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最強だと思った光魔法ですが習得が難しいです! ~魔法至上の国でダンジョンに挑む公爵家の落ちこぼれ~  作者: 空木 輝斗


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135/195

第135話:要請

帝国魔導学院・中央塔。


いつもなら、学生が足を踏み入れることのない階層で、

アランは立ち止まっていた。


「……ここまで、か」


案内役の魔導官は、無言で扉を示すだけだ。

威圧はない。

だが、軽くもない。


扉が開く。


そこにいたのは、軍務省でも研究局でもない。

評定官その人だった。


「来てくれて感謝する、アラン・ルクレディア」


形式張った声。

だが、命令口調ではない。


アランは、わずかに眉を動かす。


「学生の身で、ここに呼ばれる理由が分かりません」


「分かっているはずだ」


評定官は、投影板を起動する。


映し出されるのは、

北西部外縁で発生した新ダンジョンの構造図。


「これは……」


「完成した状態で観測された」


評定官は、淡々と告げる。


「前兆なし。

律の揺らぎなし。

管理網を、完全にすり抜けている」


アランは、黙って見つめる。


「封鎖は不可能。

実習扱いもできない」


一拍、間を置いて。


「我々は、判断した」


評定官は、真正面からアランを見る。


「これは、敵対行動だ」


空気が、張りつめる。


「そして――」


評定官は、深く息を吸った。


「我々には、

この現象を“正面から受け止められる者”がいない」


沈黙。


「命令ではない」


はっきりと、そう言った。


「要請だ」


評定官は、言葉を選びながら続ける。


「君の光は、殲滅に向いていない。

だが――暴走もさせない」


「帝国は、

管理できないものを恐れる」


視線が、僅かに揺れる。


「そして今、

管理できないもの同士が、向かい合おうとしている」


アランは、静かに口を開いた。


「……俺を、前に出すということですね」


「そうだ」


即答だった。


「ただし、

君の判断を尊重する」


「撤退も?」


「許可する」


「交戦しない判断も?」


「……必要なら」


その答えに、アランは少しだけ驚いた。


「ずいぶん、譲歩しますね」


評定官は、苦く笑った。


「それだけ、追い込まれている」


沈黙が落ちる。


アランは、光導槍に触れた。


震えはない。

拒絶もない。


ただ、重い。


「一つ、条件があります」


評定官が、目を細める。


「聞こう」


「俺は、

帝国の“兵器”にはならない」


「……」


「必要なら戦います。

でも、命令で人を殺すことはしない」


評定官は、しばらく考え込んだ。


そして――頷いた。


「承知した」


「帝国は、

君を“切り札”として扱う」


「だが」


言葉に、重みが加わる。


「折るつもりはない」


その瞬間、

アランの胸に、微かな覚悟が灯る。


「分かりました」


短い返事。


「行きます」


評定官は、深く一礼した。


それは、

学生に向けるものではなかった。


一人の“判断者”に対する礼だった。


同時刻。


学院のどこかで、

リリアが、理由もなく立ち止まる。


(……行くな)


胸騒ぎ。


光は、もう後戻りできない場所へ向かっている。


だが――


導かれない。

拒まれない。


選ぶのは、

いつもアラン自身だった。


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