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3話 お人好しとご褒美の結果

私はその日、耳を疑った。

林同主任が突然退職したからだ。


「えー、かねてより周知してあった通り、

 昨日付けで林同主任が家庭の事情で退職されました。

 なお、引継資料の作成や取引先との調整は

 林同主任が事前にきっちりと済ませてくれているので、

 業務に支障はございません。」


かねてよりで昨日付けで辞める……?

そんな馬鹿なことがあるわけがない。

でも周りは一切気にしていない。

違和感を抱いているのは私だけみたいだ。


斜め前の席で、いつもそこにあった

お人好しの笑顔がない事に、

私の胸は少しざわついていた。


林同主任がいなくなっても、

何事もなく業務は回った──のはほんの数日だった。


山田課長が声を張り上げている。


「おい、佐藤よ、てめぇ……

 何度言ったらわかるんだ!

 見積の金額間違ってるんだよ!

 それにまたメールの添付資料間違えやがったな。

 A社向けの資料をB社に送ってんじゃねぇよ!

 何、泣いてんだ。助けて、ママーってか!」


「うるせーよ! お前の渡してきた資料が間違ってたんだよ!

 しかも終わる前からぽんぽん新しい仕事押し付けやがって、

 集中できねーんだ、ミスも増えるわ!

 ママとか今時許されねーからな! 覚悟しとけよ!」


しばらくすると、佐藤君は精神的に追い詰められて退職。

山田課長はパワハラで戒告処分となり、左遷された。


林同主任がいなくなり、緩衝材の役割が消えたことが

原因なのは誰の目から見ても明らかだった。


「林同主任……今頃どうしているんだろ。

 連絡先……交換しておけばよかったかな。」



森の中に転移した私は、自分の状況を確認した。


「スーツだったのが黒いローブに変わっている……

 それに、腰の袋には金貨と銀貨と銅貨が大量に入っていた。

 この世界の貨幣だろうか。」


池の水を鏡代わりに見てみると、

見た目が18歳〜20歳に若返っている。

それに、心なしか歯並びが綺麗になって肌も綺麗になっていると感じた。

随分とサービスしてくれたらしい。


次に身体強化を試してみると、

それだけで走行速度や跳躍力が凄い事になった。


「オリンピック選手を超えているんじゃないか……」


万能魔術は、頭の中に使いたい魔法を思い浮かべると

そのまま発動できそうだった。


とりあえず定番のファイヤボール……じゃなくて、

森の中なので火事にならない様にウォーターボールを出してみた。


それにしても……

「万能魔術で出来る事と出来ないことの差は何だろうか……」


試しに不老不死を思い浮かべてみたが、上手くいかなさそうだった。

私が何となくでもイメージ出来る事と出来ない事の差だろうか。


「元の世界の経験や知見が関係していそうですね。」


一旦、そう結論付けた。


怪力は意識すると、岩石を片手で持ち上げることが出来た。


「この力があれば、前の世界では苦労した急病人を運ぶことも

 容易にこなせそうだ。力加減に注意しないとだが……」


鉄壁は多分、打たれ強いと思っているけど、

今は試せそうにない。


緑の手(神聖)は、その辺の草木に触れながら念じると、

動画の何倍速みたいな速さで成長した。


「不作で困ってる人がいたら力になれそうだな……」


ん? どうも年齢に引っ張られて口調も若返っている気がする。

まあいいか……それも自然な事なのだろう。


私──いや、俺は神様からもらったギフトの検証を終えると、

万能魔術で人里を探すことにして、適当に術を作ってみる。


座標(ロケーション)!」


すると目の前に、駅にあるような案内板の地図が現れた。


「えっと、現在地がここで……北西に抜ければ村がありそうだ。」


俺は村に向かって歩き始めた。

【過去作・他連載のお知らせ】


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『中華風異世界で目覚めたら、自作一族の少年だった』

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