第2話 平穏な学園生活、早くも終了のお知らせ
タイマーの甲高い音が響き渡った。
この時をもって、彼、新入生代表の負けは確定したのだ。
「はい、時間です。生徒の皆さんは、指定のフォームに入りお二方のどちらかに投票してください。」
書記の人?が投票を促す。私は興味がないからスルーしよ……
あくびが出そうな私の隣ではしゃいでいたのは、案の定桃子であった。
「みっちー!!いまの見た!?会長めっちゃかっこよかったんだけどー!!私も偉くなったら『時間は有限だからね♡』って言ってみたいなー!」
大根役者かと思ったが彼女はとても真面目に語っていた。
なぜ授業は真面目に聞かないのにどうでもいいところは聞いてるんだろう……
そんなことを思いながら私は返した。
「流石の名演技です。桃子さんはやはり銀河一の大俳優になられる器の持ち主だ!」
「ちょっと!絶対馬鹿にしたでしょ!私は至って真面目で本気なんですけど!」
ふんす!と桃子が怒る。私は当然の疑問を投げ返した。
「ちゃんと真面目に聞いてたなら、今回の会長の論理の穴にも気づくよね?どこだか教えてよ。」
少しイタズラな質問だったかな?と内心で思っていた。
「え?会長なんか変なこと言ってたっけ。」
さも当然だというふうに返ってきた質問。
質問に質問で返すなよ!と思ったが理解できてなさそうだったので説明してあげよう。
「とりあえず教室に移動しながら説明するね。」
音楽堂から教室につながる道を私たちは歩いていた。
「それでー、会長の論理の穴ってなに?」
桃子が不思議そうに聞いてくる。
「これは言い方の問題なんだけど、さっき会長の言っていた『感情を理解する』ってどういうことだと思う?」
私は桃子に理解させるため、質問で返した。
桃子は腕を組んで考えているようだ。
「感情を理解するって、感情を知らない人が感情を知識として蓄えるって意味なんだよ。」
言い方に配慮しつつ気づかせたいので、わざと遠回りして言ってみた。
あいにく桃子は気づかない様子だった。
「えーっと。『感情を理解する』が違うってこと?」
「もう少しヒントを出すと、今回の議題は『AIに感情はあるか否か』だったよね。私たちは、感情を知識として使ってるっけ。」
私が論理の筋道を立てながら、桃子に答えさせるように聞いてみる。
すると桃子は指を鳴らしてこっちを向いた。
「わかった!!感情を理解するのと感情を持つのはまた別ってことでしょ!!」
「おっ、正解。会長は感情を理解するという人間が理解しにくい場所を複雑に語ることで、あたかもこれが議題かと思わせるように差し替えたんだ。」
実際、桃子も騙されていたし結果としては成功なのだろう。
圧倒してる姿を見せれば投票はいとも容易く集まるだろうし。
「やっぱり会長すごくない!?あたしも生徒会長になりたいなー!」
そんな夢物語を語っている桃子に私は少し笑ってしまった。
「とりあえず生徒会に入ってみたら?そこから実績を積み上げていけばいいじゃん。」
「いや!やっぱやめとこ。みんながカラオケとか言ってる中自分だけ仕事してるとか死んでも嫌だからね!!」
桃子がそんなことを言っていると……
「それは残念だ。生徒会は万年人手不足なのだがね。」
振り返ると、そこにはセレスが立っていた。
「か、会長〜。違いますよー!あ、一年の桃子です!よろしくお願いします!」
セレスと出会ったからなのか、桃子が少しテンパっていた。
「桃子くんか、よろしく。私の名前はセレス・アリョーシャだ。」
さっき言ってただろ!と思ったが、口をつぐんだ。
なぜなら私は——
「それにしても御子!この学園に入るなら早く言ってくれよー!私が特等席で入学させたのに!」
——なぜなら私は、この人と幼馴染だからである。しかも一個隣の家だ。
とはいえ、セレスさんが高校に上がってからはほとんど話していなかったので、生徒会のあの賭けの話も、私は先輩から聞くまで知らなかったのだが。
「あはは。セレスさんも元気してましたか?それと、私のことはいいのでもう少し周りを見ていただけたらと思うのですが。」
『なぜか一年があのヤバい生徒会長、セレス・アリョーシャと親しげに話してる』なんて噂になったら私の平穏な学園生活がなくなってしまう!
はよう静まれと、私は丁寧に言った。
しかし、
「どうしたんだ!?昔はあんなにおねーちゃんおねーちゃんと呼んでくれてたのに…… どうして敬語になっているんだー!!」
激しさは増すばかりで、周りの注目に体が耐えられなくなっていた。
「だから!!ちょっと静かにしてって!!周りの人のことも気にして!!」
キレた。凄まじいくらいにキレてやった。
すると、流石にヤバいと思ったのか、セレスは少し落ち着きを取り戻し、話し始める。
「とにかく、二人とも。生徒会は年中無休の人手不足だから、ぜひ前向きに検討してくれ。」
ではまた!と3年の教室に嵐が帰っていったのだった。
やっとひと息つけると思った私は、桃子の方を向く。
すると桃子が目をキラキラさせながら私に話しかけてきた。
「みっちー、会長と知り合いだったの!?めっちゃビックリしたんだけど!」
そうだった……
彼女はねぇねぇと私の袖を引っ張りながら聞いてくる。
はぁ、私の周りはなぜこんなやつばかりなのだろう……




