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「――世界を越えるにはどうしたら良いか?」

「……本当にやるのですか」

いつの間にかアレクがメルセデスさんの後ろにいた。

白い顔を一層青ざめさせてぶるぶると震えている。

「これで成功しなければ我々に未来はない」

法王が冷たく切って捨てるとクラウディオさんが笑い飛ばした

「戯けが。仲良く戦争ごっこに興じていたのはどこのどいつじゃ? 『砦』の建設も実質わしらがやったようなもんじゃろうが」

「出資したのは我々です。お忘れなきよう」

蓮は。

江藤蓮は周囲の喧騒を気にせず法王を押しのけて明葉の前に進み出る。

ボロボロの黒いローブを身にまとい無表情に明葉を見下ろした。

「――世界を越えるにはどうしたら良いか?」

唐突に蓮はそう言った。

同時にズンッと言い知れぬ圧力を感じる。

「単純なんだ。簡単なことだ。精神だけ飛ばすのと質量を動かすのでは何が違うのか。簡単なことだ」

圧力はどんどん強くなっていく。

明葉は押しつぶされないように椅子にしがみついた。

「難しい理論が必要なのか?――いや違う。複雑な機械が必要なのか?――それも違う。必要なのは一つだけだ」

どんどんとその勢いを増していた圧力が不意に消えた。

同時に蓮を中心に突風が巻き起こる。

「――ッ!」

まずいっと思った次の瞬間には明葉は椅子ごと空中に浮いていた。

とっさに椅子から手を離す。

椅子は明葉の目の前で錐揉み状に落下しながら木端微塵に砕かれた。

「力。パワー。エネルギー。どう言おうが現実の前では些事でしかない。必要なのは力。宇宙を捻じ曲げ時間を歪める圧倒的エネルギー」

砕かれた木片が渦を巻いて蓮の右手に突き刺さる。

明葉はそれを床にしがみつきながら見る。

「安定的に効率的に莫大なエネルギーをコントロールする。それには『魔力』という形態が最もふさわしい」

蓮は木片を振り払うと右手の人差し指を虚空に突き立てた。

「仁ノ宮愛。あれの魔法の使い方がヒントだった。神聖王国の召喚魔法は百人いないと成立しない。その百人分の魔力を彼女はどこから得ていたのか? 答えは簡単なことだった」

音もなく光もなく。蓮の右手は虚空に飲み込まれていく。

「ある勇者が我々の生命魔法を称してこう言った『MPなしのHP依存魔法』 なるほど、カロリーを消費して魔力を得る我々のやり方はまさしくそう言えるだろう。しかし仁ノ宮愛。その魔法は確かに『MP』を消費して――カロリーを消費せずに魔力を手にした」

ならば。

「それが出来るなら――今までよりずっと多くの魔力を生成できる。例えば世界を越えるような――」


シュンッ!

虚空に飲まれたその右手が勢いよく引き戻された。

手にはサングラス。

グレイのレンズのサングラス。

見間違えようもない――仁ノ宮光のサングラスだった。


閑話で書いた魔力と生命との切り離しの発展版――生命以外からの魔力供給でございます。

次々と常識を塗り替えていく蓮。

その向う先は――

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