19話 お人好しとゴーレム領
ドワーフを勧誘すると決めた一ヶ月後。
俺は、ゴーレムたちが統治する地域の境にいた。
「ガオト様、お見送りありがとうございます。」
「やり直しだ。」
「……ガオト、見送りありがとう。」
「それでいい。さて、私が案内してやれるのはここまでだ。
本当はついていきたいが、そうもいかなくてな。」
俺はガオト様の両手を包む。
「いや、十分だよ。亜人族の統治や防衛もあるんだ。
ガオトが留守にするわけにはいかないのはわかっている。」
俺はゴーレム領の境を見て感嘆する。
──まさか、境が空に届かんばかりの石でできた外壁とは。
流石、金属や鉱石の種族が管理する国だな……。
ガオト様が説明してくれる。
「あぁ、この外壁はゴーレムの魔王の魔力が張り巡らされている。
破壊するような攻撃でもしかけようものなら、すぐに警備兵が飛んでくる。
……試してみるか?」
俺は勢いよく首を振る。
「するわけないだろう!」
ガオト様が軽快に笑う。
「ふふ、冗談だ。もう少し進めば入城検査の入り口があるだろう。
……気を付けていくことだ、タケオミに何かあったら、
私は恐らくゴーレム達と全面戦争をしてしまうだろう。」
俺はガオト様を抱きしめる。
「そんな事をさせないように注意するよ……。」
「うむ……せめて連絡が取れれば良いのだがな。」
そこで、俺はある事を思いつき
試していなかった万能魔術を試してみた。
「携帯電話!」
ガオト様の顔を思い浮かべながら話しかけてみると
困惑した表情を浮かべる。
「これは……思念伝達か?」
俺は頷く。
「似たような魔術かな……?
これで、少なくとも俺からは話しかけられそうだ。」
ガオト様が嬉しそうな顔をする。
「これはいいな。それなら毎晩話せるな。」
「えっ……?」
「毎晩だ。いいな。」
俺はガオト様の圧に負けた。
ちなみに勝った事はない。
「わかった。そうするよ。
さて、それじゃそろそろ行ってくるよ。」
振り返ると、いつまでも手を振っているガオト様が見えた。
その姿が見えなくなるまで歩き──
やがて入城検査の入り口に到着した。
俺は恐る恐る扉を開ける。
「失礼します。ゴーレム領に通していただきたいのですが……」
門の前のカウンターらしき場所には、
ギリシャ彫刻のような石像が一体。
「あれ……誰もいない?」
すると、その石像がしゃべり始めた。
「ここですよ。私が分からないってことは、
あんた、初めてだね?」
思わず驚きの声が出る。
「うわっ……!」
石像が愉快そうに笑う。
「はっはっはっ。久しぶりに見たな、その反応。
私はストーンゴーレムのヘレン。
ここの入城検査官を担当している。」
俺は頭を下げる。
「すみません。知らぬ事とはいえ、失礼な真似を致しました。」
動かない表情のまま、ヘレンさんが朗らかな声で返す。
「何、いいってことさ。他所から来た初見は大体同じ反応だ。
それにしても珍しいね。あんた、人間だろ?
この地域が初めてなら、ゴーレム領について説明受けとくかい?」
俺は90度のお辞儀をする。
「是非、お願い致します!」
こうして俺は、ヘレンさんからゴーレムについて学ばせてもらうことにした。




