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23話 お人好しと巻き添え

この世界のどこかに魔鉱より優れた素材がないか。

もしくは、ゴーレムに頼らない方法での高品質な魔鉱の精錬。

それを新天地で探してみたい──

それがドゾムさんの希望だった。


俺は思わず口に指を当てる。


「その夢、是非私にもお手伝いさせてください。

 ですが……その目処が立つまで、魔鉱ではない素材での鍛冶となりますが

 よろしいのでしょうか?」


「構わん。どうせここに居ても、魔鉱というだけで

 数打ち品を作っているに過ぎん。

 住む場所と工房、それに飯と酒は提供してくれるんじゃろ?」


「はい、もちろんです。

 ですが、一つだけこちらから……いえ、私から条件があります。」


ドゾムさんが唾を飲み込む。


「なんじゃ? あらたまって。」


「もし、戻りたくなったら……いつでも戻ってください。

 辛くなってまで残ってもらうのは、本望ではありません。」


ドゾムさんが目を見開く。


「お前さんは変わった奴じゃな。

 普通は“成果が出るまでは”とか、“最低でも何年は”とか

 そういうのが条件だと思うがの。」


俺は首を振る。


「そんな条件を出しても、人の心は縛れません。

 その時は、ドゾムさんが戻りたくないと思えるほどの環境を

 用意できなかった私の落ち度です。」


「はぁ……お前さんは相当なお人好しじゃな。

 だが……その芯は気に入った!

 決まりじゃ。儂は亜人族に世話になろう。」


「ありがとうございます!

 これからよろしくお願いいたします!」


俺はドゾムさんと、がっちりと固い握手をした。

そして、出発は明日以降ということで、

新しい門出を乾杯し、杯を酌み交わした。


その夜、ガオト様に携帯電話魔術をかける。


「もしもし、ガオト。聞こえるかな。」


「あぁ、聞こえている。なんだ、その“もしもし”って。」


「俺の元いた世界のお約束というか……語源は“申します申します”だったかな。

 諸説あったけど……って、そんな話はどうでもいいんだけど。」


俺は本題に入る。


「ドワーフの一人が──ドゾムさんって言うんだけど、

 亜人族の村に来てくれることになった。」


俺はことの経緯を説明した。


「この……人たらしめ。」


「え? 何か言った?」


電話口の向こうで、ガオト様の溜息が聞こえる。


「何でもない。それで、こっちにはいつ頃戻ってくるのだ。」


「えっと、ドゾムさんの荷物を整理して……

 あと、ドゾムさんが“お世話になったゴーレムに挨拶したい”って言ってるから、

 はっきりとはわからないけど……少なくとも二週間はかかるかな。」


「二週間か……。」


「うん。それで、そっちに変わったことはない?」


ガオト様が短く告げる。


「ある。」


俺は慌てて聞きなおす。


「何があった? カイとライ?

 それとも服飾工房のメンバー?」


「私が寂しい。」


「……そっか。俺もだ。」


「ふっ、半分は冗談だ。

 ともあれ、誘致できるドワーフが見つかってよかったな。

 とっとと用を済ませて戻ってこい。」


「あぁ、わかった……。

 それじゃ、切るよ。……おやすみなさい。」


「あぁ。おやすみ。」


そう言って、俺は頭の中で通話をオフにする。


──翌日から、ドゾムさんの家の整理を手伝った。

万能魔術でアイテムボックス……は実現できなかったので、

とても大きなリュックを作り、怪力で背負うことにした。


「すまんの。思いのほか嵩張ってしまったわい。」


「いえいえ。鍛冶道具に武具に、当面の素材です。

 これくらい当たり前ですよ。」


既に一トンくらいの荷物だが、問題なく背負えている。

神様から与えられた怪力さまさまである。


一週間ほどしてようやく整理が終わり、出立の日が訪れた。


「さて、行くとしようかの。」


「はい。ですが、ドワーフの皆さんにご挨拶はよろしいのですか?」


「長老には伝えてある。

 お前さんが酒場で話した、あの爺じゃな。」


「なるほど、わかりました。

 それで……ゴーレムの住む地域に立ち寄るのでしたね。」


「あぁ。儂に身体──魔鉱を譲ってくれていた

 アイアンゴーレムに挨拶をしていこうと思ってな。」


「わかりました。それでは参りましょう。」


ドワーフ自治区からゴーレムの住む地域までは

結構な距離があったため、道中、ドゾムさんに

リュックの上で寝てもらい、身体強化で駆け抜けた。

そして、ゴーレムの住む地域に到着した。


ゴーレムの家の前で、ドゾムさんが呼びかける。


「おーい!

 ……何じゃ、反応がないのう……。」


しばらく呼びかけたが反応がないことにしびれを切らし、

ドゾムさんが家の中に入っていったので、

俺は玄関の前で待っていたのだが──


「うわぁああ!」


ドゾムさんの悲鳴が聞こえ、

俺は慌てて家の中に飛び込んだ。


そこには、腰を抜かして両手を床につけたドゾムさんと、

ボロボロになったゴーレムが横たわっていた。

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