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7話 お人好しと農地改革

ガオト様が不敵に笑う。


「そういえばまだ名前を聞いていなかったな。

 名乗ることを許してやろう。」


俺の名前──氏名なら林同リンドウ 偉臣タケオミだが、

この場は氏か名だけで良いだろう。


「リンドウでございます。」


「ふむ、リンドウか。覚えたぞ。

 それでリンドウよ、次は何を見せてくれる?」


「はい。では次に、耕作地に案内してもらえますか?」


カイが「ついて来い」と歩き出す。

足取りが先程より軽快で、楽しみにしている様子が感じ取れた。


振り返ると、ガオト様がライに抱きかかえられて着いてくる。

配下に命令を出して威容堂々のつもりなのだろうが、微笑ましかった。


畑に着くと、俺はまず日当たりの悪さを何とかすることにした。

イメージするのは、高性能な高演色LEDのようなもの。

昼の間だけ自動点灯する仕組み。


人工太陽灯ソーラー・シミュレーター!」


そう唱えると、球体の発光体が中空に浮かび、

田畑を照らし始めた。


ガオト様が呟く。


「まさか……太陽を作ったのか?」


「植物が育つのに必要な光を放つ灯りです。

 これで魔界の日照の悪さをカバーします。」


そして──

俺は立て続けに詠唱する。


土壌改良ソイル・コンディショニング!」

品種改良ブリーディング!」

水質改善ウォーター・ピュリフィケーション!」


そして緑の手(神聖)で地面越しに、

全ての作物を実らせた。


「今回と同じとまではいかないでしょうが、

 来年以降も今までとは比べ物にならない収穫が見込めると思います。」


俺が毎回、緑の手(神聖)で育てる事は出来ない。

魚を与えるのは最初だけ。

以降は“釣れる環境”を整えて、

自分達で釣ってもらわなければならない。

3人がそれぞれに驚嘆の声を発する。


「夢でも見ているのか……」


「何ですか……ガオト様、これは」


「私にもわからん……まさかこれ程とはな」


ガオト様がライから降りて、俺に近づく。


「リンドウよ、礼を言うぞ。

 これでこの村の連中が飢える心配はなくなった。」


俺は首を振る。


「いえ、まだ終わっていません。」


「何を言う。もうこれ以上できる事はないだろう?」


「ガオト様の治める土地は、この村だけではないですよね?

 他の村も同様にしなくてはなりません。」


「馬鹿かお前は……一体どれほどの国土と村があると思っている。

 1件ずつ回ったとしても何年かかるか。」


俺は微笑んで胸を張り、安心させる。


「1件ずつ回るつもりはありません。

 それでは──やりますね。」


次の詠唱はこれだ。


階層移動チェンジ・ディレクトリ!」


頭の中で、現在の座標から1つ上の階層に移動。

俯瞰して、全体を見るイメージをする。


「ガオト様の治める国土面積は……20万km²程なのですね。」


詠唱を続ける。


一覧リスト!」


脳内で全ての村が一覧表示される。

俺は全ての村に対して、一括で田畑を複製する事にした。


複製コピー!」


ガオト様が青ざめる。


「何だ、お前一体何をしている……?

 ぐっ……!」


突然、苦しそうに頭を押さえて座り込む。

カイとライが武器を構える。


「リンドウ、ガオト様に何をしやがった!」


「馬鹿もの! 騒ぐな!

 配下のものたちが一斉に騒ぎ始めたので、混線しただけだ。」


「各村から“見た事のない光が灯った”と思った瞬間、

 田畑が突然育ちはじめ、実りを成したとな。

 リンドウ……まさか全ての村に、この一瞬で同じことをしたというのか?」


「はい。少し不安でしたが、

 上手くいったようでよかったです。」


「次は──」


俺は続きを言おうとした瞬間、鼻血が出て、

そのまま意識を手放した。

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