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ジョブ「魔王」による魔王ライフ!~クラス転移で異世界に行ったらカーストが逆になったので異世界を満喫します!~  作者: 二十口山椒


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女王

「面白いことをしているな。璃央」


 今まで黙っていた女王が俺の名前と共にそう言ってきた。


 女王に自己紹介をしたことがない。ただ女王のクエストを受けていたからそれで知っているのか、それとも何らかのステータスを見るスキルがあるのか。


「自分をどうするおつもりですか?」


 俺がしていることを理解してそうだから、後者だろうな。


 だから女王にそう聞く。


「別に、なにもしない。お前が使えるのならお前のジョブなどどうでもいい話だ」


 やっぱり女王は分かっているのか。それでいて俺の魔王というジョブも使えるのならどうでもいいと思っているのならこちらとしても好都合だ。


「それならば、女王様のお役に立てるよう精進いたします」

「ふっ、期待している」


 女王の機嫌をとることは大事だからな。


「よし、勇者たちには最上級のもてなしをしろ。これから頑張ってもらう勇者たちにはしっかりと休んでもらう必要があるからな」


 女王が言った勇者たちというのは、女王のクエストをクリアした俺たちのことを指しているのだろう。


 トップカーストの連中など見ていないのだから。


 というか怪我をして血が流れているのにそれを放置しているのだから存在自体を無視しているのだろう。


「そ、それよりも! 私を治してよぉ!」


 そのうちのトップカーストの女がそう叫んだ。


 いつもは染めた長い金髪をツインテールにしたメスガキみたいな傲慢な性格の女、星川だ。いつもは原田と一緒にいる女だ。


 今はツインテールは下ろされ、座り込んでいる。足から血が出ているのが分かる。


「言ったはずだ、使えなければ願いを聞く価値はないと。貴様らはメテオバードごとき倒せなかった弱者どもだ。勇者でもない口だけの存在の願いをどうして聞かなければいけない」

「ッ! お前が勝手に呼んだんだろ! 私は別に好きで呼ばれたわけじゃない!」

「そうかそうか」


 女王は近くにいた女兵士に目配せすると女兵士はどんどんと星川に近づいていく。


「はやく治しなさいよ」


 女兵士が星川に近づけば、剣を抜いて振り上げた。


「え……」


 その光景を星川はただ見るだけしかできなかった。


 そのまま剣が振り下ろされそうになり、誰かの悲鳴が聞こえる中で俺は星川に近づいて杖で振り下ろされた剣を止めた。


「ほぉ、後衛職なのによく止めた」

「え……」


 その女兵士に素直に称賛される。


 一方の星川はそれを見て未だに呆然としていた。


「璃央、なぜ止めた。私の意見に逆らうつもりか?」


 止めたことを女王に責められるが、俺にしてみれば本当にもったいないことをしているとしか言えない。


「女王様。自分とこいつらにはかなりの因縁があります。ですので殺すことはやめていただきたいと思っております」

「知らんな。私は口先だけのそいつらが気にくわない。だから処分する。それだけだ」

「しょ、処分……?」


 処分というゴミみたいな言い方をされた星川はひどいショックを受けている様子だ。ていうか今の状況をまだ理解していない。


 ……今まで俺たちをゴミ扱いをしていたのに、まさか自身がゴミ扱いをされるとは。とんだブーメランが来たみたいだ。


「自分の力であれば、どのような使い方もできるはずです。女王様のお役にも立てると考えています」

「ほぉ、それほどの力を持っていてもなお、私に従うのか?」


 確かに魔王というジョブを持っているのなら人の上に立つのが普通だ。


「いけませんか?」


 だが俺はそういうことを考えたくない。


「いいや、その力を私が使えると考えれば気分がいい」

「必ずやお役に立ちます。なのでこいつらの処分はお許しください」

「ふっ、いいだろう」


 俺の力を存分に使うためにこいつらを放置する。遥かにメリットが凌駕しているのか、女王は機嫌をよくした。


「だが、そいつらの待遇は最低限だ。使えると分かれば勇者として認めるが、それまでは璃央でもタダでは待遇はよくしないぞ?」

「それは構いません。ですが治療士をお貸しいただきたいです。もちろんタダではありません」

「ほぉ、なんだ?」


 ……やっぱり魔王のジョブが俺の様々な能力を魔王としてあげてくれている。


 だから女王に対してこんなことが言えるし、俺が知らない<魔王>スキルも何となく分かるようになっている。


 俺はさっきは割り振っていなかったスキルポイントを女王様と喋っている間に割り振った。


 他のスキルツリーがどうなっているかは分からないが、<魔王>のスキルは広く見れば五角形のように広がっている。


 五角形の中心が<剥奪>になっており、それぞれの頂点に向かって解放されるパネルのジャンルが違う。


 その一角は魔王に特化したスキルや強化スキルが存在していた。


 俺がLv4までに得たSPは450。俺のパネルの解放SPは分かりやすく、50か100。


 目的のパネルまでのルートはすでに分かっているためスキルツリーを開いた瞬間に解放した。


『<剥奪+E>を解放しました』

『<剥奪+E>

 格上に対する<剥奪>成功率上昇』

『<魔攻+10000>を解放しました』

『<魔力+5000>を解放しました』

『<二重魔法>を解放しました』

『<隷属>を解放しました』

『<付与>を解放しました』


 一番最初と最後の二つが100で残り三つが50でちょうど使い切った。


 魔王のジョブスキルには回復の項目もあるものの、450では届かないからこうして交渉しているわけだ。


「自分の魔力の一部を献上します。それでこいつらを回復していただきたい」

「ふむ……」


 女王様は意図して俺のジョブを伏せている。ここで俺の言葉の真意が分かるのは女王様と、あと他にスキルがある人しか分からない。


「1000だ。それで手を打ってやろう」

「ありがとうございます」


 千か。それならかなり安く済んだか。


 魔法使いがどれくらい持っているのかは分からないが、少なくとも一般勇者ではLv10にしないと千には到達しない。


「おい、回復させろ」

「はっ」


 地位が高そうな服を着ている女性が女王様の命令でトップカーストの連中を治していく。


 おそらくメテオバードで怪我をしていた勇者のために治療士を待機させていたのだろう。


 ま、それはもしものためであって俺たちは無傷だから本当にもしもだったのだろう。俺としてはありがたいけど。


「……ふん、少しは役に立つじゃない」


 一番に回復させてもらった星川は立ち上がってから俺にそんなことを言ってきた。


 だが、下を見れば血ではない液体で濡れているのが分かって鼻で笑ってやる。


「ふっ、怖かったのか?」


 星川は濡れている場所がバレたのだと思って顔を赤くした。


「こ、これは違うわよ! なんか体から出た液体よ!」


 それがおしっこというものだろう。


「そ、それよりも! あんた少しは使えるじゃない。だから僕にしてあげる」

「はぁ?」


 どうやらいつまでも前の世界での立場でいるようだ。


「なにか文句あるの?」

「ふっ、お前は何を言っているんだ。お前はこれからこの世界で生き抜く方法を考えないといけないんだぞ? それがその態度なのか?」

「はぁ!? イキってんじゃないわよ! お前が私より下なのはどの世界に来ても一緒よ!」

「どうやら本当に分かっていないようだな」

「ぎっ!?」


 俺は星川の首を鷲掴みにして持ち上げる。


 さらにステータスも攻撃だけを1になるまで吸いとる。


「は、はなせ……!」

「この世界ではお前らは全員雑魚なんだよ。メテオバードごときで怪我をしている時点で、俺たちには勝ちようがない。だからお前らの命なんてさっきみたいにすぐに切り捨てられる」

「あ……」


 さっきのことを思い出したのか、星川はまた震えだしてポタポタと地面に水滴が落ちる。


「俺が止めなかったら絶対に死んでいたな。生き抜く方法を考えなければ、お前はすぐに死ぬ。そういう世界にいるんだぞ?」


 星川をおろして首から手を放す。


「ごほっ! ごほっ! ……お前、許さないんだから……!」


 丁寧に言ったのにここまで偉そうにできるのは逆にすごいと思う。


 まだ一日も経っていないからそういう癖が抜けてないだけかもしれない。


「すぐに強くなって、お前なんか殺してやるんだから!」

「そのステータスでか?」


 原田は分かっていなかったからわざとそう言ってみる。


「どうせ私たちよりも少し高いくらいだろ! このステータスなら……あ、あれ? な、なんで!?」

「もう誰も倒せないな。それでどうするんだ?」

「お、お前なにしたぁ!」

「分かり切っていることを聞くな」


 ステータスが低い状態でさらに低くなったのだから、メテオバードですら倒せない。


 その状態でどうするのか見てみたくはある。


 俺と星川が会話している間にトップカーストの連中の傷は綺麗に回復させられていた。


「女王様、誰に譲渡させればよろしいですか?」

「それは後でだ。それよりも今は食事にするぞ」

「はい」


 女王様は玉座から立ち上がって俺たちメテオバードを倒した組にそう言った。


「ちょ、ちょっと待てよ! そんなことよりも俺たちが使えないのは分かっただろ!? それなら元の世界に戻してくれよぉ!」


 さっきまで傷だらけだったトップカーストに寄生していた男が叫んだ。


「ふん、そんなことは知らんな。貴様らが勝手について来ただけだ。それなのに戻せとは勝手なことだな」

「そんなこと俺たちが知るわけないだろぉ! いいから戻せよ!」


 女王様がそんなことを言われて機嫌を悪くしないと思ったのだろうか。


 ……トップカーストに寄生していた割には世渡りは下手だな。


「それなら何でもいい、私が使えると思えるようになれ」

「それができないから帰せって言ってんだろ!」


 すでに女王様の機嫌はかなり悪いものとなっているのは分かっている。


 俺がこいつらの怪我を治してもらうように言ったんだから、俺が収めないといけないか。


 俺はそいつに気絶する程度の威力でケラウノスを放ったことで騒がしいのが消えた。


「女王様、大変失礼いたしました。こいつには自分から罰を与えておきます」

「あぁ、そうしておけ。ただ使えないやつらが璃央の知らないところで不敬をすれば、処分する。いいな?」

「そのときはぜひそうしてください」


 俺の知らないところでこいつらがそんなことをして処分されてもどうでもいい。こいつらが愚かだったということだ。


 でも俺がいるときなら長く生きられるようにはするけど。


「そいつらがうるさいから一ついいことを教えてやろう」

「はい」


 全員ではなく俺に対して言っているようであったから返事をする。


「勇者召喚は召喚者との契約になっている。契約内容はダンジョン攻略をすることで元の世界に帰すというものだ」


 ……俺はこの世界に来て良かったと思っているが、トップカーストの連中からすればかなり地獄な話だろう。


 だってこっちの世界に強制的に呼ばれた挙句、ダンジョン攻略をしないと帰さないと言っているんだからそりゃ地獄だ。


「それは契約として成り立っているのですか?」

「ふっ、お前ならそう言うと思っていたぞ。璃央」


 何だかんだ女王様への好感度は稼げているようだ。


「そうだ、それだけでは契約にはならない。だからダンジョン攻略をした暁には、このテリオ王国にあるものなら何でも持ち帰れるという対価がある。まあ、使える勇者であれば、この契約でなくとも報酬は与えるつもりだがな」


 そういう感じか。でもリスクとリターンが見合っていないと考えれる。


「け、契約なら私たちを殺したらダメだろ……!」


 星川が女王様に食って掛かる。懲りないやつだ。


「ふっ、契約など破棄すればいいだけの話だ。召喚は帰還の契約に含まれていない。世界を超える術は神しか行えないからな。だから、私が使えないと判断すれば契約破棄することは容易ということだ」

「は、はぁ!? 意味わかんないんだけど!」

「召喚は契約ではなくただの呼び出しということだ。そこから元の世界に帰るためには契約を実行するしかない、ということを神から授けられたのですか?」

「そういうことだ」


 星川に説明するが……神はかなりあくどいな。えげつないことをする。

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