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飲まずにやってられるか! リストラおじ、ダンジョンにて酔剣に目覚める  作者: 道雪ちゃん


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目覚めと覚醒の確認

ゆるゆると書いてます。

変なところがあれば都度ストーリーに関わらない程度に直しております。

鳴り響くテレビの音が、微かに耳の奥へと届いてくる。


重い瞼をゆっくりと開けると、視界に飛び込んできたのは古い天井だった。


気づけば、俺は居間の畳の上で、大の字になったまま無様に寝転がっていた。


「……う、頭が……割れそうだ……」


頭央を締め付けるような激しい頭痛と、胃の底からせり上がってくる不快な吐き気。


それだけじゃない。


身体を少し動かそうとしただけで、自分が信じられないほど酒臭く、衣服や肌が謎の液体でベタベタと汚れているのが分かった。


(……俺は一体、なんて酷い夢を見ていたんだ……)


最悪の目覚めに顔をしかめながら、俺はズキズキと痛む頭を手で押さえ、這うような動作でゆっくりと身体を起こした。


「気持ち悪い……完全に飲みすぎた……」


喉の奥から漏れるのは、酒臭い匂いと情けない愚痴だけだ。


視線を落とすと、ローテーブルの上には完全に空になった缶ビールが1本と、食べかけのイカのおつまみが転がっている。


そして――そのすぐ横に、場違いな古い日本刀がぽつんと置かれていた。


「日本刀……? ……あ」


その存在を目にした瞬間、俺の脳裏を爆発的な衝撃が駆け巡った。


夢じゃなかった。


ズキズキと激しく主張する頭をどうにか働かせ、必死になってダンジョン内での詳細な出来事を思い出そうとする。


だが、アルコールに浸された脳は記憶を曖昧にしており、霧がかかったように思い出せなかった。


ただ覚えているのは、ただ猛烈な怒りに任せて刀を振り抜いた、あの奇妙な浮遊感だけだ。


「ダメだ、考えたら余計に……オエッ……」


限界だった。


俺は口元を手で押さえ、猛烈な勢いで立ち上がると、そのまま廊下を突き抜けてトイレへと駆け込んだ。


便器に縋り付き、胃の中に残っていたアルコールと水分をすべて吐き出す。


胃液まで出し切ってようやくすっきりした俺は、洗面台へと向かって入念に口を濯ぎ、冷たい水で何度も顔を洗った。


冷気が肌を刺激したおかげで、濁っていた思考が段々とクリアになっていく。


「……やったんだよな、俺。本当に、あの化物を……」


リビングへと戻り、畳の上に置かれていた日本刀を、畏怖を込めて両手でそっと持ち上げる。


「本当に、覚醒したのか……? ……ステータス」


一般人が何の公的な手続きもなしに未登録のダンジョンに入り、無傷で生還できるわけがない。


半信半疑のまま、探索者たちの間で広く知られているあの言葉を口にしてみる。


すると次の瞬間、俺の視界のすぐ目の前に、淡い光を放つ半透明のスクリーンのような画面がぽっかりと浮かび上がった。


そこには、俺自身の名前と共に、明確な数字の羅列が記載されていた。


名前:桐原 悠馬

ジョブ:酔剣士

レベル:1

HP:26

MP:8

筋力:11

耐久:8

敏捷:9

魔力:6

器用:12

運:8


酩酊度:0%


【スキル】

■酔剣


「なんだ……これ……」


表示された画面を凝視しながら、俺は呆然と呟いた。


まずは、そのあまりにも奇妙なジョブの名前だ。


ただの『剣士』や『戦士』なら、前職の業務データでも腐るほど目にしてきた。


だが、『酔剣士』なんてジョブは、一度だって聞いたことがない。


俺はスマートフォンを引っ掴むと、すぐさま検索エンジンに『酔剣士』という単語を打ち込んで検索をかけた。


しかし、画面に表示されたのは『一致する情報は見つかりませんでした』という冷たい一文だけだった。


そして、もう1つ。スキル欄にある『酔剣』の文字。


これも間違いなく、この妙なジョブに関連しているのだろう。


画面上のその文字をじっと見つめ続けていると、文字が歪むようにして変化し、詳細な説明テキストが浮かび上がってきた。


■酔剣《ユニークスキル》

理性制御を緩和し、本能領域で戦闘を行う特殊剣術。

酔いが深いほど、ステータス・回避・連撃性能が上昇する。

素面状態では、効果は発動せず、限界を超えると『悪酔い』状態となる。


「本能領域? なんだよ、それ……」


説明を読んでも、素人の俺にはさっぱり意味が分からなかった。


だが、確実なことが2つだけある。


1つは、これで俺が名実ともに『探索者』の仲間入りを果たしたということ。


そしてもう1つは――このスキルは、お酒を飲んで酔わなければ、ただの1ミリも効果を発揮しないという、とんでもなくピーキーな性能だということだ。


「とにかく、住民票を移すついでに、ちゃんと探索者登録をしに行かないとな……」


未登録のままダンジョン資源を換金しようとすれば、厳しく罰せられる。


それに、何よりまずは、このじいちゃんの形見の日本刀をどうにかしなければならない。


泥酔した勢いで勝手に持ち出してしまったが、これは流石に元の書斎へと戻しておくべきだ。


「ごめん、じいちゃん」


誰もいない静かな家の中で、小さく頭を下げる。


気のせいか、頭の芯のあたりで『この悪ガキが!!』と、生前の祖父がよく俺を叱り飛ばしていた時の怒鳴り声が聞こえた気がしないでもなかった。


ブックマーク、リアクション、評価をしていただけると幸いです。

よろしくお願いいたします。

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