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嵐の前触れ


針のむしろ状態のままメインホールで過ごしたあと、私たちはダンスホールへと移動した。


今宵の舞踏会最大の見せ場でもあるダンスタイムを告げるように、オーケストラが美しいメロディーを奏ではじめる。


それぞれパートナーと手をとり合い、身を寄せ、リズムに合わせながらステップを踏む。


もちろん私もジャスティン様と……。


『このように王城で美しいステラ嬢と踊る最上のひととき…… 僕は君との運命を感じずにはいられないな〜〜』


自らに酔いしれているのか、ジャスティン様がねっとりあま〜〜く私に囁く。


『まぁ、運命だなんて、大袈裟ですわよっっ』


グニュ、、、、


おもいっきり力を込め片足をジャスティン様の足に踏み下ろした。


『イターーーーッ!!』


『あら、ごめんあそばせ。ステップを踏み間違えてしまいましたわ。大変失礼いたしました』


ふんっ!!さっきのセオドアへの無礼な態度の仕返しよ!!してやったり!!!!


『い、いや…… だ、大丈夫…… 全然』


その割には大きなお声でしたこと。

なんともないよう振る舞ってくれてても、実のところ相当痛かったとみたわ。

力入れて踏みすぎたかしら?


『ジャスティン様…… 本当に申し訳ございませんでした』


ちょっとやりすぎたかもね、、


『これしきのことなんの問題もございませんよ』


『そうですか、それなら良いのですが』


引きつった顔でやせ我慢しちゃって、、


それにしても……

セオドアとダンスレッスンしてた時との違いを痛感するわっ。

リードの仕方が大違いだもの。

セオドアには全てを委ね、安心して自然に踊ることができてたのに、ジャスティン様はリードの仕方が自分本位で、私が合わせて付いていかないと上手く踊れないし……


せっかくあんなに頑張ってダンスレッスンしたのに……一緒に踊る相手がこれじゃあね。


残念だな……


ーーセオドアと一緒に踊りたかった。


『ステラ嬢、どうされましたか?』


いけない、心ここに在らずなことに気づかれてしまったかも、、


『い、いえ、少々この場の雰囲気に圧倒されてしまって…… やはり緊張もいたしますし……』


『これはこれは、名門中の名門ディオン公爵家のステラ嬢が緊張だなんて…… いや、僕がそうさせてしまっているのでしょうね。僕と踊ることがそんなにも緊張することだったとは…… 嬉しいなーー』


・・・はぁ!?


あなたに緊張してるんじゃないわよっ!!

この場の雰囲気にっ、て言ってるのに自分のいいよう解釈してるし!!

ほんとっ救いようがない自惚れ屋ね。


それに…… あちらの方でふてぶてしいお顔をされて、ガルシア伯爵家のご子息アーロン様と踊るソフィア様の殺気だった視線も、グサグサ刺さってくるのよ!!

どうして私がこんな目に遭わされなきゃいけないの?


『何も緊張しなくてもいいんだ。これから僕たちはゆっくり時間をかけ、色々育んでいけばいいさ』


・・・んっ?


あなたと私が一体何を育むのよ!?


『君もそう思うだろ? ステラ!!』


『は、はぃ……?』


『あぁ、僕のことをもっと君に知って欲しいな〜〜』


あなたのことは十分に知っているわよ!!

身分の低い者には平気で高圧的な態度をとるくせに、美しい女性たちの前ではヘラヘラ愛想振りまく。

そのうえ重症なほどの自惚れ屋!!


ーーこれがあなたでしょっ!!!!


もはやあなたのことを知る必要なんてないくらい、私は知り尽くしているわ!!


だけど先程から……意味深なことばかり言うわよね?

まぁジャスティン様の言葉をいちいち気に留めなくてもいいんでしょうけど……


なぜだか胸騒ぎがするのは気のせいかしら?



こうして私の初参加となったレティシア王妃主催のお城での舞踏会は、一抹の不安を覚えつつ幕を閉じた。












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