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最強だと思った光魔法ですが習得が難しいです! ~魔法至上の国でダンジョンに挑む公爵家の落ちこぼれ~  作者: 空木 輝斗


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第178話:空を走る者

山の空気は、夕方になると急に冷えた。


岩山の頂上付近には木も少なく、吹き抜ける風がそのまま体に当たる。

空は広く、視界の先には何重もの山並みが続いていた。


アランは崖の端に立ち、下を見下ろした。


さっき戦った場所が、ずっと下に見える。


「……またここか」


ヴァルドは少し離れた岩の上で腕を組んでいた。


「さっき落ちたばかりだろ」


アランが言うと、ヴァルドは平然と答えた。


「だからだ」


「体が覚えているうちにやる」


アランは苦笑した。


「覚えているのは恐怖だけだぞ」


ヴァルドは岩から降り、崖の端へ歩いてくる。


そして空を見上げた。


「光魔導士の戦い方は二つある」


アランは眉を上げる。


「二つ?」


ヴァルドは頷く。


「一つは地上戦」


岩を指で叩く。


「秩序を作り、戦場を支配する」


そして空を指差す。


「もう一つが」


声が少し低くなる。


「空中戦だ」


アランは空を見る。


青い空が広がっている。


雲がゆっくり流れていた。


ヴァルドは続ける。


「光は軽い」


「だから空に近い」


アランは腕を組んだ。


「理屈は分かる」


「でも飛べない」


ヴァルドは即答する。


「飛ぶ必要はない」


アランは首をかしげた。


「どういう意味だ」


ヴァルドは崖の端に立つ。


そして一歩踏み出した。


普通なら落ちる。


だが。


足元に光が生まれた。


パッ。


一瞬だけ。


光の足場。


ヴァルドはその上に立っていた。


さらにもう一歩。


また光。


そしてもう一歩。


空中を歩くように進む。


数メートル先で止まり、振り返った。


「こうだ」


アランは目を丸くする。


「……おい」


ヴァルドは肩をすくめた。


「難しくない」


アランは苦笑した。


「いや、十分おかしい」


ヴァルドは崖へ戻る。


光の足場が次々と消えていく。


地面に戻ると、ヴァルドは言った。


「ルミナ・ステップ」


「今は一歩だけだ」


アランは頷く。


「そうだな」


ヴァルドは続ける。


「それを連続させろ」


アランは顔をしかめた。


「つまり」


「空を走れってことか」


ヴァルドは頷いた。


「そうだ」


アランは崖を見下ろす。


風が強い。


落ちれば、岩に叩きつけられる。


「……相変わらず命がけだな」


ヴァルドは平然と言う。


「修行だからな」


アランは深く息を吸った。


胸の奥のルミナ・コアが回っている。


安定している。


魔力は十分ある。


(やれる)


アランは一歩踏み出した。


足元に光。


ルミナ・ステップ。


空中に足場。


一歩成功。


だが次の瞬間、光が消えた。


体が落ちる。


「うわっ!」


慌てて二歩目を作る。


また光。


足場。


なんとか体勢を保つ。


だが三歩目で失敗した。


体が一気に落下する。


アランは咄嗟に岩を掴んだ。


「……あぶねぇ」


岩壁にぶら下がりながら、アランは息を吐く。


上からヴァルドが見下ろしている。


「今のは悪くない」


アランは睨んだ。


「落ちかけたぞ」


ヴァルドは肩をすくめる。


「落ちなかった」


アランは岩を登り直し、再び崖へ戻った。


「……もう一回だ」


ヴァルドは頷く。


アランは呼吸を整える。


魔脈。


風。


そして胸の光。


ルミナ・コアが回る。


一歩。


光。


二歩。


光。


三歩。


光。


今度は崩れない。


四歩。


五歩。


アランの体が、空中を進む。


地面はもう数メートル下だ。


空の中に立っている。


その感覚に、思わず笑った。


「……すげぇ」


ヴァルドは腕を組みながら見ていた。


「まだだ」


アランは振り返る。


「まだ?」


ヴァルドは空を指差した。


「戦場では」


声が低くなる。


「敵も飛ぶ」


その瞬間。


山の向こうの空で、何かが光った。


遠く。


だが確かに。


空気が震える。


ヴァルドの目が細くなる。


「……来たか」


アランは空を見上げる。


小さな点が、こちらへ向かってくる。


それは次第に形を持ち始めた。


人影。


空を飛んでいる。


アランの胸の光がわずかに震えた。


ヴァルドは静かに言う。


「ちょうどいい」


アランは聞き返す。


「何が」


ヴァルドは答えた。


「空中戦の相手だ」


山の空で。


黒い影が、ゆっくりと近づいてきていた。


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