第三章十一話...フィクサー
雲を、天を割る二つの衝撃が爆ぜ、暗闇に瞬いた。
千は超える刃が現れ、鐚嚵に向かい振り下ろされる。鐚嚵は本坪鈴を振るい、風圧軌道を変え、変える事の出来なかった刃は身体を捻って躱す。
時刻は9時30分を過ぎ、互いに見せるパフォーマンスも上がる。
「"寂喰朱圏異子刃降臨」
「あっ......ぶなっ!」
「良く動く、酔狂よな」
「凍える深き花」
空気中にある霊子を繋ぎ、冷気を纏わせた実力の霊力を注ぐ事に寄って半径65mの視界が氷漬けになる。
祭宮は二刀を能力の延長に寄って発火させ、炎を渦巻き上に飛ばして防御する。
炎の斬撃は鐚嚵から現れる巨大な膜のような物が防ぐ。膜は役目を終えると灰になって消滅する。
「母の卵子宮......」
「多彩じゃな!」
「吠えろ!我が剣、月光の自由解放」
鐚嚵は狼と龍が掘られたネックレスを取り出し、自身の力を解放する。
本来、鐚嚵は人の周辺にいるだけで他者の魂を押し潰す程の霊力を持ち、孤独に苛まれる現人神。
彼の世界では男が固有魔術を、女が異能を持つ関係上、二つを同時に保有する事は世界が許さない。
が、彼の場合は産まれた日に陰茎を潰され、性別が亡くなった為に固有魔術と異能力を保有するバグとして存在する。
性別を持たない彼の様な人物は髪色が銀色へと変化し、魔力も霊力も異力量を底なしと例えられる程、膨大な力量に成長する。
彼はその中でも異質。
他者を蝕む力はエルフ国の地下、最下層に幽閉されていた過去を持つ。
服に狼の毛で出来たファーが現れ、服装に獣らしき毛が現れる。
鐚嚵はネックレスに力の核を入れ、封印する事で他者との共存に成功し、切り札として封印していた力を、ここに解放した。
「群れの狼王」
「ならば、人生を捨てて!地獄に身を捧げた力を魅せろ!異能!!・結界!!!」
「何だ?結界術か!?知らない術式だ」
「祭廻壱獬臨場火天」
本来、異能結界とは自身の写鏡である異能を結界術と合わせる事で、己の心象風景を映し出した自身の本領を発揮出来る結界術。
内部に結界を張るやり方は消費異力量を減らす役目で利用される。
祭宮の祭廻壱獬臨場火天は己の服や装備に纏わせる特殊な異能結界。その内ではなく、外に展開し身に纏う高等技術を維持させるには莫大な霊力量が求められる。
だが、祭宮と鐚嚵と同様に全ての力量が他者を蝕みむ。
それに加えて祭宮の場合は大地と草木は枯れ、能力が自己で能力の延長線を伸ばす為に雨は降らず、大旱魃砂が起こり漠化が進行する。
祭宮の袴、羽織、二刀、草履が炎に纏われ、背後に鳥居の様な物が現れる。
脚には鎖が伸び、冷気に吹かれジャラジャラと揺れる。
「四神憑綯麗候孌鐡鎖」
「へぇ、真似っ子ね」
「儂が先じゃ!!」
「荒々しい妨害」
「殘口潰瑛四神刃紋」
鐚嚵と掌を中心とした歪みを広げる事で相手を空間に挟み、圧殺する。
が、祭宮の殘口潰瑛四神刃紋は大気に罅を入れ、発動中の能力を一時的に未完成のモノに固定し、技を中断させる。
大気が割れ、異世界を囲む結界の霊圧に寄って鐚嚵をビルに叩き付け、土煙を巻き上げる。
──儂の様に姿が変わる能力者は妖怪だけだと思うたが、異世界にこんな強者がいるとは、コレが終われば異世界に行くのも良いかもな。
「くっ!」
突然襲い来る黒いリングを避け、地面に鎖を突き刺し地中を移動させ、鎖の数を先端から増殖させる。
鎖も刃も祭宮の血肉で作られており、形態の変化は自由自在。
それに加えて四神を身に纏う武器や衣服、己の肉体に憑依させる事で攻防一体の戦いができ、祭宮が生きた飛鳥時代には彼を禍神と恐れられていた。
「異能結界か、そんな古臭い戦闘スタイルを使う奴がいるとは」
「爺なんじゃて、許せ」
「お前が、爺ならら、儂は屍越えて仏か?いや、神だな」
黒いリングが分裂、鎖を豆腐の如く容易く切断。リングを蹴って祭宮との間合いを詰め、変形させたリングの剣を振るう。
両脚で黒い剣を挟み、勢いのまま排離を地面に叩きつける。
このチャンスを逃すまいと宙を漂う霊子を蹴り、地中で進行させていた鎖と同タイミングで大火を纏わせた一撃を振るう。
タイミングがコンマ一秒でもズレればカウンターを貰うのは確実。
なので火力を上げる時に爆発を起こす事でタイミングを合わせ、排離に心臓を貫いた。
「邪皐狂四神炎宴舞典」
吐血する。──祭宮。眼を疑いう光景ではあったが、空間を歪めることなど、ここにいる五人なら可能。
突きの瞬間、リングを中心として時空を歪め、祭宮の腹へと繋ぐワープゲートに創り変えた。仰け反り、溢れる血を拭う。
「こんな古典的な罠にハマるとは、それほど俺を倒す事に焦ったか?」
「ラッキーパンチで調子に乗るんじゃねぇよ」
短い時間で霊力を溜め、祭廻岌陽が水色に輝く。硬直が少ない垂直斬りから上下のコンビネーション、そして一歩を踏み出して上段斬り。
半歩下がりる排離、上段斬りの体制で時計周りに刀を巻き、突き立てる。
高速の五連撃、卐霊四神明冥魚嵐翦──。
それを全て見切られ、カウンターに卍蹴りを食らう。重い衝撃が顔面を捉え、更にズンっと重いナニカが顔面に直撃し、数本歯が飛ぶ。
飛び散る鮮血。フラフラと後退り、口に溜まった血反吐を飛ばす。
「ここまでダメージを受けたのは......何百年ぶりだ」
「そうか?まだ若いと思っていたが、見た目だけか」
「ふぅ......」
「フルチャージ、森羅参赦迅」
「させるか!」
「ッ!異能・結界っ!!!」
「ヘェイント、遅れたっ!」
上昇する霊力と異力にその場の全員が感じ、皆が祭宮の方向へと振り向き、遠距離技を放つも遅く、異能都市を囲んだ結界が起動する。
長い長い参道が続き、無数の鳥居が雨の様に降り注ぐと山の様に地面が盛り上がりひとつの祠が現れる。
夜に輝く無数の提灯が辺りの神社や鳥居を照らし、笛や太鼓の音が奏でる演奏が黒子の服を着た何者か分からない人々が奏でる。
──異能結界はの攻撃は波紋の様に広がり、攻撃を避けずらい。どんな強力な力を持ってようと、異能結界はびっくり返せる力を持つ
「さぁ、初めようか!」
背後に現れる地車に乗った、この戦いのみだけに生まれた神々が立ち上がり、戦闘態勢にはいり、地車が加速する─────。
「今、私の目的は第一段階を終了した」
異能結界、それは結界術の上に異能を合わせる高等技術。どれ程の気配察知に長ける者でも、一種の世界の外を探る事は不可能。その隙を狙った行動──、封印術を重ね、最凶の五人を封印する。
あらゆう制約に寄って強固な封印術は彼らきと破る事は叶わず、気付く事さへないだろう。
この世界と封印の中では時の流れる時間が違い、彼の一秒は我々の十年と同じ。
本来なら着ることもない白衣を靡かせ、煙草を咥えた男は長い髪を掻き上げ、強い意志が宿る眼で紅いコートを着た青年と対面する。
互いに初めて会う存在だが、二人は確実に《《会って》》いている。
「間に合わなかったか......!!」
「君を事前に殺しておけば良かった。嫁の仇であり、いやすまない、《《君》》ではなかったね」
「分身は何体か殺られたようだな」
「君の能力は確実な未来予知ではないようだな。これ以上の邪魔は私の目的に関わるため、止めて貰いたい。この世界は特異点、君と私以外もこの世界に侵入している輩がいるがね」
「お前は、何が目的なんだ?」
「分身何ぞに思想を問われたくわない。が、答えよう。息子と娘を助ける、どんな犠牲を払おうと」
「あの未来が、お前には正しいと思うのか?」
「君が切り捨てた花々は、どうなんだね?」
紅いフードを深く被り、何度も思考を回して、回して、回し廻った頭の決意を揺るがせる。
間違いではない。そう信じて何十年、何百年試して、何度も最高の未来のを目指して探し廻った結果だとしても、紅いフードに隠された美く輝く紅き瞳が写す世界は、納得いくものではない。
ふつふつと煮えたぎる怒りが、血液が灼熱の炎で燃えていると錯覚するほど、潤む瞳に強く現れる。
正面からでも、幾つ手を試そうとも叶わぬことなど、分かっている自分の限界にも、本来なら全盛期に近い精神も肉体にも、憎悪は加速する。
「諦めない、俺は奇跡を信じる!」
「好きにすると良いさ。私の命など、あの二人に比べれば微塵子当然なのだからな」




