次の旅へ
第二話で備えを手に入れた紗奈が、実際に長距離移動へ挑戦する物語です。
第二話から数週間後。
紗奈は再び駅のホームに立っていた。
目の前には長距離列車。
第一話の夜と似た状況だった。
違うのは、今の紗奈には備えがあることだった。
改札を抜け、車内へ入る。
指定された座席へ向かう。
窓際の席だった。
荷物を棚に上げる。
深呼吸する。
そして小さく微笑んだ。
「大丈夫」
自分に言い聞かせるようにつぶやく。
第一話の頃なら、乗車した時点で不安になっていた。
トイレの場所を何度も確認しただろう。
到着時間ばかり気にしただろう。
けれど今は違う。
不安がなくなったわけではない。
それでも以前ほど心は追い詰められていなかった。
列車が発車する。
景色がゆっくり流れ始めた。
紗奈は窓の外を眺める。
青空が広がっている。
旅は順調だった。
車内販売が来る。
飲み物を買う。
本を読む。
景色を見る。
第一話ではできなかったことだ。
あの時は不安でいっぱいだった。
しかし今日は違う。
安心できる準備がある。
そのことが心に余裕を与えてくれていた。
数時間後。
紗奈はふと窓に映る自分を見る。
ダークグレーのパーカー。
白いTシャツ。
グレーのジーンズ。
見慣れた姿だった。
そして以前とは違う表情をしていた。
少しだけ自信がある。
そんな顔だった。
「来てよかったな」
自然と言葉が漏れる。
旅はまだ続いている。
不安がゼロになったわけではない。
けれど、不安だけに支配されることもなくなった。
それが嬉しかった。
列車は目的地へ向かって走り続ける。
紗奈は窓の外の景色を眺めながら思う。
第一話の夜。
あの失敗は決して楽しい思い出ではない。
けれど、あの経験があったから今の自分がいる。
第二話で見つけた安心。
そして今日の旅。
少しずつだけれど前へ進んでいる。
そう感じられた。
列車は午後の日差しの中を走る。
紗奈は静かに微笑んだ。
旅はまだ始まったばかりだった。
第三話は「失敗」や「確認」ではなく、「安心を持って行動すること」がテーマです。紗奈はまだ不安を抱えていますが、その不安と上手に付き合いながら前へ進み始めています。




