24話 お人好しと救命治療
ドゾムさんがゴーレムの身体を揺すろうとしたので、
俺は慌てて叫ぶ。
「触らないでください! 余計に崩れるかもしれません!」
急ぎつつも、振動を与えないよう慎重に近づく。
「ドゾムさん、これは……生きているのでしょうか……?」
ドゾムさんが青ざめた顔で力なく呟く。
「わからん……儂もゴーレムの……死体なぞ見たことがない。
……核まで貫かれておる……。」
俺は人間でいう心臓のあたりに目を向ける。
剣が背中まで貫通していた。
「元々、呼吸をしていないから肩の動きなどで判断もできませんが……
やるだけ、やってみます……!」
ドゾムさんが手を合わせて拝む。
「頼む……レティアを助けてやってくれ……!」
レティアさん──それがゴーレムの名前か。
「レティアさん……失敗したらすみません……。」
俺は万能魔術で、ゴーレムに効果がありそうな
“治療”ではなく“技術”をイメージする。
「生物の治療……じゃない。一か八か……。」
建築現場で専門の職人が行う技術を思い出す。
「金属修復!」
レティアさんの身体のひび割れが、
逆再生のように塞がっていく。
最後に、胸に刺さった剣が押し戻されて床に落ちた。
見た目は綺麗になった。
だが──どうだろうか。
俺はドゾムさんと息を飲んで見守った。
三十分ほど経ったが、動き出す様子はない。
ドゾムさんがレティアさんの両手を包み込み、涙を落とす。
「誰じゃ……誰がこんなひどいことを……」
その時──レティアさんの目が開いた。
ドゾムさんが歓喜に震えながら叫ぶ。
「レティア! レティア……!」
「う……ん。あれ? 私は切り刻まれた後……
最後に刺されて……どうして生きて……
ドゾム……どうしてこんな所に?」
意識が混濁しているレティアさんに向けて、
俺はゆっくりと話しかける。
「初めまして。私はリンドウと申します。
ドゾムさんと共にこちらにお邪魔したところ、
レティアさんが倒れているのを発見しました。」
レティアさんがゆっくり身体を起こす。
「そう……私は助かった……。
いえ、ドゾムとあなた──リンドウ様に助けられたのですね。
何とお礼を言ったらいいのか……。」
「いえ、お礼なんて……。
間に合ってよかったです。
それで……一体何があったのでしょうか?」
ドゾムさんが我に返る。
「そうじゃ! 一体、誰がお前さんをこんな目に合わせたんじゃ!」
レティアさんが言い淀む。
「それは……」
俺は抑揚を抑えて話しかける。
「無理にとは言いません。
ですが──もし無差別ではなく“狙われた”のでしたら、
ドゾムさんの恩人であるあなたを
そのまま置いて行くことはできません。」
俺はカマをかける。
「犯人はゴーレム族、もしくはドワーフ……しかも身内ですね。
それ以外なら、レティアさんが庇う必要がない。」
レティアさんがびくっと身体を震わせる。
「……このまま、何も聞かずにドゾムと二人で
立ち去ってもらえないでしょうか?」
俺は首を振る。
「先ほども言いましたが、それでは恐らく
次こそレティアさんが命を失うことになるでしょう。
私たちを巻き込むことを案じているのなら大丈夫です。
こう見えて、結構強い……はずですので。」
ドゾムさんが薄目で見上げる。
「はずとは何じゃ、はずとは。
間違いなく強いじゃろうが!
何でそんなにお前さんは自信がないんじゃ。」
俺は右手で頭の後ろを押さえる。
「いやぁ……性分でして……。
実際、戦闘については自信はないです。」
レティアさんが上品に噴き出す。
「ふふっ。この状況でそんなに和やかに話せるなんて……。
ドゾム、随分と豪気なお友達ができたのですね。」
「友達ではないんじゃがな……。」
「ビジネスパートナーですかね?」
レティアさんの瞳が意を決した様にこちらを見つめた。
「……わかりました。それではお話ししましょう。
今、ゴーレム領で起こっている出来事を……。」
俺はドゾムさんと二人、唾を飲み込み、
レティアさんの話に耳を傾けた。




