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紗奈と安心の物語  作者: たい


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伝えられたこと

第四話で「失敗しても大丈夫だと思える安心」を知った紗奈。


第五話では、その経験を誰かに話すことができるようになるまでを描きます。


第四話の旅行から数週間後。


紗奈はカフェの窓際の席に座っていた。


向かいには学生時代からの友人、美咲がいる。


二人は久しぶりに会っていた。


他愛のない話が続く。


仕事のこと。


最近見た映画のこと。


旅行のこと。


自然と話題は先日の旅行へ移っていった。


「旅行どうだった?」


美咲が笑顔で尋ねる。


「楽しかったよ」


紗奈も笑顔で答えた。


それは本当だった。


景色も良かった。


食事も美味しかった。


楽しい思い出もたくさんできた。


けれど、紗奈の頭には別の出来事も残っていた。


話そうか。


やめようか。


少し迷う。


以前の自分なら絶対に話さなかっただろう。


恥ずかしくて仕方がないからだ。


しかし今は少し違う。


紗奈はコーヒーカップを見つめた。


そして小さく息を吐く。


「実はね……」


少しずつ言葉を選びながら話し始める。


第一話の夜のこと。


第二話で備えを探したこと。


そして先日の旅行で感じたこと。


すべてを細かく話したわけではない。


けれど、自分が不安を抱えていたことは伝えた。


話し終えると紗奈は少し緊張した。


変に思われないだろうか。


笑われないだろうか。


そんな不安がよぎる。


しかし美咲は驚くほど普通の表情だった。


「そっか」


ただそれだけを言う。


そして続けた。


「でも、一人で抱え込まなくなったのは良かったと思うよ」


紗奈は目を瞬いた。


予想していた反応とは違った。


もっと大げさな反応を想像していた。


けれど美咲は自然だった。


「誰だって不安はあるし、備えるのも普通のことじゃない?」


その言葉を聞いて、紗奈は少し肩の力が抜けた。


そうなのかもしれない。


自分だけが特別なのではない。


不安を持つことも。


安心を求めることも。


決しておかしなことではないのだ。


窓の外では人々が行き交っている。


紗奈はその景色を見つめながら微笑んだ。


「ありがとう」


自然と言葉が出た。


美咲も笑う。


「また旅行行こうよ」


その言葉に紗奈は頷いた。


「うん」


今度は前よりも少しだけ自信を持って。


少しだけ安心して。


そう答えることができた。

第五話では、紗奈が初めて自分の不安や経験を誰かに話す姿を描きました。


安心は備えだけでは生まれません。


理解してくれる人の存在もまた、大きな安心になります。


紗奈は少しずつ、一人で抱え込まない生き方を覚え始めています。

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