雪の朝
第四十七話では、温泉旅館で迎える雪の朝を描きます。
静かな雪景色と旅館ならではの穏やかな時間が、四人を迎えてくれます。
朝。
まだ外が薄明るい時間だった。
旅館の部屋には静かな空気が流れている。
窓の外から聞こえてくるのは、
風の音だけだった。
莉奈はゆっくりと目を開く。
「ん……」
暖かな布団の中は心地よい。
昨夜はよく眠れた気がした。
少しだけ体を起こす。
部屋の中はまだ静かだった。
紗奈も。
美咲も。
悠斗も。
まだ眠っている。
莉奈はそっと窓の方を見る。
そして思わず目を見開いた。
「すごい……」
窓の外は真っ白だった。
昨夜も雪は降っていた。
けれど今朝の景色は別物だった。
旅館の庭。
木々。
屋根。
遠くの山。
見えるものすべてが白く染まっている。
まるで絵本の中の世界だった。
莉奈は静かに窓際へ移動する。
ガラス越しに見る雪景色は幻想的だった。
空からは今も雪が舞っている。
大きな雪片が、
ゆっくりと地面へ降りていく。
その様子を見ているだけで心が落ち着いた。
しばらく景色を眺めていると、
後ろから小さな声が聞こえる。
「おはよう」
紗奈だった。
「おはようございます」
莉奈は微笑む。
「雪、見ました?」
「うん」
紗奈も窓の外を見る。
そして小さく息を漏らした。
「綺麗だね」
二人は並んで雪景色を眺める。
言葉は少なかった。
でも不思議と心地よかった。
静かな朝。
静かな雪。
旅館ならではの特別な時間だった。
その時。
布団の方から声が聞こえる。
「もう朝……?」
美咲だった。
まだ少し眠そうである。
「雪だよ」
紗奈が言う。
その瞬間。
美咲は勢いよく起き上がった。
「えっ!?」
慌てて窓へ向かう。
「すごーい!」
部屋中に元気な声が響く。
その声で悠斗も目を覚ました。
「おはようございます」
「おはよう」
四人は窓際へ集まる。
旅館の庭には誰の足跡もなかった。
真っ白な雪原のようだった。
「一番乗りしたい」
美咲が言う。
「朝食が先です」
悠斗が即座に答える。
全員が笑った。
しばらくすると、
旅館の人が朝食の準備ができたことを知らせてくれた。
四人は身支度を整えて部屋を出る。
廊下の窓から見える景色も真っ白だった。
「どこ見ても雪ですね」
莉奈が言う。
「冬って感じだね」
紗奈も微笑む。
食事処へ向かう途中、
旅館の人とすれ違った。
「たくさん積もりましたね」
紗奈が声を掛ける。
「ええ。今年でもかなり多い方ですよ」
その言葉に四人は顔を見合わせる。
ますます楽しみになった。
朝食も豪華だった。
炊きたてのご飯。
焼き魚。
味噌汁。
小鉢に並ぶ料理。
窓の外には雪景色。
「おいしい……」
莉奈は思わず笑顔になる。
温かな朝食は体に染み渡った。
「今日はどこ行くんだっけ?」
美咲が聞く。
「温泉街を散策してから展望台ですね」
悠斗が答える。
「雪景色の写真いっぱい撮ろう!」
「いいね」
紗奈も頷いた。
朝食を終える頃には、
四人の表情は期待でいっぱいだった。
雪景色。
温泉街。
仲間との時間。
今日もきっと、
忘れられない一日になる。
窓の外では雪が静かに降り続いていた。
四人は笑顔で立ち上がる。
新しい思い出を作るために。
冬の旅はまだ続くのだった。
第四十七話のテーマは「特別な朝」です。
いつもとは違う景色の中で迎える朝は、それだけで心に残る思い出になるのでした。




