「やりおったか……」
短め
サングラスが放物線を描く。
明葉は慌ててそれをキャッチした。
間違いない。光さんのサングラスだ。写真記憶がそう告げる。
いつの間にか暴風は止んでいる。
ただあの圧力だけが静かに場を押し潰している。
「――成功ですね」
公爵が言った。
「構造は理解しました。三日あれば汎用型に作り直せます」
法王が言った。
「出資するには十分な出来栄えです」
メルセデスさんが言った。
「やりおったか……」
クラウディオさんが言った。
「――まだ、終わりじゃない。最後の仕上げが残ってる。蓮!」
いつの間にか。
公爵の後ろに兄様と時田空がいた。
兄様の手から放たれる銀色の光。
蓮はそれを難なくキャッチして水平に腕を突き出す。
銀の光ごと蓮の右手が虚空に飲み込まれていく。
「明葉!!」
兄様が叫ぶ。
「アレは私との唯一の絆だ!! 忘れないでくれ!! どれだけ世界が離れていようとも――安部明葉は私の妹だ!!」
「間違っても『外交会』なんかに渡してはいけませんよ。あの組織は過激でいけない」
シュンッ!
勢いをつけて蓮は右手を引き抜く。
その手にはもう銀色の光はない。
「……嬢ちゃん。選択の時じゃぞ。勇者界と魔法界はつながった。その上で聞く。――まだ勇者を続けるか?」
「もちろん」
クラウディオ・ベガ。
明葉を折ろうとした男。
銃火器の王。
そして「暴力には屈しない」と言った男。
その男を目の前にして尻尾巻いて逃げ出すなどあり得なかった。
「――決まりじゃな。よろしく頼むぞ。勇者殿」
「こちらこそ」
さてはて、銀の光とは……?




