打ち明けられたこと
第十二話では、悠斗が自分の不安についてもう少し詳しく打ち明けます。
それは紗奈にとって、とてもよく分かる悩みでした。
三人が少しずつ本音を話せるようになっていく物語です。
ある休日の午後。
紗奈、美咲、悠斗の三人は再び集まっていた。
駅近くの落ち着いたカフェ。
窓際の席に座り、それぞれ飲み物を手にしている。
最近では三人で会うことも少しずつ増えていた。
旅行の話。
仕事の話。
好きな景色の話。
今日も会話は途切れない。
そんな中、ふと話題は長距離移動の話になった。
「そういえば」
美咲が言う。
「悠斗さんって、今は移動平気なの?」
悠斗は少し考える。
そして苦笑した。
「平気になったというより、付き合い方を覚えた感じですね」
紗奈は静かに耳を傾ける。
悠斗は続けた。
「昔は本当に不安でした」
窓の外へ目を向ける。
少し昔を思い出しているようだった。
「新幹線とか高速バスとか」
「うん」
紗奈が頷く。
「トイレが近くにない状況が怖かったんです」
その言葉に紗奈は思わず微笑んだ。
以前の自分も同じだったからだ。
悠斗は少し照れくさそうに笑う。
「今だから言えるんですけど」
そこで言葉が止まる。
少し迷っているようだった。
美咲も紗奈も急かさない。
しばらくして悠斗は小さく息を吐いた。
「実は僕も安心のための準備をしてるんです」
その言葉に紗奈は驚かなかった。
むしろ自然なことのように感じた。
「そうだったんだ」
悠斗は頷く。
「お守りみたいなものですね」
そして少し笑う。
「持ってるだけで安心できるんです」
その表情はどこか穏やかだった。
不安をなくしたわけではない。
不安と付き合えるようになったのだ。
紗奈はその気持ちがよく分かる。
第二話で安心を探した日のことを思い出す。
あの日、自分も同じだった。
美咲が優しく微笑む。
「安心って大事だね」
その言葉に二人も頷いた。
窓の外では午後の日差しが街を照らしている。
穏やかな時間だった。
誰も笑わない。
誰も否定しない。
ただ受け止めてくれる。
それが嬉しかった。
悠斗は少し肩の力を抜いたようだった。
「話してよかった」
小さくそう言う。
紗奈も笑う。
「私もそう思う」
第一話の頃の自分なら想像できなかった。
不安を話せる人がいること。
理解してくれる人がいること。
それは大きな安心だった。
三人は顔を見合わせる。
そして自然と笑顔になった。
安心の形は違う。
けれど安心を求める気持ちは同じだった。
そのことが、三人をつないでいた。
第十二話のテーマは「打ち明ける勇気」です。
不安を抱えている時、人は一人になりがちです。
しかし、話してみることで見える景色もあります。
悠斗もまた、自分の安心を誰かと分かち合えるようになり始めていました。




