表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強だと思った光魔法ですが習得が難しいです! ~魔法至上の国でダンジョンに挑む公爵家の落ちこぼれ~  作者: 空木 輝斗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

179/195

第179話:空に立つ影

山の上空を、ひとつの影がゆっくりと降りてきた。


最初はただの点だった。

だが距離が縮まるにつれ、それが人の形をしていることがはっきりする。


黒い外套。

風に揺れる長い布。

その足元には、淡い光の輪のようなものが浮かんでいた。


アランは目を細める。


「……人だな」


ヴァルドは頷いた。


「魔導士だ」


影は空中で静止した。


地面から十数メートル上。

まるでそこに足場があるかのように、動かない。


やがて、低い声が風に乗って届いた。


「……久しいな」


ヴァルドはわずかに目を細めた。


「まだ生きていたか」


その口調は軽いが、空気は張り詰めている。


アランは小さく息を吐いた。


「知り合いか?」


ヴァルドは短く答える。


「昔の戦場でな」


上空の男がゆっくりと視線を下ろす。


その目が、アランを捉えた。


「……それが」


少しだけ間を置く。


「例の“光”か」


アランの胸の奥で、ルミナ・コアがわずかに強く回転した。


男はゆっくりと手を上げる。


その瞬間。


空気が歪んだ。


アランは反射的に動いた。


ルミナ・ステップ。


空中に足場を作り、横へ跳ぶ。


直後。


さっきまでいた場所の空間が、歪んだまま弾けた。


「……っ!」


見えない衝撃が岩を砕く。


ヴァルドは動かない。


ただ静かに言った。


「避けろ」


アランは歯を食いしばる。


(今の……魔法か?)


だが魔法陣は見えなかった。


詠唱もない。


ただ空間が歪んだ。


男は淡々と告げる。


「無属性」


その言葉に、アランの目がわずかに開く。


ヴァルドと同じ。


だが。


次元が違う。


男は空中で一歩踏み出した。


足元に光が生まれる。


だがそれはルミナ・ステップとは違う。


もっと安定している。


もっと広い。


まるで“場”そのものを作っているようだった。


「……なるほど」


男は呟く。


「未完成だが、中心はできている」


その視線が鋭くなる。


「試してみる価値はある」


次の瞬間。


男の姿が消えた。


アランの背筋に冷たいものが走る。


(来る)


ルミナ・コアが強く回転する。


体が勝手に動いた。


ルミナ・ステップ。


真上へ跳ぶ。


その直後。


さっきまでいた空間が歪む。


衝撃が空を裂いた。


アランは空中で体を捻る。


さらに一歩。


光。


もう一歩。


空を走る。


男の動きは速い。


だが、読める。


魔力の流れ。


歪みの予兆。


それがわずかに見える。


アランは一瞬、笑った。


「……やれる」


そして踏み込む。


ルミナ・ステップを連続させる。


空中を一直線に走る。


男へ向かって。


男の目が細くなる。


「攻めるか」


アランは木剣を振り上げた。


光が剣へ集まる。


ルミナ・コアが強く回る。


空中で踏み込む。


一撃。


だが、男は動かない。


ただ軽く手を上げた。


その瞬間。


剣の軌道が、ずれた。


「……なっ」


空間そのものが歪んでいる。


攻撃が届かない。


男は静かに言う。


「構造が浅い」


そして指を軽く動かした。


空気が震える。


アランの体が弾かれ、空中で体勢を崩す。


落ちる。


だが。


ルミナ・ステップ。


光。


足場。


ギリギリで止まる。


アランは息を吐いた。


「……くそ」


ヴァルドが下から見ている。


その目は鋭い。


だが止めない。


試している。


アランは再び構えた。


胸の光は安定している。


だが足りない。


(何が違う)


男は空中で静止したまま言う。


「見えているな」


アランは睨む。


「少しはな」


男は頷く。


「なら分かるはずだ」


静かに続ける。


「お前の光は、“流れ”に従っている」


その言葉に、アランの動きが止まる。


男は言う。


「だが俺は違う」


その瞬間。


空気が変わった。


周囲の魔力の流れが、ねじ曲がる。


男の周囲だけ。


別の空間のように。


「俺は構造そのものを変える」


アランの目が見開かれる。


(……これが)


ヴァルドと同じ無属性。


だが完成度が違う。


アランは息を吸った。


胸の光が回る。


(なら)


一歩踏み出す。


ルミナ・ステップ。


だが今度は違う。


流れに乗るのではない。


自分で流れを作る。


光を強く回す。


その瞬間。


足場の光が、わずかに安定した。


男の目がわずかに動く。


「……ほう」


アランは空中で踏み込む。


もう一歩。


さらに一歩。


光が連続する。


そして。


一直線に突っ込んだ。


「はあああっ!」


剣を振る。


光が軌跡を描く。


今度は、空間の歪みに負けない。


男の目が細くなる。


軽く手を上げる。


衝突。


光と歪みがぶつかる。


空気が弾けた。


アランの体が後ろへ弾かれる。


だが落ちない。


光の足場で止まる。


男はしばらくアランを見ていた。


そしてゆっくり言った。


「……合格だ」


その言葉に、アランは息を吐いた。


「試験かよ」


男はわずかに笑う。


「似たようなものだ」


そしてヴァルドを見る。


「面白いのを育てているな」


ヴァルドは答えない。


ただ腕を組んでいる。


男は再び空を見上げた。


「いずれまた来る」


その視線がアランへ向く。


「次は試す側ではない」


その意味を残し。


男の姿が、ふっと消えた。


空が静けさを取り戻す。


アランはその場に座り込んだ。


「……なんだあれ」


ヴァルドが歩いてくる。


「帝国の上位魔導士だ」


アランは苦笑した。


「化け物じゃないか」


ヴァルドは頷く。


「そうだ」


そして静かに言った。


「だが今のお前なら」


アランを見る。


「届く」


アランは空を見上げた。


胸の光が、静かに回っている。


ルミナ・コア。


それはまだ完成ではない。


だが確実に。


次の段階へ進んでいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ