↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強だと思った光魔法ですが習得が難しいです! ~魔法至上の国でダンジョンに挑む公爵家の落ちこぼれ~  作者: 空木 輝斗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
165/195

第165話:失われた力

帝都の上空に広がっていた異様な歪みは、静かに消えていった。


巨大なダンジョンとして展開していた魔力構造は、まるで最初から存在しなかったかのように霧散し、帝都の街には奇妙な静寂が戻っていた。


軍はすぐに調査隊を送り込んだ。


崩れた石畳、焼け焦げた地面、魔力の残滓。

それらが戦いの激しさを物語っていた。


そして――


瓦礫の中で、一人の少年が発見された。


「こっちだ! 生きているぞ!」


担架が運ばれる。

白い外套をまとった治療魔導士たちが駆け寄る。


その少年は、深く気を失っていた。


「アラン!」


その声が響いたとき、周囲の兵士たちは思わず振り返った。


金髪を揺らしながら駆け寄ってくる少女がいた。


リリア・アルヴァイン。


彼女は膝をつき、アランの顔を覗き込む。


「……よかった」


微かに息をしているのを確認し、安堵の息を漏らす。


だがその表情はすぐに曇った。


アランの体からは、ほとんど魔力が感じられなかったからだ。


「急いで医務棟へ!」


担架が持ち上げられ、アランは帝都の軍病院へ運ばれていった。


その頃、帝国軍本部では激しい議論が起きていた。


「例の少年はどこだ」


「すぐに拘束すべきです」


「ダンジョンの中心にいたのは奴だ!」


怒号が飛び交う。


だがその場の空気を断ち切るように、扉が開いた。


皇帝直属の伝令官が入ってくる。


そして静かに告げた。


「陛下の勅令である」


部屋が静まり返る。


「アラン・ルクレディアに対する一切の干渉を禁ずる」


ざわめきが広がる。


「な……」


「なぜだ」


「皇帝陛下が……?」


伝令官は淡々と続ける。


「これは皇帝の意思である」


「違反した場合、反逆と見なされる」


それだけ言うと、彼は踵を返して去った。


残された将軍たちは、悔しそうに歯を食いしばる。


「……くそ」


「従うしかないのか」


「たかが少年一人に……」


憤りが部屋の中に渦巻いていた。


数日後。


アランは病室の天井を見上げていた。


ゆっくりと意識が浮かび上がってくる。


「……ここは」


体を動かそうとする。


だが。


力が入らない。


胸の奥を探る。


《ルミナ・コア》。


そこにあったはずの光が、感じられなかった。


「……嘘だろ」


自分の魔力を確かめる。


ほとんど残っていない。


まるで体の中心が抜け落ちたような感覚だった。


「……持っていかれたのか」


あの男。


闇の中に現れた存在。


そのとき、扉が静かに開いた。


入ってきたのは、年老いた執事だった。


ルクレディア家の古参執事。


「お目覚めですか、アラン様」


「……執事長」


彼は深く一礼する。


「ご当主様がお待ちです。帝都の屋敷に来ております」


アランは眉をひそめた。


「……父上が?」


「はい」


執事は静かに言った。


「お会いになっていただきたいとのことです」


帝都のルクレディア邸。


重厚な書斎の扉が開く。


その奥に、一人の男が座っていた。


ガルシア・ルクレディア。


六大公爵家の一つを率いる男。


威厳に満ちた存在だった。


「来たか」


低い声。


アランは歩み寄り、跪く。


ガルシアはしばらく黙って彼を見ていた。


そして。


「……よくやった」


その一言だった。


アランは思わず顔を上げる。


父が褒めるなど、滅多にないことだった。


だがガルシアの表情は変わらない。


「お前はあのお方と対面した」


静かな声。


「それだけで十分だ」


アランの胸がざわつく。


「あの男は……、何者なんですか」


ガルシアは少しだけ視線を落とした。


「帝国を影から守る存在」


それ以上は語らない。


アランはさらに聞こうとする。


だが。


「槍のことなら諦めろ」


その言葉が先に落ちた。


アランの手がわずかに震える。


「……取り返すつもりです」


ガルシアは小さく鼻で笑った。


「不可能だ。お前とあのお方では格が違う」


沈黙。


やがてアランは別のことを聞いた。


「……あの闇の少年は、誰だったんですか」


ガルシアの目がわずかに細くなる。


「私の息子だ」


アランは息を呑んだ。


「闇属性は」


ガルシアは続ける。


「数世代に一人、我が血筋に現れる」


「そのときは引き渡す盟約になっている」


「誰に」


アランは知りながら聞いた。


ガルシアは静かに答える。


「あのお方にだ」


部屋が重い沈黙に包まれる。


「……つまり、最初から決まっていたんですね」


ガルシアは淡々と言う。


「それが血の責務だ」


そしてアランを見下ろした。


「お前もいずれ理解する。将来はあのお方に仕えるのだ」


その言葉に、アランの拳が強く握られる。


だが。


表情には出さない。


「……わかりました」


静かに答えた。


ガルシアは満足そうに頷く。


「このことは、当主しか知らぬ」


「他言は無用だ」


「……はい」


アランは頭を下げた。


だが胸の奥では、別の感情が燃えていた。


(あの槍は……、必ず取り戻す。あの男から)


静かな決意だけが、そこに残っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。