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紗奈と安心の物語  作者: たい


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美咲の秘密

第五話で自分の不安を打ち明けることができた紗奈。


第六話では、今度は美咲が胸の内にしまっていた秘密を話し始めます。


休日の午後。


紗奈と美咲は駅前のカフェで向かい合って座っていた。


旅行の計画を立てるためだった。


行き先の話。


食事の話。


観光の話。


いつものように会話は弾んでいた。


そんな中、美咲がふと黙り込む。


珍しいことだった。


紗奈は少し首をかしげる。


「どうしたの?」


そう尋ねると、美咲は苦笑した。


「実はさ……」


そこで言葉が止まる。


少し迷っているようだった。


紗奈は急かさず待つ。


やがて美咲は小さく息を吐いた。


「紗奈が話してくれたから、私も話そうかなって思って」


その言葉に紗奈は驚く。


美咲にも何か悩みがあったのだろうか。


「私ね」


美咲は視線をテーブルへ落とした。


「子どもの頃、おねしょがなかなか治らなかったんだ」


紗奈は黙って聞く。


笑う気持ちなどまったく起きなかった。


美咲は続ける。


「周りの子はみんな卒業してるのに、自分だけ違ったからさ」


少しだけ寂しそうな笑顔だった。


「すごく恥ずかしかった」


その言葉には重みがあった。


紗奈は静かにうなずく。


恥ずかしい気持ち。


誰にも言えない気持ち。


それは少しだけ分かる気がした。


「家族は優しかったんだけどね」


美咲は笑う。


「でも自分で勝手に気にしちゃってた」


少し沈黙が流れる。


そして美咲は再び口を開いた。


「実はね……今でも対策はしてるんだ」


紗奈は静かに耳を傾ける。


「毎晩、安心して眠れるように準備してる」


その声は落ち着いていた。


昔のような強い恥ずかしさではなく、今の自分を受け入れているような響きだった。


「そうなんだ」


紗奈は自然にそう答えた。


驚きはあった。


けれど否定する気持ちはまったくなかった。


第二話で自分が安心を求めた時のことを思い出したからだ。


安心があることで心が軽くなる。


その感覚を紗奈自身が知っていた。


「誰かに話したの、初めてかもしれない」


美咲は少し照れくさそうに笑った。


「話してくれてありがとう」


紗奈はそう言った。


その言葉を聞いて、美咲の表情が少し柔らかくなる。


窓の外では午後の日差しが街を照らしていた。


安心の形は人それぞれだ。


旅行の時に安心を持つ人もいる。


眠る時に安心を持つ人もいる。


どちらも同じなのかもしれない。


紗奈はそう思った。


「また旅行行こうね」


美咲が笑う。


「うん」


紗奈も笑顔で答えた。


二人の間には、以前より少しだけ深い信頼が生まれていた。

第六話では、美咲が自分の過去と現在の不安について打ち明ける姿を描きました。


紗奈が見つけた安心と、美咲が持っていた安心。


形は違っていても、その根底にある気持ちはよく似ています。


安心とは弱さではなく、自分らしく過ごすための支えなのかもしれません。

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