47話 お人好しと吸血鬼の解明
俺は突然、目の前に現れたストリクスに話しかける。
「ストちゃん……何の用でしょうか?」
ストリクスに睨まれる。
「私をストちゃんと呼ぶのは止めろ。
次にそう呼んだら、話は終わりだ。」
俺は頭を下げる。
「すみません……つい。
それで、お話とは一体何でしょうか?」
ストリクスが城の方角に視線を向けた。
「貴様らが姉上から聞き出した吸血鬼の特性。
その事をもっと深く考えてみるがいい。
私からのヒントだ。
気付くことが出来たら──
改めて交渉のテーブルに着く事もできるでしょう。」
俺は去ろうとするストリクスを呼び止めた。
「すみません、ひとつ教えて頂きたいのですが……
吸血鬼とは、どのように生まれるのでしょう?」
ストリクスが鼻を鳴らす。
「ふん……まあいい、教えてあげましょう。
ひとつは、私がお前を噛もうとしたように、
吸血鬼に噛まれて、かつ血を分けられた時だ。
噛まれた直後の吸血鬼の階級は、
噛んだ吸血鬼の階級と、分けられた血の量で決まる。
大体は下級吸血鬼になることが多い。
それ以外は……吸血鬼同士、または吸血鬼と人間の交配で
生まれた子供がそうなる。」
俺は質問を続ける。
「階級はどうやって上がるのでしょう?」
「魔力を吸い集める事で、やがて格が上がる。
下級から上級、上級から貴族級……といった風に。
唯一例外はあるが……それを貴様に教えるつもりはない。」
俺はお辞儀をした。
「いえ、十分です。
ストリクス様、勉強になりました。」
お礼を聞き終わる前に、ストリクスは消えていった。
◇
俺たちは一度、コウロウの宮殿に戻ることにした。
カリンは帰ってそうそう眠りについた。
きっと疲れたのだろう。
俺がベッドで横になり、考えをまとめていると、
ガオトが近くに腰かけた。
「まだ考えているのか?
それほど酷い状況ではなかったのだろう?」
俺はガオトの手を握る。
「そうだね。血を吸ったら処分、なんて事もないし、
衣食住は保証されている。
高齢になったら戻されると言っても……
それもまだ何十年も先の話だろう。」
ガオトが俺の頭を撫でる。
「同族が牙を折られ、ただ生きる事を良しとした。
家畜のように扱われる事にやるせない感情を抱くのは、
理解できるがな。」
俺はガオトを抱きしめる。
「ありがとう。そうだね……。
ただ、人間たちもそうなんだけど……
吸血鬼たちも何か問題を抱えていそうなのがね……。」
でなければ、ストリクスがあんな風に
帰る前に呼び止めたりしないはずだ。
「吸血鬼と、食料となっている人間たち。
その問題を解決するには……
ストリクスのヒントを解明するしかなさそうだ。」
エルシャの発言も、もう一度思い出してみよう。
こういう時は相手の立場になって考える必要がある。
俺が思考に没頭していると、ガオトに指で額を弾かれた。
「自分の女を目の前にして、他所の女の事を考えるとはな……」
俺は狼狽える。
「えぇ なんで!?」
わかったのかと言いそうになると
もう一度額を弾かれた。
「やはりか、この馬鹿が……。
タケオミ、お前は表情に出し過ぎだ。」
ガオトが俺の胸に体重を預けてくる。
「ところで、吸血鬼領から戻ったら式を挙げるという話だったが……?」
俺は頬を指で掻いた。
「ごめん……問題が解決……
いや、せめて糸口が見えてからでいいかな?」
ガオトが深く溜息をついた。
「はぁ……そんな事だろうと思っていた。
まぁ良い、気が済むまでやるがいいだろう。
ただし、糸口などと半端は許さん。
己が信条に従い成し遂げてみろ。」
「あぁ……ありがとう。」
俺は未来の自分が解決することを信じて、
ガオトと二人で眠りについた。




