↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/14

暗殺者

 「…………」


 「おい、寝るなよ」


 「あ、ああ」

 「すまん」


 「まあ、眠いのも分かるけどな」


 「でも、今日は研究発表の日だからな。気を緩めるなよ」


 「分かってるって」


 護衛たちが笑う。

 研究発表も無事に終わった。

 あとは明日の朝、王都へ戻るだけ。

 誰もがそう思っていた。

 すると、前から黒色の服をきた人物が歩いてきた。

 

 「…おい」


 護衛の一人が目を細める。


 「ここは立ち入り禁止だぞ」


 そう言った瞬間――。


 バタンッ


 護衛の一人が倒れる。


 「…え?」


 「遅い」


 ザシュッ――


◇◇◇


 「…おい、出てこい」


 ザザッ

 暗闇から複数の人影が飛び出した。


 「騒ぎになる前に、早く済ませるぞ」

 「ヴァレンシュタイン公爵が居るのは――」


 「ヴァレンシュタイン公爵が、なんだって?」


 「……っ」


 ズバァッ


 「ぐ、あああああッ……!」


 一人の腕が斬られる。

 そして暗殺者の前に、一人の少年が立つ。

 体格からして、まだ子供。

 顔は、仮面で隠れている。


 「……何だ、お前は」


 「さあな」


 暗殺者は剣を構え、相手の動きを見る。

 右足が前。

 重心は低い。

 武器は短剣。

 そして、速い。

 さっきの動きからして、かなりの実力者だ。


 「………」


 「………」


 暗殺者が一気に距離を詰める。

 剣が振り下ろされた。


 キィンッ!


 少年の剣がそれを受け止める。


 「な――」


 そのまま弾き返される。


 「ぐっ!」


 暗殺者がよろめく。


 「こいつ……!」


 暗殺者が剣を構え直す。

 だが――。

 もう遅い。


 ズバッ!


 「ぐあっ!」


 少年の剣が暗殺者を貫いた。


 「まずは一人目」


 少年は呟く。


 「……お前は何者だ」


 他の暗殺者が後退する。

 その目には、動揺が浮かんでいた。


 「…何者か」

 「強いていうなら、中ボスかな」


 少年は答えた。


 「……は?」


 その瞬間、少年が踏み込む。

 暗殺者も剣を振る。

 しかし、間に合わない。


 「なっ――」


 少年の剣が、暗殺者を斬り裂く。


 「ぐっ!」


 「二人目」


 暗殺者が距離を取る。

 そして――。


 「ならば、これでどうだ!」


 手を前へ突き出した。

 魔力が集まる。


 「――火球!」


 「遅い」


 暗殺者が魔法を構築する。

 しかし、少年の魔法は――。


 もう、完成していた。


 「――火球」


 放たれた炎が暗殺者の腕に向かう。


 「ぐっ!」


 暗殺者が魔法を中断する。

 その隙に、一気に距離を詰められる。

 そして――。


 「終わりだ」


 剣を暗殺者の首元に突きつける。


 「……くそっ」


 暗殺者が膝をつく。

 少年はそのまま相手の腕を後ろへ回し、拘束した。


◇◇◇


 翌日、俺は父さんと一緒に朝食を取っていた。


 「アルベルト」


 「何?」


 「実はな……」


 父さんが少し難しい顔をする。


 「どうやら昨日、暗殺者がここを狙っていたらしいんだ」


 「……そうなんだ」


 「ああ」

 「幸い、暗殺者は捕まったらしいんだけどな」


 俺は黙って話を聞く。


 「どうやら捕まえた人物が、仮面をつけた少年だったらしいんだ」


 父さんは苦笑する。


 「…不思議なこともあるんだね」


 俺は自然に振る舞う。


 「そうだな」

 「もしかすると、家の守り神様かもな」


 父さんはそう言って笑う。

 俺も笑った。

 守り神。

 言い得て妙だ。


◇◇◇


 「それで、暗殺者たちはどうなったの?」


 俺は父に聞く。


 「やはり気になるか…」


 父さんの表情が少しだけ険しくなる。


 「まあ、お前にも関係がある話だからな」

 「捕らえられた暗殺者が色々と話したらしい」

 「今回の襲撃を指示したのは――」


 「グランディス子爵家だそうだ」


 「……!」


 俺は目を伏せる。

 やっぱり。

 原作と同じだ。


 「目的は何だったの?」


 「…私たちの研究らしい」


 「研究を?」


 「ああ」


 父さんは頷く。


 「術式最適化に関する研究資料を狙っていたらしい」


 その言葉を聞いて、俺は考える。

 やはり、これが原因だ。

 原作でも、ヴァレンシュタイン家が狙われた理由は、父さんたちの研究だった。

 そして、その裏にはラスボスがいる。


 今のところ、原作との違いは――。

 父さんが生きていること。

 研究が奪われていないこと。

 そして。

 俺がいること。


 「……父さん」


 「ん?」


 「大丈夫?」


 「ああ。」


 父さんは安心させるように笑った。


 「心配しなくていい」


 「……うん」


◇◇◇


 朝食を終えた俺は、一人で部屋へ戻った。

 昨日の戦いを思い出す。

 俺が暗殺者相手に使った魔法。

 あれは、父さんの研究である術式最適化を応用したものだ。


 普通の魔法使いなら、術式を一つずつ構築していく。

 けれど俺は違う。

 術式の中にある無駄な工程を省き、発動する。

 その技術のおかげで、火球の発動を早めることができたのだ。


 しかし、まだ完璧ではない。

 術式が複雑化していくにつれ、制御は難しくなる。

 少しでも間違えれば、魔法そのものが崩れる。

 より高みを目指すなら、もっと訓練をしないといけない。


 「…………」


 窓の向こうを見つめる。

 俺は昨日、暗殺者を退けるとこができた。

 ヴァレンシュタイン家を守り、研究も守ることができた。

 ここで終わってくれれば、ハッピーエンドだ。

 俺は、優しい両親と一緒に過ごす「ただのアルベルト」に戻ることができる。


 でも――。

 それで終わるほどこの世界は甘くないことを、俺は知っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。