2話 お人好しと静かな異世界転移
私はかける言葉を選んでいた。
大丈夫ですか?──それだと傷つけるかもしれない。
近くに保護者は……見当たらないな。
しょうがない、ここは……
「ありがとうございます。ご褒美ですか?
何が貰えるんでしょう?
あっ、出来れば喫茶店でお話を伺っても?」
人目につく所に行けば、彼女を探している人が見つけるかもしれない。
すると、彼女の肩が震えはじめた。
刺激してしまっただろうか?
「ぷっ、くくく……
まさかそのような扱いを受けるとはな。
まぁ、しかし無理もないか。
よかろう、喫茶店じゃな?」
そう言うと、彼女が指をパチンと鳴らした。
その瞬間、見た事もない喫茶店の店内で、
私は彼女と向かい合って座っていた。
目の前にはコーヒーが置かれている。
「これで理解したかの。
儂は神様でな、お主に褒美を与えに来たのじゃ。」
私はようやく、目の前の人物が人智を超えた存在だと理解し、
おうむ返しで質問をした。
「褒美……ですか?」
彼女がストローで甘そうなフロートを啜る。
「うむ。お主の善行ポイントが99999を超えたからな。
人類では初めてじゃ。何せ、感情の置き所以外に
自身にメリットがない事を理解しつつ、
それでも行った場合のみ加算されるからのう。」
「いえ、そんな……
報われたくてしてきたわけではないので、
褒美なんて結構です。」
「そう言うと思っておった。
だからお主は、こう言えば貰ってくれるじゃろう?
受け取ってくれねば儂が困る。」
逡巡した後、私は答えた。
「わかりました……
ではありがたく頂戴いたします。
どのような褒美になるのでしょう。」
「99999で好きなギフトを選べばよい。
カタログギフトの神様バージョンじゃな。」
そう言って、彼女がカタログを渡してきた。
私は一通り見終わった後、以下を選んだ。
身体強化、不老不死、万能魔術、怪力、鉄壁、緑の手(神聖)。
そして最後に──
「これを……お願いできますか?」
「ほほう、意外じゃな。
異世界転移とは。何故選んだか聞いても良いかの?」
「そうですね。現代じゃ、
私の出来る善いことには限りがあるので……
この能力をいただいて違う世界にいけば、
もっと善い行いができるかもしれないと……」
「なるほどのう……
芯からお人好しじゃなぁ。
あい、わかった。
ならばお主の望みが叶うような異世界に転移させてやろう。
後はそうじゃな、若返りをサービスでつけてやる。」
そう言って、彼女がカタログを渡してきた。
「もう、ご褒美はいただきましたよ?」
「まだポイントを使い切っておらんし、
どうせお主の事じゃ、行った先でも善行を積むじゃろうよ。
ポイントが溜まったらまた使えばよい。」
「至れり尽くせりですね。
本当にありがとうございます。」
私はある事に気付く。
「あっ……突然いなくなったら、
会社とかいろいろと迷惑が……」
「ついでにサービスじゃ。
その辺は最大限、影響がないように手配してやる。
気兼ねなく、行くが良かろう。」
そう聞いて、私は胸を撫でおろした。
「それでは、突然の事でしたが……
お言葉に甘えようかと思います。」
「うむ、達者でな。
また縁があれば会う事もあろうよ。」
そう言って、彼女がまた指を鳴らした。
次の瞬間、見た事もない森の中に居た。
こうして私は、静かに異世界転移したのだった。
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