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紗奈と安心の物語  作者: たい


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新しい友達

第十一話では、紗奈・美咲・悠斗の三人が初めて顔を合わせます。


そして悠斗もまた、長距離移動中のトイレへの不安を抱えていたことが明かされます。


違う経験を持つ三人ですが、「安心」を求める気持ちは共通していました。

第十一話 新しい友達


休日の午後。


紗奈は駅前のカフェへ向かっていた。


今日は美咲と会う約束をしている。


そしてもう一人。


第九話で出会った悠斗も来ることになっていた。


カフェへ入ると、美咲はすでに席に座っていた。


「おはよう」


「おはよう」


紗奈が席へ着く。


しばらくすると、入口のベルが鳴った。


悠斗だった。


「こんにちは」


少し緊張した様子で会釈する。


「こんにちは」


紗奈も笑顔で返した。


美咲も手を振る。


「初めまして。美咲です」


「悠斗です」


最初は少しぎこちなかった。


けれど会話は思ったより自然に続いた。


仕事の話。


旅行の話。


好きな景色の話。


美味しかった駅弁の話。


気が付けば三人とも笑っていた。


「そういえば」


美咲がコーヒーを置く。


「悠斗さんって、前は移動が苦手だったんですよね?」


悠斗は少し驚いた顔をした。


紗奈も思わず顔を上げる。


第九話でも詳しい話は聞いていなかった。


悠斗は少し考えたあと、小さく笑った。


「そうですね」


そして続けた。


「今だから少し話せるんですけど」


その言葉に二人は静かに耳を傾ける。


「昔は長距離移動がすごく苦手だったんです」


悠斗はゆっくり話し始めた。


「新幹線とか、高速バスとか」


「旅行も苦手だった?」


紗奈が尋ねる。


「はい」


悠斗は頷く。


「特にトイレが近くにない状況が不安で」


その言葉に紗奈は小さく目を見開いた。


どこか聞き覚えがあった。


昔の自分と似ている。


悠斗は続ける。


「もし間に合わなかったらどうしようって、ずっと考えてました」


美咲は静かに聞いている。


「だから旅行に行く前は必ず準備していました」


悠斗は少し照れくさそうに笑った。


「安心できるように、自分なりの備えを持つようになったんです」


紗奈は思わず微笑む。


その気持ちは痛いほど分かる。


第二話で自分も同じように安心を探したからだ。


「私もだったよ」


紗奈がそう言う。


悠斗は少し驚いた表情を見せた。


「そうなんですか?」


「うん」


紗奈は頷く。


「だから分かる」


その一言だけだった。


けれど十分だった。


美咲も優しく笑う。


「安心って本当に大事だよね」


三人は顔を見合わせる。


安心の形は違う。


不安の内容も違う。


けれど、安心を求める気持ちは同じだった。


窓の外には青空が広がっている。


三人はそれぞれ違う道を歩いてきた。


それぞれ違う経験をしてきた。


それでも今は同じテーブルを囲んでいる。


不思議な縁だった。


けれど心地よい縁でもあった。


気が付けば夕方になっていた。


「今日は楽しかったです」


悠斗が言う。


「私も」


紗奈は笑う。


「また集まりましょう」


美咲が言う。


「ぜひ」


悠斗も笑顔で答えた。


三人は店を出る。


夕陽が街を優しく照らしていた。


紗奈は空を見上げる。


第一話の頃には想像できなかった景色だった。


安心は一人で見つけるものだと思っていた。


けれど今は違う。


誰かと分かち合うこともできる。


そう思えるようになっていた



第十一話のテーマは「つながる安心」です。


紗奈は第一話で一人きりの不安を抱えていました。


しかし今は違います。


美咲がいて、悠斗がいて、それぞれが安心を分かち合えるようになりました。


安心は一人で抱えるものではなく、誰かと共有することでさらに大きくなるのかもしれません。

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