表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/31

22話 お人好しと魔力操作

振り返ると、一人のドワーフが腕を組んでいた。

そして、重々しく口を開く。


「さっきの話について、詳しく聞かせい。

 ……ここじゃ人目がある。儂の工房についてこい。」


無言で頷き、彼のあとをついていくと、

自治区の少し外れにある立派な工房に案内された。


「……入れ。茶くらいは出してやる。」


誘導された椅子に座ると、

穀物を炒った殻で淹れたと思われる、

熱い香ばしいお茶を出してくれた。


「さて、まずは自己紹介じゃな。

 儂の名前はドゾム。お前さんはリンドウだったか。

 それで、何で亜人族領で鍛冶を興そうと思ったんじゃ?」


俺は、自分が違う世界から来たという部分はぼかしつつ、

亜人族の村で衣食住の改善に目処が立ったこと、

次に産業の発展を目指して冶金・鍛冶に着手したいこと、

そのため知識と経験が豊富なドワーフを勧誘に来たことを告げた。


俺はドゾムさんに問いかける。


「工房に並んでいる武器や防具を見たところ、

 ドゾムさんは相当に腕の立つ鍛冶職人だと思いますが……

 いかがでしょうか?」


ドゾムさんは腕を組み、天井を見上げる。

うーむ……ふーむ……と呟きながら思考を巡らせている。


「何から話したもんか……まあよい。

 儂がお前さん──リンドウを呼び止めた理由じゃが……

 すまんが話にまとまりがつきそうにない。」


俺は口角を上げ、掌を上に向ける。


「どうぞ、どうぞ。今の私にはどんな話でも

 ありがたい知見となります。

 お好きな順序で話してください。」


「うむ……助かる。

 お主は魔石、魔鉄……要するに“魔鉱”と呼ばれる物の存在は知っておるな?」


「えっと、ゴーレム族の身体がそれらに当たるとお聞きしました。」


「そうじゃな。それは間違いではないが、別にそれだけが魔鉱の作り方ではない。」


そう言って、ドゾムさんが針金を目の前に置く。


「これに魔力を通してみろ。」


俺は針金を手に取り……魔力を流──


「すみません、魔力を流すってどうやるんですか……?」


ドゾムさんがお茶を噴き出す。


「なんじゃ? お前さん、凄い力を感じるのに

 魔力操作が出来んとはどういうことじゃ?!

 魔力を扱う者の基本中の基本じゃぞ!」


神様のカタログポイントで万能魔術を覚えたが、

どうやら基礎を飛ばして応用だけ覚えた状態らしい。

カタログギフトを確認すると、

“魔力操作・10,000ポイント”が見つかったので、急いで取得する。


「久しぶりで忘れていました。

 試してみます。失敗したらすみません。」


針金に魔力を流し込むイメージをする。

すると──針金が淡く光った。


「できました!」


「うむ、それでよい。それでその針金は、魔鉄になったわけじゃ。」


「あれ? こんなに簡単に出来るなら、

 ゴーレム族に頼る必要もないのでは?」


ドゾムさんが、予想通りとばかりに笑い、

鉄のインゴットをゴトリと目の前に放り投げた。


「今度はそれに魔力を通してみろ。」


インゴットに魔力を流し込むイメージをする。

……できないことはないが、反発というか抵抗がある。

そこで、一気に流し込んでみる。


よし……染ま──と思った瞬間、

インゴットがひび割れてしまった。


「まさか、一気に流し込むことができるとは……

 お前さん、相当な魔力の持ち主じゃな。


 まぁ、そういうわけじゃ。

 鉱石の塊が大きくなるほど、魔力を流し込むのが難しくなる。

 かといって一気に流し込むと、抵抗と反発で劣化する。」


ドゾムさんが首を振る。


「かといって、針金くらいの大きさで魔鉱化したものを

 溶かしてまとめると、魔力が揮発してやはり劣化する。


 現状、ある程度の大きさの魔鉱を手に入れようと思ったら、

 ゴーレム族の体内で生成してもらうしかないんじゃ。」

 

俺は魔鉱の性質について推測を立てる。


なるほど。

恐らく面積が増えるほど、乗数のように抵抗が増えていくのだろう。

抵抗が大きい鉱物を一気に染め上げると、

熱した陶器に突然冷水をかけたように

衝撃が大きくなってしまう。


だから、抵抗が多いほど一定の速度で緩やかに

魔力で染め上げる必要があり。

それをゴーレムは、自分たちの身体で行うことができる。


ドゾムさんが、自嘲したように告げる。


「協力関係……と言えば聞こえはいいがの。

 己の力だけで最も重要な素材を精錬できぬ鍛冶師が

 “至高の一振り”などと……笑わせるなと、儂は思っておった。」


俺は慎重に言葉を選ぶ。


「つまり、ドゾムさんはゴーレム族に頼らない

 魔鉱の作り方──もしくは、それ以上の素材を

 追い求めているのでしょうか?」


ドゾムさんがゆっくりと頷く。


「そうじゃな。夢物語かもしれんが……

 だが、探しもせずに諦めたくはないんじゃ。」


俺は思わず賞賛の言葉を贈る。


「ドゾムさん、あなたは素晴らしい挑戦者です。」


ドゾムさんが照れたように頭を掻く。


「まだ何もしとらんわい。……さて、話を続けるぞ。」


俺はドゾムさんに続きを促した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ