表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/56

37話 お人好しと婚約指輪

吸血鬼領に出立する前、

俺はガオト、メティス、カリンに贈り物をする事にした。

その贈り物にちなんで──というわけでもないが、

心の中でも皆に敬称をつけるのをやめることにした。


「ガオト、ちょっといいかな?」


ガオトはベッドの上で櫛を使い、尻尾を梳いていた。


「何だ? 吸血鬼領に一人で行くという話なら却下だ。

 本当ならカリンではなく私が着いていきたいくらいだ。」


「いや、そうじゃない。

 ちょっと、こっちに来て立ってくれないか?」


ガオトが訝しげにベッドから降りて近づいてくる。

俺はガオトの前で片足を立てて跪き、手を取った。


「遅くなったけど、これを愛する君に。」


ガオトの左手の薬指に指輪をはめる。

ガオトは不思議そうに指を見つめた。


「何だ……? これは?」


俺は前の世界の婚約指輪と結婚指輪、

そして結婚式について説明した。


「なるほどな。愛を誓う儀式か。

 この指輪はどうした?」


俺は苦笑しながら答える。


「ドゾムさんに教えてもらって、

 俺の魔力を通したミスリルで作ったんだ。

 万能魔術で作ったわけじゃないから形が歪で申し訳ない……。

 といっても、石については魔術なんだけど。」


ガオトがニヤニヤしながら手をかざす。


「ふむ、赤い石か。」


俺は宝石について説明する。


「俺の世界の“ルビー”って宝石で、

 宝石ごとに象徴する言葉が決められていたりするんだ。

 その石は──情熱、純愛、不滅の愛、勇気、威厳。

 どれもガオトにぴったりだろう?」


ガオトが無言になったと思った瞬間──

ドサッ。

俺はベッドに押し倒されていた。


「タケオミ……式はいつするのだ?」


俺は少し考えてから答える。


「そうだね……吸血鬼領から帰ってきてからでどうかな……?」


ガオトが小さく呟く。


「人数が増えてなければいいがな……。」


俺は聞き返した。


「えっと、何か言った?」


ガオトは軽く笑い、俺を見下ろす。


「何でもない。

 さて──今夜は寝かさん。

 覚悟しておけ。」


そう言って、夜が更けていった。


◇翌週


俺はミリル王城の寝所にて、メティスに指輪を送った。


メティスが目を輝かせる。


「タケオミ様の魔力に包まれたミスリルの指輪を着けていると、

 全身が包まれているかのようです!

 この石はなんと言うのですか?」


俺は頭を掻きながら答える。


「俺の居た世界で“サファイヤ”って石だよ。

 石言葉は──慈愛、誠実、徳望だったかな。

 何となく……メティスは青い石が似合うと思って。」


メティスに優しく抱きしめられる。


「ありがとうございます!

 それで、式はいつ行うのでしょうか?」


俺は同じように答える。


「吸血鬼領から帰ってきてからって思っているよ。」


メティスが下を向いて呟く。


「人数が増えてなければいいですけど……。」


俺は聞き返した。


「えっと、何か言った?」


「何でもありません!

 さあ、今宵は私とゆっくり過ごしましょう!」


◇翌週


コウロウの小宮殿で、カリンに指輪を渡した。


「ありがとうございます。ダイアモンドですね。」


俺は頷いた。


「あぁ。前の世界から続いた縁に、

 石言葉の“永遠の絆”が良いかなって。」


カリンが右手で指輪をそっと触る。


「それで、結婚式は吸血鬼領から帰ってからですか?」


俺はカリンの肩に手を置いた。


「あぁ。ウェディングドレスも服飾工房の皆に頼んであるからね。

 帰ってくる頃には出来てるんじゃないかな?」


カリンが溜息をつく。


「手際が良すぎません?

 タケオミさんが前の世界で主任止まりだったのって、

 お人好しの性格が邪魔していただけでしょうね。

 それにしても……」


カリンが不安そうな顔をする。


「吸血鬼領から帰ったら結婚式を挙げよう……だなんて、

 絶対これ、何かのフラグが立ちましたよね?」


俺は苦笑いする。


「そんな……漫画じゃあるまいし……

 大丈夫……だろう……?」


カリンが唇に指を当てて噴き出す。


「ふふっ、どうでしょうね?

 さて、明かりを消しますね。」


こうして俺は、吸血鬼領に向かう前の“盛大なフラグ”として

三人に婚約指輪を渡した。

いや、きっと何事もないさ──

そう言い聞かせながらも、どこか不安を感じていたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ