表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/40

15話 お人好しとカミングアウト

【過去作・他連載のお知らせ】


▼異世界転生・内政群像劇(完結まで順次公開中)

『中華風異世界で目覚めたら、自作一族の少年だった』

https://ncode.syosetu.com/n9512ma/


▼TS・勘違い・無双コメディ(不定期連載中)

『[TS]人類が中世レベルまで衰退した未来。伝説の殺戮ロボに転生した俺は、最強のハッキング能力とエルフメイドの体で、理想の美少年を合法的に(?)育成します。』

https://ncode.syosetu.com/n2867mf/

衣服工房チームを立ち上げたその日の晩。

俺はガオト様に感謝を述べていた。


「ガオト様、素晴らしい方々を紹介して下さり、誠にありがとうございました。」


ガオト様は頬杖をつきながら杯を傾ける。


「その様子だと問題なく打ち解けたようだな。

 ミアはお調子者だが、あれで意外と周りをよく見ている。

 リンドウと気が合うだろう。

 ミア以外も、田畑の件でお前を慕っている者を集めたつもりだ。

 上手く差配することだな。」


俺は空になった杯に酒を注ぐ。


「はい、ご配慮ありがとうございます。

 ご期待に応え、結果を出してみせます。」


ガオト様が酒で少し染まった頬で俺を睨む。


「ところで、私の分はないのか?」


「えっと……何がでございましょう?」


「ミア達には衣服を出したのだろう。

 私にはないのか? 人員を手配してやったのだ。

 それくらいあっても罰は当たらないだろう?」


俺は手を叩き、返事をする。


「承知しました。

 えっと……どのような衣服がお望みでしょう?」


ガオト様が笑みを浮かべる。


「リンドウに任せる。私に似合うと思う服を出せ。」


突然の難題に頭を悩ませる。

正直、何を着ても似合いそうではあるが……。


いくつかイメージを浮かべ、詠唱する。


衣類製造メイク・クローズ!」


服を出し、ガオト様に手渡した。


ガオト様は受け取り、席を立つ。


「待っていろ。着替えてくる。」



そしてガオト様が戻ってきた。


「どうだ、似合うか?」


俺は見蕩れながら正直に答える。


「はい。よくお似合いです。」


渡したのは黒のチャイナドレスと扇子。

真紅の髪が映えると思ったのだ。


ガオト様は自分の姿をまじまじと見つめる。


「しかし、これは中々……。

 足を上げるとスリットで太ももが丸見えだな?

 そうか、リンドウはこういう服が好きか。」


俺の返事が詰まる。


「いえ、その……そういった意図があったわけではなくてですね。」


ガオト様がクスッと笑う。


「リンドウ、立て。」


俺が立ち上がると、ガオト様が近づいてきた。

そして──俺の首に腕を回す。

吐息が触れる距離。心臓の鼓動が跳ね上がる。


俺は覚悟を決めた。


「ガオト様……実は言わなければならない事があります。」


「言ってみろ……。」


俺は全てを打ち明けた。

この世界の住人ではないこと。

神様からご褒美でポイントと能力を貰ったこと。

この世界に来た理由。

そして──名前のこと。


その間、ガオト様はずっと黙って聞いていた。


「今まで本当の事を言えず……すみませんでした。」


ガオト様がゆっくりと口を開く。


「名前が林同リンドウ 偉臣タケオミ……。

 そうか、タケオミか。

 そうだな、お前の判断は正しかった。

 初対面でそんな夢みたいな話をされて、

 信じられる者はいないだろう。」


そして、少し呆れた顔をする。


「この世界に来た理由が“善い行いが出来るから”というのが……

 今となっては疑う余地がない。」


気が付くと、ガオト様の肩が震えていた。


「なぁ、タケオミ。

 異世界から来て、この村に初めて訪れた時……どう思った?

 怒りはしない。正直に言え。」


なぜ今そんな話を──と思ったが、

俺は聞かれた通りに答えた。


「そうですね。住居だけの感想になりますが……

 文明が発展していないと感じました。」


「正直に言えと言ったのに……言葉を選んだな。」


ガオト様が続ける。


「私はずっと悩んでいた。

 この亜人族の窮状を、満足に食べることすらできない現状を

 どうにかしたいと。

 土地に魔力を送り活性化させても、焼け石に水……ジリ貧だった。

 そんな時に突然現れて、何も求めず助けてくれたのが──

 タケオミ、お前だ。」


俺は、かねてからの疑問を口にしてしまう。


「ガオト様以外の……紅狼族は……」


ガオト様は静かに、はっきりと告げた。


「私以外は、既に滅んでいる。」


「……すみません。」


「もう二百年以上前のことだ。

 とっくに吹っ切れている。」


そう言いながらも、ガオト様の瞳はわずかに潤んでいた。


「それでも、寂しくなかったと言えば嘘になるがな。

 なぁ、タケオミ。

 お前はこの世界で“善い行い”をするのが目的だったな?

 それを止めるつもりはない。

 だが……私を側に置くつもりはないか?」


俺は慎重に言葉を選び、返事をした。


「そうですね。

 この世界で善い行いをすることをやめるつもりはありません。

 そういえば、神様が私に言っていました。

 “自身にメリットがないと理解した上で行った善行のみ、

  ポイントは加算される”と。


 ですが……今後、ポイントがたまることはないでしょうね。」


ガオト様が不思議そうに眉を寄せる。


「何故だ?」


俺は、自分にできる一番の優しい笑顔を向けた。


「この世界で善いことをして、この世界が良くなったら……

 それはガオト様の住む世界が良くなるということです。

 それは、私にとっての“幸せ”になってしまうから。」


ガオト様の目から、水滴がこぼれ落ちた。


「……馬鹿。

 そんなことを言われたら……」


ガオト様がそっと俺の胸に体を預ける。

小さく震える鼓動が伝わってきた。

せきを切ったように涙を流す顔を、俺はそっと両手で包み込む。

──そして、どちらからともなく唇を重ねた。

最後までお読みいただきありがとうございました。


本作はプロットなしのライブ感で、毎日コツコツ書き進めております。

もし「続きが気になる」「このテンポが好き」と感じていただけましたら、

応援代わりに【ブックマーク】や【★評価】、感想など

足跡を残していっていただけると励みになります。

次の話への大きな原動力になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ