↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強だと思った光魔法ですが習得が難しいです! ~魔法至上の国でダンジョンに挑む公爵家の落ちこぼれ~  作者: 空木 輝斗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
167/195

第167話:風の家系

帝都の夜は静かだった。


ルクレディア邸を出たあと、アランとリリアはしばらく並んで歩いていた。

石畳に街灯の光が落ち、二人の影が長く伸びている。昼間の出来事がまだ頭から離れないのか、アランの足取りはどこか重かった。


胸の奥を探る。

かつてそこにあった光の核は、やはり感じられない。まるで身体の中心を一つ失ったような、不自然な空洞が残っているだけだった。


リリアはその様子を横目で見ながら、ふと口を開いた。


「ねえ、アラン。他にご当主様とは何を話したの?」


問い方は軽かったが、視線は真剣だった。

アランは少し考え、すぐには答えずに歩き続ける。


「ただ、一つだけ分かったことがある」


「何?」


「闇の少年は、あの男の血筋だった」


リリアは足を止めた。


「……え?」


アランも立ち止まり、振り返る。


「父の息子だった。数世代に一度、闇属性が生まれるらしい」


短く息を吐く。


「……俺の弟だ」


「そんな……」


リリアは言葉を失う。だがすぐに、別の疑問が浮かんだように眉を寄せた。


「でも、それならどうして研究所なんかに……」


「盟約だそうだ」


アランは淡々と言った。


「闇の素質が出た者は、ある存在に引き渡す。昔から決まっているらしい」


夜風が静かに吹いた。


しばらく沈黙が続く。


やがてリリアは、少し考え込むように言った。


「……なんだか変ね」


「何が」


「帝国って、魔法の国でしょ?」


彼女は空を見上げる。夜空には星がいくつも浮かんでいた。


「それなのに、魔法の“裏”がこんなにあるなんて」


アランは苦笑する。


「魔法至上主義の国だからだろ。力がすべての国は、裏も深くなる」


「……そういうものかしら」


リリアは納得したような、していないような顔をした。


そして少し歩いたあと、今度は逆にアランが聞いた。


「そういえば、リリアの家も古い公爵家だよな」


「アルヴァイン家?」


「ああ。どんな家なんだ」


リリアは少し驚いた顔をした。


「急にどうしたの?」


「いや、なんとなく」


実際には理由があった。

リリアとの今までの出来事を思い出していたのだ。


光と風が共鳴した。

あれは偶然とは思えない。


リリアは少しだけ考え、それから肩をすくめた。


「普通の貴族よ。帝国でも古い家ってだけ」


「それだけか?」


「うーん……」


彼女は少し迷ったあと、思い出したように言った。


「昔から妙な役割があったって話は聞いたことあるわ」


「妙な役割?」


「魔脈を“整える家”だったとか」


アランの足が止まる。


「魔脈?」


「ええ。帝国の地下を流れてる魔力の流れ。昔はそれが乱れると大変だったらしいの」


リリアは笑って付け加えた。


「まあ、ただの昔話よ。今はそんなこと誰もやってないし、うちの家も普通の公爵家だから」


だがアランは黙っていた。


魔脈。


その言葉が胸に引っかかる。


母のことを思い出していた。


彼はほとんど母の記憶を持っていない。

ただ、執事から聞いたことがある。


母は元メイドだったが――


妙に魔力の知識があった。

ただのメイドとは思えないほどに。


研究者のようだった、と。


(……まさか)


アランは夜空を見上げる。


星の間を風が静かに流れていた。


そのときリリアが言った。


「でも変よね」


「何が」


「あなたと私」


彼女は少し笑う。


「光と風って、昔の伝承だと“並ぶ力”なんだって」


「並ぶ?」


「世界を整えるとか、そんな感じ」


リリアは自分で言ってから苦笑した。


「本当にただの昔話だけどね」


アランは何も言わなかった。


だが胸の奥で、何かが静かに繋がっていく感覚があった。


光。魔脈。

そして――風。

グラシオンが言った言葉がふと蘇る。


“競わせると違うものだな”


(……まだ終わってない)


力は失った。

光の核も、槍も。


だがそれでも。


アランはゆっくりと拳を握った。


(まだ、ここからだ)


夜の帝都に、静かな風が吹いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。