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攻略対象との顔合わせ

 俺は教室の中を見回しながら、空いている席を探す。


 「アルベルトさん、あっちに座りましょう」


 ルリナが空いている席を指差す。

 俺たちは窓側の席に並んで座った。


 「席、空いてて良かったですね」


 ルリナが笑う。


 「だな」


 ……成り行きでルリナの隣の席に座ってしまった。

 そんなことを考えていると、俺たちの方に赤茶色の髪の男子が歩いてくる。


 「君がアルベルト・ヴァレンシュタイン?」


 「ああ。そうだけど」


 俺がそう言うと、その男子の表情が明るくなる。


 「やっぱりそうか!」

 「俺はアーサー・グレイヴス!」

 「よろしくな!」


 いきなり元気だ。

 原作でも明るい性格だったが、実際に会うと想像以上だった。


 「よろしく、アーサー」


 「入学試験、二位だったんだよな? すごいじゃん!」


 「……まあ、たまたまだよ」


 「たまたまで二位は取れないだろ」


 アーサーは楽しそうに笑った。


 「俺は三位だったからさ。次は負けないように頑張らないとな!」


 そう言って、アーサーは親指を立てる。


 ……アーサーは魔法の天才。

 幼少期から才能を持ち、自身の魔法に絶対的な自信を持っている。

 なので、ユリウス以外で自分より上の順位の人物が現れた時の反応が少し未知数だったが…この分だと心配しなくて良さそうだ。


 確かに入学試験の順位は、筆記と実技を合わせた総合順位。

 だからこそ、今のアーサーにとって私は、魔法の実力を測る相手ではなく、単純に順位で一つ上にいる相手なのだろう。


 「ああ。よろしくなアーサー」


 「うん!よろしく」


 「思ったより仲が良さそうだな」


 後ろから、落ち着いた声が聞こえた。

 振り向くと、ユリウスがこちらを見ていた。


 「久しぶりだな、アルベルト」

 「結果発表以来だな」


 ユリウスは、穏やかに微笑んだ。

 相変わらず、隙がない。

 立ち振る舞いも、言葉遣いも、表情も。

 これが原作で完璧王子と呼ばれていた男か。


 「改めてよろしく、アルベルト」


 「はい」


 俺はユリウスと握手する。


 「次は俺だな」


 少し離れた席から、眼鏡をかけた男子がこちらへ顔を向けた。

 机の上には、すでに何冊もの本が積まれている。


 「ウィリアム・エヴァレット。よろしく」


 「アルベルト・ヴァレンシュタインだ」

 「よろしくな」


 「ヴァレンシュタイン……」


 ウィリアムは、私の名前を聞くと少しだけ目を細めた。

 ウィリアム・エヴァレット。

 彼は研究者の家系の生まれで、自身も魔法の研究をしている人物だ。


 「君の家では、魔法術式に関する研究をしているんだよね?」


 「まあ、そうだけど」


 「研究内容は?」


 「……それは、家の機密だから」


 「そう」


 そう言うとウィリアムは、あっさりと引き下がった。


 「…いつか、詳しく聞かせてほしい」


 「機会があればね」


 「分かった」


 それだけ言うと、ウィリアムはすぐに本へ視線を戻した。

 短い会話だった。

 そして、どうやら彼は私そのものよりも、私の家の研究の方に興味があるらしい。


 「最後は俺か」


 低い声がした。

 長髪の男子が、こちらを見ていた。

 表情はほとんど変わらない。


 「クライヴ・レインハルトだ」


 「アルベルト・ヴァレンシュタインだ」


 「ああ」


 それだけだった。

 クライヴは自分の席に戻る。

 原作でも口数が少ないキャラだったが……。

 ……本当に短いな。

 まあ、無理に話しかける必要もないか。


 俺は席に座り直し、教室全体を見渡した。

 原作の主要人物が、同じ教室に集まっている。

 この中には、将来王国を救う者もいれば、国の中枢を担う者もいる。

 俺の役割は、色々と変えてしまった原作をパッピーエンドに導くことだ。

 ……まあ、今すぐ何かをする必要はないけど。

 そんなことを考えていると、教室の扉が開いた。


 「席につけ」


 入ってきたのは少し気だるげで、やる気のなさそうな先生だった。

 年齢は二十代後半ほど。

 ……ヒューゴ・ライト

 原作で隠しルートもある人気キャラクターだ


 「俺はこのクラスの担任を務める、ヒューゴ・ライトだ。担当は魔法理論。これから一年間、君たちを指導する」

 「まずは簡単に、この学園について説明しておく」


 ヒューゴ先生は黒板に文字を書き始めた。


 王立魔法学園。

 魔法を学ぶための教育機関であり、同時に王国を支える人材を育てる場所。

 この学校には研究者、宮廷官僚、騎士さらには王族や貴族の後継者まで、さまざまな立場の人間が在籍している。


 「この学園では、魔法の才能だけで評価されるわけじゃない。知識、判断力、そして他者との協調性。すべてが重要になる」

 「分かったか?」


 「はい!」


 「良い返事だ」

 「では一限目は、魔法理論の基礎確認を行う。入学試験で出した内容が中心だ」


 教室のあちこちから、小さな声が上がった。


 「基礎確認か……」


 「簡単そうだな」


 「油断するなよ」


 ヒューゴ先生が手を叩く。


 「じゃあ始めるぞー」


 そして、一限目が始まった。

 ヒューゴさんが黒板に問題を書き、生徒を指名する。


 「じゃあこの問題を…アーサー答えてみろ」


 「はい!分かりません!」


 そんなふうに授業が進んでいき…。


 「…じゃあ次は少し難しい問題にするか」


 そう言った先生が書いているのは、魔力の属性と術式の魔力必要量についてだ。

 あれ、入試のやつじゃん……。

 過去問になくて戸惑ったやつだ。


「では、この問題を……」


 ヒューゴ先生が教室を見渡す。


「アルベルト、答えてみろ」


 ……俺か。


 「魔法属性と術式の魔力必要量については魔力の変換の難易度と関係しています」

 「まず無属性。これは魔力の性質変換がいらないので、必要な魔力の量が一番少ないです」

 「次に火、水、風、土、雷の五属性」

 「これらは変換が必要なので、無属性よりも多くの魔力を必要とします」

 「最後に、光魔法などの特殊属性です。魔力の変換が複雑なため、必要な魔力量も多くなります」


 「正解だ」


 教室のあちこちから、視線が集まる。


 「さすがだな」


 「ありがとうございます」


 俺はそう言って席に座った。

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