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原作イベント

 俺はレオ先輩についていく。

 試験会場から少し離れた場所。

 人の少ない中庭まで来ると、レオ先輩が足を止めた。


 「まずは、入学試験お疲れ様」


 「ありがとうございます」


 「どうだった?」


 「筆記は……まあ、たぶん大丈夫です」


 「実技の方は?」


 「そっちは、それなりに」


 「それなり、か」


 レオ先輩が少し笑う。


 「今日の試験を見ていた」


 「……え?」


 「君の実技試験だ」


 「見てたんですか?」


 「ああ。生徒会として、試験監督の補助をしてたんだ」


 「なるほど…」


 レオ先輩は続ける。


 「君を見て、正直に言うと驚いた」

 「前に会った時も、魔力制御が綺麗だとは思ったが、今日のはそれ以上だった」


 「…………」


 まあ、当然と言えば当然だ。

 あの時からも訓練は続けていたし、ギルドの依頼で実戦経験も積んでいたのだから。

 本当なら、できるだけ目立たないようにしたかったのだが…。

 まあ、Aクラスを狙う以上仕方ない。


 「それで、どうだった?」


 「何がですか?」


 「試験、合格できそうか?」


 「…はい」


 「そうか、良かった」

 「…それと、もう一つ聞きたい」

 「この学園に入って、楽しめそうか?」


 「…………」


 俺は少し考える。

 学園。

 この世界に転生してから、ずっと遠い場所だと思っていた。

 原作では、俺はここに存在しない。

 それでも今は――。


 「はい」


 「そうか」


 レオ先輩は嬉しそうに笑った。


 「なら、楽しみにしている」

 「君がこの学園に入るのを」


 その言葉を聞いて、少し嬉しくなる。


 「ありがとうございます」

 「レオ先輩」


 レオ先輩は頷く。


 「じゃあな、アルベルト君」

 「また会おう」


 「はい」


 レオ先輩はそのまま学園の方へ戻っていく。

 俺は、その背中を見送った。


 「…………」


 ……なんだか不思議な気分だ。

 本来なら、俺とレオ先輩がこうして話すことなんてなかった。

 それなのに。


 「……悪くない」


 俺は小さく呟く。

 入学試験も終わった。

 あとはもう、結果を待つだけだ。

 今日は帰ろう。


◇◇◇


 学園を出て、街道を歩く。

 家から学園までそこまで遠い訳ではないので、父には先に帰ってもらった。


 「…………」


 試験のことを考える。

 Aクラスに入れるだろうか。

 実技は問題ないと思う。

 筆記は……まあ、祈るしかない。

 そんなことを考えながら歩いていると――。


 「……?」


 少し先から、何か聞こえてきた。


 「きゃあっ!」


 女の子の声。

 俺は足を止める。


 「……今のは」


 俺は声の元へ向かう。


 「助けて!」


 街道から少し外れた場所。

 そこに、一人の少女がいた。

 そして――。

 その少女の前に、中型の魔物がいる。


 「…………」


 俺は目を見開く。

 見覚えがある。


 「……まさか」


 頭の中で、前世の記憶が蘇る。


 『聖魔のブリリアント・アカデミア』


 ゲーム序盤。

 入学前に発生するイベント。

 ヒロインが魔物に襲われる。

 そして、そこへ現れる人物がいる。

 レオ・ヴィンセントだ。


 「…………」


 間違いない。

 これは入学前イベント。

 原作ではこの後、レオ先輩が現れる。

 そして魔物を倒し、主人公を助ける。

 そこから主人公はレオ先輩に憧れる。

 原作ではそうなっていた。


 俺は少女を見る。

 彼女は必死に魔物に魔法を放っている。


 そしてふと、あることに気づく。


 「……あれ?」

 「…レオ先輩は?」


 俺は辺りを見回す。


 いない。

 どこにもいない。

 原作ならここにレオ先輩がいるはず。


 「…………」


 俺は少し考える。

 そして、思い出す。


 今日、レオ先輩は俺に会いに来ていた。

 俺と話をするために。


 つまり。

 原作ではこの時間に、ここへ来るはずだったレオ先輩が――。


 「俺に会いに来たせいで、いない?」


 「…………」


 背筋に、嫌な汗が流れる。


 原作イベントが――。

 俺のせいで、変わっている。

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