1話 お人好しと神様の出会い
後輩の佐藤が、顔面蒼白で相談してきた。
「林同主任、すみません……
顧客から受注した案件でやらかしました。」
またか──。
胃の痛みを堪えながら、私は佐藤の肩に手を置いた。
「わかった。先方と課長には私から謝っておく。
気にするなとは言わないが、悩み過ぎない様に。
次から気を付けてくれ。」
「はい、ありがとうございます!」
私はその後、顧客に菓子折りを持参して謝罪しに行き、
課長には頭を下げて平謝りした。
課長の山田が、顔を真っ赤にして人格否定をしてくる。
「またか! 一体どうなってる。
こんな簡単な仕事が何でできない?!
給料泥棒が! そんなんだからまだ結婚できねーんだよ!」
「すみません、私の監督不行き届きです。
佐藤は悪くありません。
私のチェックが甘かったことが原因です。」
上司の怒りが静まるまで謝った後、
コーヒーを飲んでいると、事務の瀬田さんが話しかけてきた。
「ねぇ……また林同さん、佐藤君を庇ったの?
これで何度目?」
「あぁ……まだ若いからね。
将来有望な若者を育てるのは、
40のおじさん社員の役目だから仕方ないよ。」
「……私、聞いちゃったんだけど。
居酒屋で佐藤君と山田課長が、林同さんを笑いものにしていたの。」
「林同先輩の指示っていつも分かり辛いんですよ!
俺だってちゃんと言われてれば、あんなミスしなかったんですよ!」
「あぁ、あいつは何考えてるかわからねーからなぁ!
まぁ、そのうちお前が出世して追い抜くだろうから我慢しとけ!」
「……あんな子、林同さんが庇う価値ないですよ?」
「私をネタに二人が仲良くできるならいいさ。
部内がギスギスしないなら安いもんさ。
でも、ありがとう。
瀬田さんがそう言ってくれたのは嬉しいです。」
「ほんと……お人好しですね。」
「それじゃ、今日は上がります。
お疲れさまでした。」
その帰り、財布の小銭を青十字に募金して、
電車でご高齢の方に席を譲った。
「いいんですか? 優先座席でもないのに。」
「本来、座席っていうのは全てが優先座席だと思っていますから。
見た所、足が不自由そうなので。
余計なお世話かもしれませんが、座って下さい。」
「ありがとうございます。助かります……」
私は昔から人の為になることが好きだった。
だから、道端に落ちてるゴミは拾うし、
落とし物なんかも拾えば必ず交番や駅員に届けた。
痴漢を捕まえた事もある。
「親からはもっと要領よく生きろと言われていたが、
こればかりは性分だ。
誰かが見てる?お天道様が見てる?、
そうじゃない、私が私を見ているんだ
──そう思って生きてきた。」
そして何回目かわからない人助けをした帰り道、
突然、妙な所に迷い込んだ。
こんな道、あったかなぁ……?
突き当りの道を曲がったら、
目の前に18~22歳くらいの女性がうずくまっていた。
私は迷わず声をかけた。
「君、大丈夫?
もしかして迷ったのかい?」
女性は立ち上がり、笑い始めた。
「はははっ。自分自身が迷って困っているはずなのに、
人を助けようとするその精神。まったくもって見事じゃ。」
女性が私の顔をまっすぐに見つめる。
「お主に褒美を与えに来た。」
私は突然の事に、ただ驚き、
人間離れして整った顔立ちの女性を見つめていた。
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