18話 お人好しと洋裁
◇半年後
その間にした事といえば、麻畑や綿畑を育て、
繭を作る虫を養殖し、羊毛を刈り取るといった──
衣服に必要な下準備だった。
ちなみに、あの後。
カイやライやデインにもガオト様の事を祝福された。
それと、嬉しい誤算だったのが……
神様から貰ったスキルを交換できる“カタログギフト”のポイントだ。
──199,998ポイントが溜まっていた。
ガオト様とお付き合いする前に行った、
食の部分で加算されたのだろうか。
とりあえず、今すぐ欲しいスキルはないので保留にしておいた。
そして本日、遂に──亜人族初めての仕立てが完成した。
猫人族のミアが選んだ素材は麻。
ロングワンピース。
翼人族のユーリが選んだ素材は綿。
エンブロイダリーブラウス。
蜘蛛人のレイネが選んだ素材は絹。
(厳密には違うが、絹と呼ぶことにした)
繭から作った糸でテーラードジャケット。
羊人族のガルガが選んだ素材は羊毛。
スラックスだった。
ミアは着替えると、くるくる回っている。
「かわいいにゃ。ひらひらにゃ。」
ユーリとレイネは素材について話し合っていた。
「糸の一本一本に魔力を込めたから、
リンドウに貰った服より丈夫そうだわ。」
「そうだな。これなら、自分の魔力で
物質化した衣服より強度がありそうだ。」
ガルガは少し後悔していた。
「うーむ……やはり上着も作ればよかった。
だが着心地は良いな。これが“糸から作る仕立て”か。」
俺は全員に向かって声をかける。
「皆さん、これで衣服工房に必要な
生産から加工までの全工程が終わりました。
しばらくは材料の収穫や、技術の研鑽、普及に努めてください。」
ミアが首を傾げる。
「どういうことにゃ?
これからどんどん服を作って皆に配るんじゃないにゃ?」
俺は両手を前に組む。
「そうですね……説明が難しいのですが。
本来、カイ達が行っている住居の建築や、
今回皆さんに行ってもらった洋裁は“産業”──
つまり労働にあたるので、対価が必要になります。
今はガオト様からの命令で福祉……えっと、奉仕になっていますが、
ゆくゆくは様々な分野で産業を興し、
それぞれが報酬を得る形にしたいと思っています。
今はまだ足元を固めている段階なので、
皆さんには自分たちの一族で衣服に興味がある方に、
今回得た知見や経験を伝えて広めておいて欲しいのです。」
ユーリが要点をまとめる。
「つまり、今後私たちみたいに“衣服以外のもの”を作るチームが出来たら、
私たちはそれらと衣服を交換できる。
それを亜人族全体が行う……って感じでいいのかしら?」
レイネが後に続く。
「それで、今私たちが衣服を作って配るだけになると、
対価がないから不公平になる……と。」
俺はそれに首肯する。
「そうです。すみません。
ですが、皆さんが練習したり、自分の意志で作って配ることまでは止めません。」
ガルガが口を開く。
「あまり、対価がないなど気にしていなかったがな……。
ガオト様の魔力供給に比べれば、我らの労働など微々たるものだ。
だが番のリンドウが言うのだ。我々は言う通りにしよう。
ところで、そう言うからには──
次の産業の目処は立っているのか?」
「えぇ、そうですね。次は──」
◇その夜
「というわけでガオト様、次は冶金・鍛冶に着手したいと思います。」
「やり直しだ。」
「……というわけでガオト、次は冶金・鍛冶に着手する。」
「よいだろう。」
最近、せめて二人きりの時くらいは
いい加減もっと馴れ馴れしくしろ、くだけて喋れ──と教育を受けている。
ガオト様が呆れた顔をする。
「半年も経つのに、未だに成長がないのはどういうことだ。
前の世界でも、一番上とはいかなくても……
人の上に立っていたのだろうに。」
俺は頭を掻く。
「こればっかりは性分なんです……なんだ。」
「親しき中で礼儀がありすぎるのも、
距離を置かれているみたいで失礼だからな?」
「はい……」
ちなみに今、俺はガオト様に膝枕をしてもらいながら
耳かきをしてもらっていて……
気持ち良すぎて寝てしまいそうになる。
「それで、人材に心当たりなどあるか?」
「そうだな……やはり半妖精族、ドワーフだろうな。
変わり者で頑固な連中だ。」
やっぱりいるのか、ドワーフ……。
ん? 半妖精族?
「ドワーフは亜人族ではない?」
「出自は諸説あるがな。
妖精族やエルフと人間から生まれた突然変異というのが
最も流布しているな。
だが天界には住んでいないはずだ。」
「では何処に?」
「酒と金属に目がない奴らでな。
確か、人界と……魔界なら金属生命、
ゴーレムの治める地域にいたかもしれん。
随分昔に聞いた話だ。
今も居るかはわからん。
行ってみるか……?」
「そうだな……そろそろ亜人族以外の地域を
見てみるのもいいのかもしれない。」
俺は次の目的地を。
──ゴーレムの治める地域にいるドワーフを勧誘することにした。




