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ステラのざわめく胸


無事にレティシア王妃主催の舞踏会を終え数日が経ち、私はセオドアによる厳しいダンスレッスンや、マナーレッスンからも開放され、平和でのびのびとした日々を送っていた。


ーーこうでなくてはっ!!


今日はお父様が屋敷に帰られるのよね。

長く屋敷を留守にされていらしたから、会えるのが待ち遠しいわぁ!!



朝食を済ませ、お気に入りのクスノキを目指し、私は軽やかな足取りで庭園へ向かった。


そうしたら、その行きすがら侍女見習いとして三ヶ月ほど前、屋敷に来たばかりのミランダがセオドアを引き止めて何やら話し込んでいた。


ーー何を話しているのかしら?


ピタリと足を止める。


二人から少し離れた場所にいる私の存在には、まだ誰も気づいていない。

だけどここから見るに、ミランダはどことなくモジモジしているかのようにも見える。


これは……まさか……っ!!!!


もしやと頭に浮かんだ直後、ミランダがエプロンのポケットから潜ませていた手紙を取り出し、セオドアに手渡そうとした。


ーーやっぱりだわ……


セオドアが恋文を貰う場面に出くわしてしまった……どうするのかしら……セオドア……


見てはいけないと思いつつも目が離せない。


ーー受け取るの?


野次馬でもない、興味本位でもない、なぜかセオドアがどうするのかを見届けたい。

そんな気持ちに駆られていると、

手を伸べたセオドアがミランダからの恋文を受け取った。


とても優しい笑顔で。


あっ、、


急に胸がチクリとした。


そっか……セオドアも……ミランダのことを……そ、そうなんだ……っ。


二人からふいっと顔を背け、私は足を進めた。

なんとも言い表せない気持ちを(いだ)きながら。









ーー早く気持ちを切り替えなくっちゃ、、


お気に入りのクスノキに登り、朝日が差し込み金色に染められた景色を見渡し、大きくため息をつく。


『はあ……』


そうよね……セオドアは大人なんだし、好きな人がいたり、恋人がいたり、そんなの普通のことじゃない。

私が今まで知らなかっただけで……

セオドアの年齢からすれば、結婚だってしていてもおかしくないし、むしろ遅すぎるくらいだもの。


でも……なんだろう……謎に落ち込んでしまう。


太い幹にもたれかかって、ぼんやり空を見上げた。


ーーなんだか寂しいなぁ。




『ステラお嬢様っ!!』



ーーセオドア……



『またこちらにいらしたのですね。ステラお嬢様は本当にこのクスノキがお好きですねぇ』


『…… え、えぇ』


声かけられてるのに振り向けない。

だって今の私……どんな顔しているか分からないもの。


『ステラお嬢様……?』


『大丈夫だから!! 落っこちたりしないし、心配しなくてもいいから…… 屋敷へ戻っててちょうだい』


『そうは仰いますが…… 先日見事に私の目の前で落下されましたよ。ふふふ』


『な、何よっ!! そんなこと蒸し返さないでよ!!』


ウッ、、思わず振り向いてしまったわ……


くすりと笑うセオドアが私を見上げている。

まるで聞き分けのない小さな子供を見守るような穏やかな目で。


はあぁ……どうせ私は子供よ。


『セオドアの言うとおりね。降りるわ』


『はい。じきに旦那様もお帰りになられますでしょうから、そうしていただけると助かります』


『わかったわ』



クスノキからゆっくり下りていき、ストンッと地に足を降ろす。

そして私はセオドアにそっぽ向いてそそくさと歩き出した。


『…… ステラお嬢様?』


『先に戻ってるからっ』


『は、はぃ……』


ごめんね……セオドア。

私、今はどんな顔をして一緒にいればいいのか分からないの。

なぜなの?

とても胸の奥がざわざわとして、落ちつかないような……

どうしてこんな気持ちになっちゃったのかしら?


私……













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