴女が……マリー・トルジア伯爵令嬢か」
「……爵位は返上しましたので、今はただのマリーです」
「ああ、そうか……すまない。マリー嬢、貴女はあの日妹と話を?ああ、いや待ってくれ」
混乱した様子の男は、額をその長い指で何度か叩いた後改めてマリーへと向き直った。
「先程は失礼な態度をとった。すまない。私はルイス・アーフべルト。――近くに我が家の別邸があるんだ。そちらで詳しく話しを聞かせてもらえないだろうか」
その言葉にマリーは思わず左腕に視線を向ける。
『……ごめんね、みんな。イブ行きたい。もう少し……お兄ちゃんと同じ空間で過ごしたい』
『当たり前ですわ』
『行きましょ』
『兄君に会えて良かったな!イブ』
『良かったね』
其々の返事を聞きマリーも視線をルイスに向けた。
「ぜひ、お邪魔しても宜しいでしょうか?」
「ああ、ありがとう」
口の端を少しだけ上げて笑ったその顔に、マリーは幼いイブの姿が重なって見えた。




