35話 お人好しと第三夫人
瀬田さんが静かに続ける。
「経緯を教えていただけますか……?」
「あぁ……うん。」
俺はガオト様とメティス様との馴れ初めを説明した。
「何だかなぁ……ですね。
正直、ちょっと引いたというか、冷めたというか。」
「そうだね。そう思って当然だよ。」
「いえ、冷めたのは“優しいお父さんになりそう”って部分がですね。
お人好しとはいえ、ちょっと流されすぎじゃありませんか?」
「それについては弁解の余地がない。
ただ、2人に対していい加減な気持ちではないから。」
「でしょうね。でも、ちょっと悔しいなぁ……。
私の方が先に林同主任の良さに気付いていたのに……。」
瀬田さんが溜息をつく。
「はぁ……でも、そうですね。
私もそちらに呼んでもらえるんですよね?」
「いいのかい……?」
「はい。ちゃんとお世話してくださいね。
あ……でもどうしよう。
林同主任って不老不死なんですよね?
あと、危険な世界だと私なんてすぐ……」
「その事については考えがあるから。
私を信じてくれるなら心配しなくて良い。」
「わかりました……。ちょっと待って下さい。
今、お風呂上がりなので準備します。」
──そして数時間後。
異世界召喚(自発)を行うと10,000ポイントを消費し、
残りは179,998ポイントになった。
瀬田さんはスーツ姿でトランクケースを抱えて現れた。
「お久しぶりです……林同主任……。
えええっ、若い……。若返ったとは聞いていましたけど、
私が27歳だから……7歳くらい下?!
13歳上だった主任が7歳下……。」
瀬田さんが自分の顔を両手で押さえ、涙目になる。
「いやぁ……瀬田さんは綺麗ですよ……?
ところで、なんでスーツにトランク……?」
「若返って肌が綺麗な青年になった主任には
この気持ちはわかりませんよ!
はぁ……。
だってこれから魔王様2人に会うんですよね……?
すぐに出せる正装がこれくらいしかなくて……。
トランクには着替えとかお化粧とか香水とか、
詰めるだけ詰めてきてます。」
「そっか……うん。
それで、瀬田さんにこの世界で私と共に生きるために、
カタログからこの“3つ”を贈ろうと思うんだけど……。」
瀬田さんが3つ”の内容を確認する。
「なるほど……覚悟できました。
お願いします。」
39,998ポイントを使い、瀬田さん贈った3つ。
1つ目は **鉄壁**。
悪意ある攻撃から身を守るため。
2つ目 **若返り**。
気にしているようなので、年齢を20歳前後まで戻した。
3つ目は **加齢制御**。
不老にしなかったのは、
“どう生きてどう終わるか”は瀬田さん自身に選んでもらうためだ。
瀬田さんがポケットからコンパクトミラーを取り出して顔を覗き込んだ。
「うわぁ……本当に若返ってる!」
「私には変わったように見えないんだけど……」
瀬田さんに睨まれる。
「何言ってるんですか! 全然違いますよ!
あー……気になってたシミが消えてるー!」
俺ははしゃぐ瀬田さんをよそに、万能魔術を唱えた。
「魔術申請承認!」
これは瀬田さんが使いたい魔法をイメージすると
俺に“申請”が飛んでくる仕組みだ。
俺が承認すると決済され、瀬田さんが魔法を使えるようになる。
神聖魔法ならぬ、申請魔法だ。
瀬田さんが苦笑する。
「何ですか……それ。」
「瀬田さんと会話していたら、稟議や経費、有給の申請を
承認していたのを思い出してね。」
「なるほど……それなら、昔憧れていたことを……」
「箒飛行申請!」
俺の脳内に申請が飛んできたので承認する。
すると瀬田さんが箒に跨り、ふわりと宙に浮いた。
「うわ! すごい!
一気に異世界に来たって実感しました!」
「はは……それはよかったよ。
それじゃあ行こうか、瀬田さん。」
地上に降りてきた瀬田さんに手を差し出すと、
強く握り返してくれた。
「林同主任……私の名前は瀬田花凛です……。
これからはカリンと呼んで下さい。
私もタケオミさんって呼ぶので。」
俺は頷きながら返事をする。
「あぁ……わかったよ、カリン。
これからよろしく頼む。」
「はい、タケオミさん。
末永くよろしくお願いします。」
こうして、この異世界に瀬田さん……カリンが訪れ、
俺の第三夫人となった。




