スキル合成
昨日ソフィーさんについて行った通りに俺と星川は外に出る。
昨日のことがあってか、外に出れば星川は俺の背中にずっと引っ付いて怖がっている。
「さぁ、出たぞ」
「ッ……!」
五体のメテオバードが見えたことで星川ののどが鳴る音が聞こえてきた。
「怖いのか」
「そ、そんなわけがないわよ!」
声が上ずっているのに強がる星川。
「そうか。それなら前に出ればいい」
俺が星川の細い腕をつかんで星川を前に出そうとする。
「い、いやぁ!」
ガチで嫌がっていて笑いそうになる。
強がっているのか怖がっているのかどちらかにすればいいのに、昨日の恐怖がよぎっているのだろうな。
「メテオバードごときで怖がるなよ」
「それならあんたが倒せるところを見せなさいよぉ!」
必死にそう言ってくる星川だから、俺の力を示すためにもったいないが倒すことにした。
「ケラウノス」
破滅の雷撃が五体のメテオバードに襲い掛かり、轟音と共にメテオバードは消滅した。
「俺たちならこんな簡単に倒すことができるんだよ」
こんな派手に、そしてオーバー攻撃なのは俺しかできないだろうが。
「……陰キャのくせに……!」
そんな強さが気に入らない様子の星川。
「分かっただろ? どうして俺たちが優遇されているのか」
「ふん! ステータスがいいからって調子に乗らないことね!」
「そのステータスがよくなくて、城を追い出されて娼婦に落とされそうになっているんだよな」
悔しそうになる星川が近くにいるのはいいな。
「それでだ、ここでお前のレベルアップをするわけだが」
「は? あんな鳥に勝てるわけないじゃない」
「俺が動きを止めるから、その間に倒せ」
「……あいつらに攻撃が通じなかった」
へぇ、そうなのか。てっきり攻撃が当てられなくて倒せなかったのかと思った。
「それにあんたにステータスが奪われて無理よ! 返しなさいよ!」
「返したところで通じなかったんだろ?」
「それは! ……そうだけど……」
「だから貸してやる」
「は?」
俺は星川の顔面をアイアンクローして星川に触れた状態にする。
「ちょ、何するのよ!」
「黙っていろ」
俺の攻撃値は五千ほどあるが、星川には百くらいでいいだろ。渡し過ぎても意味ないし。
「……これって」
「ステータスを見てみろ」
俺の言う通りステータスを見る星川。
星川の攻撃はちゃんと100になっていた。
「百もある!」
「これでメテオバードに通じるだろ。ほら、さっきの轟音でメテオバードが近づいてきているぞ。構えろ」
「ぶ、武器は!?」
「分解したんだろ?」
「だから持ってないのかって言ってんの!」
「俺の武器は杖だけだぞ。何を言っているんだ?」
「じゃあどうするの!?」
「殴るんだよ。そもそも製作者なんだから武器を持ったところでジョブ補正がなくて意味ないぞ」
「な、殴る!? そんなこと……」
「ほら、メテオバードが来たぞ。それとも殴れず、弱者のままでいるのか?」
「ッ!? そ、そんなこと嫌に決まってるでしょ!」
覚悟を決めたようだから向かってきた数多のメテオバードの動きをケラウノスの雷撃で止める。
「行け」
「ほ、ほんとに止めてるんでしょうね!?」
「止めてるぞ。早く行かないと動き出すけどな」
「う、ああああああああああぁ!」
そう叫びながら止まっているメテオバードに向かっていく星川。
メテオバードに少し近づいたところで減速したが、すぐに加速してメテオバードを殴りつけた。
星川の不細工な拳を受けたメテオバードはぶっ飛んでいき消えたのが見えた。
「や、やった……?」
「そうみたいだな」
「は、はははははははは! や、やった!」
「喜んでいるのはいいが、早くしないとレベルが上がらないぞー」
「分かってるわよ! 全部倒してやるわ!」
一回目ができたことで星川はメテオバードを次々と殴っていき倒していく。
しかも嬉々として殴っている。
「この! 昨日はよくもやってくれたわね! 死ね! 死ね! 死ねぇ!」
口が悪いし私怨が含まれた状態で殴っている。
星川のステータスを見ればどんどんとレベルは上がっていっているから、心配することはないだろう。
俺は俺でやらなければいけないことがあるからな。
星川のことはちゃんと見ているが星川が狙っていないメテオバードがいる場所に向かい、メテオバードが触れれる距離まで近づいた。
そして触れればメテオバードのステータスを見ることができた。
『メテオバード
Lv2
体力:30
攻撃:36
防御:41
速度:51
器用:34
魔力:29
魔攻:30
魔防:31』
なるほど、このステータスならトップカーストの連中が倒せないわけだ。
さらに別ステータスも見ることにした。
『魔法
スキル<加速><硬化>』
ほぉ、スキルを二つ持っているのか。
さて、ここからだな。俺がメテオバードからステータスを奪うことができれば、かなり面白いことができる。
「……ははっ」
できてしまった。
しかも、ステータス値だけではなく、<加速>と<硬化>も奪うことができた。
「これは、面白くなりそうだな……!」
魔王みたいなことをしているが、まあどうでもいいか。
メテオバードのステータスを根こそぎ奪い、倒すという作業をしていればすぐにレベルが上がった。
ステータスを奪ったことで経験値が得られない可能性がよぎったが、杞憂に終わった。
メテオバードが必ず持っているスキルは<加速>と<硬化>の二つ。
『<加速>
自身の速度を二倍にする』
『<硬化>
自身の防御を二倍にする』
それ以外に持っている個体がいるのかもしれないが、今のところは見つけられていない。
ステータス値については個体差があるが、速度が高いから二体のステータスを奪っただけで百は行くからかなり溜めることができる。
俺にとっては必要がないが、女王様に売ることができるからキチンと溜めておく。
それはそうと、ずっとスキルを奪っているのはいいが、同じスキルが溜まっていくばかりだから邪魔になってくるな。
重複するとか、複合するとかはなく、ただ溜まっている状態だ。
……お? できるのか。
ヘルファイアでステータスを奪ったメテオバードを焼き尽くせばレベルが上がり、魔王のジョブスキルにスキルポイントを割り振ることにした。
これでレベルが8になり、スキルポイントが1300。レベルが上がるごとにもらえるスキルポイントも増えているからその分多く割り振ることができる。
目的のパネルまですぐに解放していく。
『<魔防+10000>を解放しました』
『<威圧>を解放しました』
『<魔力+10000>を解放しました』
『<魔攻+15000>を解放しました』
『<剥奪+A>を解放しました』
『<剥奪+A>
見える範囲にいる相手に<剥奪>行使可能』
『<体力+5000>を解放しました』
『<攻撃+5000>を解放しました』
『<防御+5000>を解放しました』
『<速度+5000>を解放しました』
『<器用+5000>を解放しました』
『<スキル合成>を解放しました』
SP700使って十一個目のパネルでようやく目的のスキルを解放した。
『<スキル合成>
好きなスキルを組み合わせることができる』
本当に目的のスキルを解放できたし、何よりもそのスキルがあったことに驚いている。
……スキルが合わさらないか、という思考も魔王のジョブのせいなのかもしれないが、考えても仕方がない。
それにスキル合成を解放するために次々とステータス値がアップするパネルも解放されるからレベルアップよりもスキルポイントの方が大切なのかもしれないな。
それよりもだ、今はこの溜まっている<加速>と<硬化>をスキル合成したらどうなるのかを試さないといけない。
まずは<加速>を二つかけ合わせればどうなるのかを確認する。
『<超加速>
自身の速度を十倍にする』
おっ、新しいスキルになったし、加速を二つ使うよりも速く動けるみたいだな。
超加速に加速を付け足したらどうなるのかと思ったが、そうではなく超加速をもう一つ合成させ、超加速と超加速を合成させた。
『<超々加速>
自身の速度を百倍にする』
百倍か。加速を四つだから重ね掛けなら本来十六倍。
やっぱりスキル合成は重ね掛けよりも強い効果をもたらすわけか。
まだまだ加速のスキルがあるから、超々加速と超々加速を合成させる。
『<超絶加速>
自身の速度を一万倍にする』
おぉ、次は一万倍か。こうして見れば二乗されていっているのか。
一万倍ということは、たとえ星川が持っていたとしても速度のステータスが十万になるのか。そう考えればえげつないスキルが完成したのか。
おっ、まだ合成させることができるみたいだな。
十六個のスキルを使ってしまうが、それだけの価値があると思いながらも超絶加速と超絶加速を合成させる。
『<神速>
自身の速度を一億倍にする』
一億!? 一万を二乗にしたら一億になるけど……これを誰か一人持っているだけでかなりの強さになるはずだ。
この神速が上限だと理解したから、次は硬化と硬化を合成させていく。
『<超硬化>
自身の防御を十倍にする』
もしかして加速と同じパターンなのかと思いつつも超硬化と超硬化を合成させる。
『<超々硬化>
自身の防御を百倍にする』
同じモンスターが持っていたのだから同じようになってもおかしくはないか、と超々硬化と超々硬化を合成させる。
『<超絶硬化>
自身の防御を一万倍にする』
やっぱり超絶になったから、次が最後かな?
『<不壊>
自身の防御を一億倍にする』
これも一億倍か。俺が使ったら誰が倒せるのかってことになるのか? いや、いないと思う。そう魔王のジョブが言っている気がする。
ただ神速とか不壊とか言うのなら、上限なしに速度が上がるとか絶対に傷つかないとかにしてほしいが、それは欲張りと言うものか。
今までは同じスキルを合成することでさらなるスキルを生み出した。
だが、例えば神速と不壊を合成させたら化け物みたいなスキルが生み出されるのか。答えはノー。
相性がいいスキル同士でなければスキル合成でさらなるスキルは生み出されない、ということは何となく理解した。
同じスキルであれば例外なくさらなるスキルにはなるらしいから、こうして同じモンスターからステータスとスキルを剥奪することは間違っていないことになる。
「ふっ、これは面白いことだ」
俺がずっと動かずに画面に集中している、と思わせていれば面白いくらいに星川はコソコソと動いているのが分かった。
俺の死角に回り込み、そーっと俺の背後に歩いてくるのが分かる。
そしてすぐ後ろに来た瞬間、星川の叫び声が聞こえてきた。
「ぐぎぎぎぎぎぎぎぎぃッ!?」
本当に懲りない女だ。




