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紗奈と安心の物語  作者: たい


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安心と自信

第三話で長距離移動への自信を得た紗奈が、友人との日帰り旅行へ向かう物語です。


しかし今回のテーマは「失敗しないこと」ではありません。


安心があることで、失敗しても前を向けること。


それを紗奈が知る一日です。

第三話での旅から一か月が経過した頃のことであった。


紗奈は休日の朝、駅のベンチに腰掛けていた。


今日は友人との日帰り旅行の日。


以前の紗奈なら落ち着かない気持ちでいっぱいだっただろう。


トイレの場所。


移動時間。


乗り換え。


そんなことばかり気にしていたはずだ。


けれど今は違った。


不安はある。


それでも以前ほどではない。


第二話で見つけた安心。


第三話で得た自信。


それらが少しずつ紗奈を支えていた。


列車がホームへ入ってくる。


紗奈は静かに立ち上がった。


車内へ入り、窓際の席へ腰を下ろす。


青空が広がっていた。


列車は定刻通りに発車する。


景色がゆっくりと流れ始めた。


本を読む。


飲み物を飲む。


友人とメッセージを交わす。


旅を楽しむ余裕があった。


第一話の頃には考えられなかったことだった。


しかし目的地まであと少しという頃だった。


紗奈はふと違和感を覚える。


強い尿意だった。


「あれ……」


思わず時計を見る。


次の停車駅まではまだ時間がある。


胸が少しだけざわついた。


第一話の夜が頭をよぎる。


夜行列車。


あと少しだった時間。


間に合わなかった夜。


けれど、あの頃とは違った。


紗奈はゆっくり深呼吸する。


大丈夫。


そう思えた。


安心できる備えがある。


その事実が心を支えていた。


それでも列車はすぐには止まらない。


時間はゆっくり過ぎていく。


我慢は少しずつ苦しくなる。


紗奈は窓の外を見る。


焦らない。


慌てない。


そう言い聞かせる。


そして――


じゅわぁっ……


紗奈は静かに目を閉じた。


第一話の時とは違う。


胸を締めつけるような絶望はなかった。


数秒後。


紗奈はゆっくり息を吐く。


「……大丈夫」


自然と言葉が漏れた。


恥ずかしさはある。


悔しさも少しある。


けれど、あの夜のような恐怖はない。


何も準備がなかった頃とは違う。


今は安心がある。


その違いはとても大きかった。


列車は変わらず走り続ける。


紗奈は窓に映る自分を見る。


少し驚いた顔。


けれど、どこか落ち着いた顔でもあった。


やがて列車は駅へ到着する。


ドアが開く。


紗奈は立ち上がった。


心臓は少し速く鳴っていた。


それでも足は止まらない。


ホームへ降りる。


柔らかな風が吹いていた。


第一話なら立ち尽くしていたかもしれない。


けれど今は違う。


紗奈は歩き出した。


安心とは失敗しないことではない。


失敗しても大丈夫だと思えること。


その意味を、紗奈は少しずつ理解し始めていた。


そして友人の待つ改札へ向かう。


表情には小さな自信があった。

第四話では、紗奈は再び「じゅわぁっ……」を経験します。しかし第一話との違いは、その後の気持ちです。


何もなかった頃の失敗ではなく、安心を持った上での出来事。


失敗しても前へ進めること。


それが紗奈にとっての新しい成長でした。

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