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紗奈と安心の物語  作者: たい


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旅のあとで

第十話では、旅行から帰ってきた紗奈が美咲に旅の思い出を話します。


第九話の再会を経て、紗奈がどれだけ変わったのかを振り返るお話です。

旅行から戻った週末。


紗奈はいつものカフェで美咲と向かい合って座っていた。


窓の外では人々が行き交っている。


温かいコーヒーの香りが漂っていた。


「それで?」


美咲がにやりと笑う。


「続きは?」


紗奈は苦笑した。


旅行の話をしていたのだ。


夜行バス。


観光地。


見た景色。


そして――


悠斗との出会い。


「別にそんな話じゃないよ」


「本当に?」


美咲は楽しそうだった。


紗奈は少しだけ顔を赤くする。


「たまたま隣の席だっただけ」


「ふーん」


まったく信じていない顔だった。


「でも翌日また会ったんでしょ?」


「うん」


「それで一緒に観光したんでしょ?」


「うん」


「十分すごいと思うけど」


紗奈は返す言葉に困った。


確かに偶然だった。


けれど不思議な縁だったことも事実だ。


美咲はコーヒーを飲みながら笑う。


「楽しそうでよかった」


その言葉に紗奈は少し驚いた。


からかわれると思っていたからだ。


「そうかな」


「そうだよ」


美咲は頷く。


「昔の紗奈なら旅行の話より不安の話ばかりだったもん」


紗奈は思わず苦笑する。


その通りだった。


第一話の頃の自分は、旅を楽しむ余裕なんてなかった。


不安ばかり見ていた。


けれど今は違う。


旅の思い出を話している。


出会った人の話をしている。


景色の話をしている。


それが少し嬉しかった。


「変われたのかな」


紗奈がぽつりと呟く。


すると美咲は迷わず答えた。


「うん」


その返事はとても自然だった。


「すごく変わったと思う」


紗奈は窓の外を見る。


行き交う人々。


晴れた空。


穏やかな午後。


少し前の自分なら想像できなかった時間だった。


「ありがとう」


そう言うと、美咲は笑う。


「どういたしまして」


二人は顔を見合わせて笑った。


安心とは何だろう。


紗奈は考える。


それは失敗しないことではない。


不安がなくなることでもない。


安心とは、誰かと笑いながら思い出を話せることなのかもしれない。


そんなことを思いながら、紗奈はコーヒーカップを手に取った。

第十話のテーマは「振り返る安心」です。


安心は旅の途中だけでなく、旅の思い出を誰かと語り合う時間にもあります。


紗奈は少しずつ、自分の成長を実感できるようになっていました。

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