軍師キャスのプラン
「何か思いついたのか?」
「まだだけど、パーシバルは、女が来たくなるような街にするって言って、ロックに選ばれたんだろ。それならそれが多分芯になる。で、まずは現地を見ないことには始まらない」
「はあー、凄いな」とガスパールが感心した。
「何か、できそうな気がしてきた。いつ来る? 一緒に来るか?」
すぐにでも、キャスを連れて行きたそうなガスパールをシリーが止めた。
「待て。準備もあるし、三日後だな。ガスパールは先に戻って、パーシバルに伝えてくれ。それよりデルタウンの事を教えてくれよ」
それから夜更けまで、デルタウンの情報を聞き取った。
首都からの入り口部分に広大な森があって、行き来にはそれがネックになる。
道も悪いし、休憩場所もない。
「それじゃあ女はいかないよ。行くとしたら、何かから逃げたい女くらいじゃないか?」
ガスパールがグッと喉を詰まらせた。
思い当たることがありそうだ。
「まずは道路整備だな。それには時間がかかる。だけどやらなくちゃならないことが、一つ分かった。それだけでも凄いよ」
キャスは感謝の眼差しを向けるガスパールに、微笑み返した。
ガスパールが顔を赤くして上ずったような表状になる。シリーはニヤニヤしながら、二人を見ている。
「その作業に人を当てれば、仕事になる。収入になれば生活も落ち着くし、組織も出来ていく。報酬を払うことが出来ればだけどね。どう?」
ガスパールが考え込んだ。
「金になるってのは、何かを売って対価をもらうってことだろ? 売れるものなんかあるかな?」
「まずは血気盛んな男が山ほどいるのだから、傭兵、警備兵、用心棒などの人材派遣はできるな」
「確かに、それだけは豊富にある!」と声を上げて、ガスパールが手を組んだ。
「何かそこでしか取れないものや、売るほどあるような品はないか?」
しばらく考え込んだガスパールが、ガバっと顔を上げた。
「ある」
そのままためている。何を思いついたのだろう。キャスは息を詰めて、答えを待った。
「キノコだ」
「犯罪系じゃないだろうね」
「食い物の方だよ。森に山ほど生えてるんだ」
キャスは考え込んだ。元々のイメージが悪いだけに……
「キノコで、おしゃれっぽい女ウケしそうな物、何かない?」
「キノコが美味いんだよな。俺の得意料理、キノコとホウレンソウのキッシュなんかどうだ。キノコが美味いから最高だよ」
それはいける。
女受けする。
「キノコ料理の店か。きのこのグラタンやスープなんかも良さそうだね。ところで洒落た店はあるの?」
「酒場が中心で、女受けするような小綺麗なのはない。全然、無理」
無ければ、今から作ればいい。
「いけるんじゃないか? 仕事があれば懐に余裕が生まれる。女も来る。だからちょっと格好つける必要も出来てくる。なあ、どうだ?」
「それだったら俺は店をやろうかな。美味いキッシュで評判になるかも」
シリーが茶化した。
「マシュルームキッシュといえば、デルタウンのガスパールの店ってか?」
笑っておいて、急に真顔になった。
「問題は軍資金だな」
眉を寄せるシリーにキャスは笑って言った。
「誓約書に署名するのと引き換えに、金を借りることはできるさ。国からの援助金も出るだろう。人手も借りられるかもしれないね」
ガスパールはビールを三杯お替わりして、上機嫌で帰っていった。
次の日キャスはおばちゃんを呼び出した。
おばちゃんに考えを話すと賛成してくれて、手伝ってくれるという。
「おばちゃんは俺を手伝えないのでしょ」
「国を富ませる手伝いだから大丈夫」
よくわからない誓約だ。
金の工面に関しては、王に問い合わせたほうがいいと言われ、キャスは手紙を書いた。
内容は、「デルタウンを変えるためには、ある程度の資金が必要だ。誓約書にサインをしたら国からの資金援助と、借用金を出してもらえるだろうか」というものだ。
金のことを確認しないと、向こうで話が決まっても、動くに動けない。
まずは金だ。
おばちゃんが「持って行ってあげる」と言って姿を消した。
それからものの1時間もしないうちに、王の承諾の手紙を手に戻ってきた。
「王は驚いていたわよ。これは見どころがある、頼もしいってさ」
褒められた。
王子に褒められたときと違い、素直に嬉しかった。
キャスはもしかしたら、これは出世の糸口かもしれないと、本気で思い始めていた。
上手くこれを片付けたら、晴れて王宮に任官、安泰の人生まっしぐら。
俄然、やる気が出てきた。
そして、かわいい彼女を作るんだ。
何せ今まで、女の子より可愛いと言われて、女の子に敬遠されてきた。
横に並ぶと、男性の目が皆キャスの方に集まってしまう。そんなリスクを冒したい女はいないと、キンバリーに言われたことがある。
でも、後少し、後ほんの少ししたら、キャスは男っぽくなり、カッコよくなるのだ。
そうしたら、今の不都合な色々は全て無くなる。
バラ色の未来を夢見て、キャスは旅行の準備に精を出した。




