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まで――愛の事頼んだわ

七月十九日。午前十一時。日暮里。


墓参りは淡々としたものだった。

娘夫婦の目のあるところでいちゃいちゃは出来ない。


普通に掃除しておはぎを供えて終わり。

それから近くの参道をぶらついて適当なイタリアンの店に入った。


「……随分とあっさりしたものですね」

「ん? ああ、ここのパスタはクドくなくて美味いよ? 特にカルボナーラが……」

「パスタのことではなく」


からりとお冷やのコップが音を立てる。

グレイのレンズの奥は氷のように冷たく――鋭い。


「叔母上は――あなたを生涯愛しておりましたが」

「……」


愛はここにはいない。

電話をかけると言って店の外に出て行った。

……そう言うタイミングを狙っていたのだろう。


「俺だって毎晩指輪に話しかけてるよ?」

「……」


キモって顔して引かれた。どん引きである。


「夫婦同士のいちゃこらってのは娘の前でやるような事でもねーだろ」

「墓前で何をする気だったんですか……」

「キスとか?」


引くな。

頼むからゴミでも見るような顔で引くんじゃない。


「……いや、あなたの性癖についてはまあ、置いとくとして。叔母上は最期まであなたを――」

「いや、俺ちょくちょく会いに行ってたしな?」

「は?」


呆気に取られた光。


「まあ、技術的な話をしてもわかんないだろうけど……俺は物に力を貯めとく事ができんの。それを使ってワープ」

「……よく気づかれなかったものですね」

「髪と目弄くっちゃえば、もう誰だかわからんよ。……愛と遊んでやったこともあんだよ」


懐かなかったけどな。

いかにも言われたから遊んでやっている感丸出しだったけどな。


あるいは。

目も髪も顔も弄くった進を自分を置いていった父だと気づいたのか。

半分とはいえキアウイーの血は愛にも流れている。


「まあ、これが今生の別れって訳では…………無いのかもしれないし」

「なんですか。今の間は」

「俺は魔法に関してはそんなに強くないんだよ」


無論グロンドは今生の別れのつもりで仕掛けたが。

江藤蓮あたりにかかれば紙屑同然だろう。

二種類の魔法を使えるアドバンテージがなければ瞬殺である。


「まあ、それまでにはいくつか政治的に越えないといけない壁があるから――少しは時間稼げるだろ。それまで――愛の事頼んだわ」

「……言われずとも」


少し、睨むようにする光。

……小さい頃は可愛かったんだがねえ。いつの間にか一端の男になりやがった。


「――なら、あなたはお祖父様とお祖母様のことよろしくね」


むぎゅ。

頭に当たる二つの柔らかい塊。


――仁ノ宮愛が頭の上で腕を組んでいた。

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