異世界での現実
清水を含めた五人の女子と一緒に平原を歩く。
男子は男子で、一人で行く男子や二人や三人で行動してバラバラになったようだ。
「あれか」
平原を歩けばすぐに目的のモンスター、メテオバードがいた。
大型犬ほどの大きさで、真っ赤な体を持つ鳥が、メテオバードだった。
どうしてそれがメテオバードだと分かったのか。メテオバードの頭上にマークがついており『女王ノヴァのクエスト対象』と書かれているからだ。
そんなメテオバードの集団はこちらに気がついた様子で戦闘体制に入っていた。
「ひっ……」
女子の一人がそれを見て怯えたが、次の瞬間すごい勢いですべてのメテオバードが飛んできた。
なるほど、これがメテオバードかと思いながらもケラウノスで焼き払った。
『Lv2に上がりました』
『Lv3に上がりました』
『Lv4に上がりました』
一気に倒したことで一気にレベルが三つもあがった。しかもクエストも達成したからこれで俺はひと安心ということだ。
「あれがメテオバードだな」
「え……今のってなに……? すごい音だった……」
ケラウノスによる雷轟に驚いている清水がそう聞いてきた。
「俺の魔法だ。それよりも倒せそうか?」
「む、むむむ、無理だよ……!」
清水の言葉に後ろの女子たちも同意するように頷いている。
……この自信のなさもまたトップカーストの連中のせいだ。
「ジョブがサポートしてくれるから大丈夫だ」
「で、でも……」
「そんなことを言っても……」
「……私たちはなにもできないよ」
……これは荒治療でやるしかないようだな。
「さっきの音でメテオバードが集まってきたぞ」
あちこちからどんどんとメテオバードが集まってきているのが見える。
「俺がメテオバードを止めるから、戦え」
「で、でも……」
「お前らならできるはずだ。あいつらよりも強いステータスを持っているのだからな」
トップカーストの連中がステータスを見て話している間、俺は全員の表情を見ていた。
だからトップカーストの連中よりもステータスが勝っていることは何となく分かった。
「それともなにか? こんな世界に来てまであいつらのいいようにされるのか? 俺たちならできるはずだ。自信を持て」
俺がそう言えばどこか覚悟を決めた清水が一歩踏み出した。
一人が出ればファーストペンギンのように次々と一歩を踏み出していく。
そしてメテオバードがある程度の距離まで来れば、さっきみたく隕石のような勢いでこちらに向かってきた。
俺はそれをケラウノスで麻痺させて動きを完全に止めた。
「今だ」
「ッ!」
俺の言葉に剣を持った清水が走り出した。
今まで剣を持ったことがなかったはずの清水は瞬く間にメテオバードを五体切った。
「や、やった!」
「あ、あたしも!」
「ま、まって!」
清水がすぐに倒したものだから他の八人もすぐに駆け出したり杖や弓を構え、メテオバードを倒していく。
「……これなら止めなくてもよかったな」
動きを見れば確実にメテオバードに対処できると思ったが、そこは彼女たちを後押しするのに必要だったから後悔はしない。
それからまもなく、俺たち六人全員がメテオバードを三体以上倒すことができた。
「レベルも上がってる!」
「あたしも! スキルポイントを割り振らないと!」
「もっと倒したいね!」
モンスターを倒したことで今までにない元気を取り戻している様子の女子たち。
トップカーストの連中が来ればまた静かになりそうだが、それでも大きな一歩だな。
「時間がまだあるからできるだけレベルを上げておくか」
「さ、賛成!」
「め、めっちゃしたい!」
かなり食いぎみになっているのは、あいつらに負けないようにという考えからなのだろうな。
「清水、聞きたいことがある」
「な、なに……?」
レベルを上げる前に聞かなければと思っていたことがあった。
「清水の初期ステータスは平均でどれくらいだ?」
トップカーストの連中よりも高いのは分かったが、それがどれくらいなのかが分からないから清水に聞いてみる。
それによっては俺か彼女ら、どちらを優先的にレベルを上げるかになるからな。
「えっと……70くらい?」
「それくらいか。レベルが上がったらどれくらいステータスはあがったんだ?」
「……レベルひとつで、平均で30くらい、かな?」
「そうか。教えてくれてありがとう」
ふむ、それなら彼女らを優先してもいいかもしれないな。
少なくとも清水は優先しないといけないわけだ。
「お、大万くんは……?」
「最初は大体100で、平均で100くらい増えてるぞ」
「す、すごい……!」
さすがにここで魔力が一万くらいあって、レベルがひとつ上がるごとに五千くらい上がっているって言っても仕方がないからな。
俺たちのグループはすでにメテオバードを三体倒しているが、レベル上げのために平原にしばらくいた。
最後の方は俺が止めなくても問題なく倒せるようになっていた。いや、最初でも倒せたとは思う。自信がついたから倒せるようになった。
そして三時間の制限時間が経過したと思ったら文字が出てきた。
『女王ノヴァからのクエストの制限時間となりました』
『玉座の間に戻ります』
その文字と共に光景が変わり、平原ではなくさっき召喚された玉座の間に戻ってきていた。
「いてぇ……!」
「し、死にたくない……!」
前方にいる女王の姿が見えたが、横でそんな声が聞こえてきたからそっちを見れば傷だらけになっているトップカーストの連中がいた。
しかも一人とか二人ではなく、全員がボロボロの状態だった。
対して、俺たち女子グループや陰キャ男子たちは無傷だ。
「なんだ、その様は。メテオバードごときにそうなったのか?」
女王はそんなトップカーストの連中を見て嘲る。
「てめぇ……ふざけんなよ! あんな強いモンスターを戦わせんなよ! 最初から俺たちをこうする腹だったんだろうがぁ!」
ボロボロで腕から血を流している原田が女王に吠えついた。
「何を言っているんだ。勇者なら倒せて当然だ」
「そんなわけあるか! 俺たちを見ろよ!」
「ふっ、大きな口を叩いていたわりにはその程度だったとはな。やはり使えるかどうかを確認するのは大切だな」
「てめぇ!」
「それに、貴様らとは違い、真の勇者は無傷で倒せているぞ」
女王が俺たちの方に視線を向ければ、トップカーストの連中もこちらを見る。
俺たちが無傷でいることに驚いた様子だが、すぐに女王に噛みつく。
「ふざけんな! あいつらは戦ってねぇだろ!」
「いいや? そこにいるものたちは全員クエストをクリアしている。貴様らが三体もろくに狩れていない間にレベルもあげていた。逆に貴様らは何をしていたんだ?」
トップカーストの連中は信じられないといった表情をしている。
「てめぇらどんなイカサマを使ったんだよ! てめぇらが俺たちより強いわけないだろうがよぉ!」
原田がそう叫んだことで女子は俺の背後に移動して、男子は体をこわばらせた。
……あんな傷だらけなのにどこにビビる要素があるんだか。
「こちらの女子でも一人でメテオバードを倒せていたのに、お前は倒せていないのか。どうした? 遊んでいたのか?」
「ちょーしに乗んなぁ!」
俺の嘲笑に原田はこちらに走ってきた。
だが傷だらけだし、なんなら俺のステータスの方が遥かに強いから恐れることなんてなかった。
殴りかかってきた原田の動きはメテオバードに比べたら遥かに遅い。
今までは原田の攻撃に対処できなかったから、本当にステータスの力は偉大だと思いながら原田の顔面パンチを何もせず受け止めた。
俺に攻撃した瞬間はニヤニヤとしていた。
「やっぱりステータスが低いな。それくらいだからメテオバードを倒せなかったのか」
「……は?」
俺が何ともなかったことで信じられないと言った顔をした原田。
「そうだ、試したいことがあったんだ」
俺は原田の顔面を鷲掴みにする。
「て、てめぇ! 放せよ!」
原田が抵抗するが原田の動きは片手で止めることができた。むしろ手加減しないと握りつぶしかねないほどだった。
そして原田に対して今まで使っていなかった<剥奪>を使えば、原田のステータス情報が俺に伝わってきた。
『原田達郎
ジョブ:拳士
Lv1
体力:9
攻撃:15
防御:12
速度:12
器用:8
魔力:2
魔攻:3
魔防:7
SP:0』
『魔法
スキル<拳士>』
レベルがひとつも上がっていないステータス情報が見えた。
「この程度のステータスで喜んでいたのか」
「はなせ……!」
俺の問いかけにも答えずにもがいている原田のステータスを剥奪する。
体力から魔防まですべてのステータス値を奪い取っていく。
「あ、あ、あ、あ……!?」
それをしている間、原田は脱力して放心状態になっている様子だった。
どうやらSP以外は1にしかできないようだから、八項目すべてを1にした。
そうすることで俺のステータスは雀の涙ほど増えた。本当に何の役にも立たないレベルだ。
剥奪したことで原田の顔から手を放す。手に血がついてしまったから血だけを燃やし尽くした。
原田は地面に膝をつき、俺を見上げながら睨み付けてくる。それだけでも屈辱的なのだろうな。
「はぁ、はぁ……何しやがった……!」
「自分で考えたらどうだ?」
「てめぇ……!」
どうやら立ち上がることもできないようだ。
ダメージを負った状態でステータスを奪われたからそうなったのかもしれないな。
それにしても、ステータスを奪われたことにも気がつかないとは視野が狭くなっているのか、今まで下に見ていた俺をいいようにできなくて頭に血がのぼっているのか。どちらにしても無様なことに変わりはないか。




