危険
「ねぇリディ?リディは誰の物かわかってる?」
私は今ノアに部屋の隅に追いやられ、完全に逃げ場を失っている。おかしい。何故こんな事になっているのだろうか…。今日1日を考えてみる。
朝ラナといつもの定例会議をして、いつも通りハルト様の執務室へと向かった。しかし向かう途中体調が悪くなっている人がいて医務室へと連れて行った。制服が白龍騎士団の方で今まで接触の無かった私は少し舞い上がった。白龍は近衛騎士団なのでキチッとした白色に青色の装飾が施された騎士服、裏地が綺麗な質のいいマント…良い。同じ白でもノアのとは形と装飾が違い、やはりどこの騎士服も捨てがたい。
騎士様を送り届け急いで執務室へと走った。遅かったねとハルト様に心配され、さっきの事を説明する。偉いねって頭を撫でられ仕事に取り掛かった。
お昼休憩ラナの所へ向かうと、廊下で知らない人に話しかけられた。誰?朝医務室に連れて行って頂きありがとうございますとお礼を言われる。あぁ朝の。顔を見ていないのでわからなかった。
「暑気にやられてしまい倒れる寸前で、本当貴方のおかげで助かりました。お礼をしたいのですが今からお昼休憩ですか?」
「あ、はい。お礼など結構ですよ。当たり前の事をしただけですので。」
「いえ、とんでもない。実際声をかけてくれたのは、貴方だけでした。お礼はさせて頂きたい。」
あぁでは今から食堂行くのでお昼奢って頂けますか?と提案する。早く終わらせるのが1番だと思った。もっと高くていいのにと言われるが断る。白龍騎士団の方はカイル様というらしい。一緒にラナの所へ向かい成り行きを説明し食堂へと向かった。
リディア嬢には本当感謝しています。買っていただいたお昼を一緒に食べながら軽く話をすると、カイル様はずっと感謝をしてくれ、申し訳無いくらいに良い人。また見かけたら話しかけていいですか?と聞かれ、話すくらいならと思い了承した。ラナに大丈夫?と小さな声で聞かれたけど、何がだろう?と思いつつ大丈夫だよーと軽く返事をする。
お昼休憩が終わり戻る途中、本部の人達に男前とご飯食べてたなー!彼氏か?と聞かれる。違いますよ!と否定するが、はいはいって流される。私の彼氏はノアだけだし!と思いながら部屋に入った。
夕方まで仕事をして帰るかーと思っていたら、扉がノックされリディア嬢彼氏来てるぞ!って。ハルト様は少し出かけてるし来てるって変な話だなと思い見に行く。カイル様だ。慌てて駆け寄ると帰るなら食事に行かないかと誘われる。何故?と思い押し問答していたらハルト様が戻ってきて唖然とした顔で見ていた。
リディア仕事の話あるから来てと言うハルト様に、総団長若い人達の邪魔したらダメですよーってからかう声。ハルト様は微笑んでいたけど目が笑ってない。ね?行こうよ?と空気が読めず手を取り誘ってくるカイル様…。
ハルト様が凍りついた笑顔のまま入っていく。今日は用事があるのですいませんと謝り、じゃまた今度ね!と言うカイル様を振り切り追いかける。
お疲れ様ですと話しかけるけど、いつもと違って優しく笑ってくれない。ハルト様が立ち上がり近寄ってくる。そして冒頭の発言へと繋がる。
「ねぇリディ?リディは誰の物かわかってる?」
「ノア?どうしたの?」
「なんで私以外に触らせてるの?」
えぇ…触らせてないし。白龍のカイルだよね?何処で知り合ったの?とどんどん近寄ってくる。私はジリジリ下がりながら、朝の医務室へ連れて行った人ですと説明をする。リック様が今日居ないのが仇になっている。居たらこんな事にはなっていない。
「なんでそんな人に迫られてるの?彼氏何て言われてさ!彼氏は私じゃないの?」
カイル様を彼氏って言ったやつを締めてやりたい。もちろんノアが彼氏だよ!って。じゃ何で触らすの?ってなる。難しい。ご飯誘われたの?て聞かれ断ったよと言うが当たり前だよね?って詰められる。もう後ろは壁だ。これ以上は逃げられない。
「はぁ…ゴメン。リディが触られたと思うと我慢できなくて。もう接触しないでよね。朝医務室連れて行っただけなんだよね?」
あ、お昼休憩一緒に食べ…言い終わる前に唇が重なる。は?って完全に怒っている。お礼がしたいって…と説明するが何度も唇が重なり止まらない。首元を支えられ噛みつくように口付けをされる。壁に背中を押し付けられているので逃げられない。いつもと違って怖い。涙が出てくる。
「泣かないで?嫌いになる?」
涙を舐めながらハルト様が聞いてくる。優しくないハルト様は嫌いって言うと、ゴメンって抱きしめられる。軽く口付けをされ私の乱れた髪を直してくれながら謝ってくれる。
「公表する。もう婚約者になるしそのタイミングで言う。リディが誰かに迫られるとか我慢出来ない。私以外が彼氏とか言われるのも許せない。」
えぇ…迫られてないし、これからも迫られないよ?私モテナイのに。ハルト様にダメ?と可愛く甘えられ、了承してしまう。あぁ私はこの顔に弱い…自分の弱さに泣きたくなる。公表する事で色々あるだろうし、職場や社交界でも陰口も言われるだろう。でも嬉しそうなハルト様を見ると、まぁいいかって覚悟を決めれるくらいには私はこの人が大好きだ。




