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最強だと思った光魔法ですが習得が難しいです! ~魔法至上の国でダンジョンに挑む公爵家の落ちこぼれ~  作者: 空木 輝斗


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第166話:静かな決意

ルクレディア邸を出たとき、帝都の空はすでに夕暮れに染まっていた。


高い塔の向こうに、赤い陽が沈みかけている。


アランは屋敷の石段をゆっくりと降りた。


体はまだ重い。

力が抜け落ちた感覚も消えていない。


胸の奥を探る。


かつてそこには確かに存在していたもの――

光の核。


だが今は、ただ空洞のような違和感しか残っていなかった。


「……本当に、持っていかれたのか」


あの男。


グラシオン・ルミノア。


闇の体系を築き、帝国の裏で動き続けてきた存在。


そして父は言った。


“帝国を影から守る存在”


守る。


その言葉が、どうしても引っかかった。


(守っている……?)


あれが?


あの圧倒的な存在が?


アランは無意識に拳を握る。


(違う)


少なくとも、あの瞬間に感じたものは――

そんな綺麗なものではなかった。


そのときだった。


「やっぱりここにいた」


背後から声がした。


振り返る。


そこにはリリアが立っていた。


夕暮れの光が金色の髪を照らしている。


「……いつから」


「さっき」


彼女は肩をすくめた。


「執事さんに聞いたのよ。“帝都の屋敷に行った”って」


アランは少し苦笑する。


「相変わらず情報が早いな」


「当然よ」


リリアはゆっくり歩み寄る。


そしてアランの前で立ち止まった。


少しだけ真剣な顔になる。


「……大丈夫?」


「何が」


「全部」


短い言葉だった。


だがその意味は重かった。


アランは一瞬だけ視線を逸らす。


「……問題ない」


「嘘」


即答だった。


リリアは腕を組む。


「魔力、ほとんど感じないわ」


アランは苦笑した。


さすがに誤魔化せない。


「少し……持っていかれた」


「少し?」


「かなり」


リリアは小さく息を吐いた。


「やっぱり」


しばらく沈黙が続く。


やがて彼女が口を開いた。


「……何者なの?」


アランは少し考える。


父の言葉が頭に浮かぶ。


“他言は無用”


だが。


完全に黙るのも違う気がした。


「帝国の……裏にいる存在らしい」


「裏?」


「影から守っているって父は言ってた」


リリアの眉がわずかに動く。


「守る、ね」


その言い方には明らかに疑問が含まれていた。


「……あなたはそう思う?」


アランは答えなかった。


代わりに静かに言った。


「俺の槍を持っていった」


リリアの目が鋭くなる。


「光導槍?」


「そうだ」


それを聞いた瞬間、リリアの表情が変わった。


「それ……かなりまずいんじゃない」


「かなりな」


アランは空を見上げる。


夕焼けがさらに濃くなっていた。


「父は言ったよ。諦めろって」


「無理よね」


「当然だ」


即答だった。


リリアは少しだけ笑った。


「でしょうね」


しばらく二人は並んで空を見ていた。


帝都の屋根が赤く染まっている。


その静けさの中で、リリアがぽつりと言った。


「……でも、あなた、今弱いわよ」


アランは肩をすくめた。


「知ってる。本当に知ってる」


リリアは少し考える。


そして真面目な顔で言った。


「じゃあ鍛え直しね」


「……は?」


「魔法」


「戦闘」


「全部」


アランは思わず笑う。


「いきなりだな」


「当たり前よ」


リリアは少しだけ挑発的に笑った。


「だって」


「あなた、あきらめる気ないでしょ」


アランは沈黙した。


そして、小さく言った。


「……ない」


リリアは満足そうに頷く。


「でしょ」


そして背を向けた。


「じゃあ決まり」


「決まりって」


「付き合うわよ」


リリアは振り返る。


「その男、ぶっ飛ばすんでしょ?」


アランは少しだけ驚いた顔をした。


そして、静かに笑った。


「……ああ」


夕焼けの空の下。


二人の影が長く伸びていた。


帝都の空は、ゆっくりと夜に沈んでいった。


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