15話 お人好しとカミングアウト
【過去作・他連載のお知らせ】
▼異世界転生・内政群像劇(完結まで順次公開中)
『中華風異世界で目覚めたら、自作一族の少年だった』
https://ncode.syosetu.com/n9512ma/
▼TS・勘違い・無双コメディ(不定期連載中)
『[TS]人類が中世レベルまで衰退した未来。伝説の殺戮ロボに転生した俺は、最強のハッキング能力とエルフメイドの体で、理想の美少年を合法的に(?)育成します。』
https://ncode.syosetu.com/n2867mf/
衣服工房チームを立ち上げたその日の晩。
俺はガオト様に感謝を述べていた。
「ガオト様、素晴らしい方々を紹介して下さり、誠にありがとうございました。」
ガオト様は頬杖をつきながら杯を傾ける。
「その様子だと問題なく打ち解けたようだな。
ミアはお調子者だが、あれで意外と周りをよく見ている。
リンドウと気が合うだろう。
ミア以外も、田畑の件でお前を慕っている者を集めたつもりだ。
上手く差配することだな。」
俺は空になった杯に酒を注ぐ。
「はい、ご配慮ありがとうございます。
ご期待に応え、結果を出してみせます。」
ガオト様が酒で少し染まった頬で俺を睨む。
「ところで、私の分はないのか?」
「えっと……何がでございましょう?」
「ミア達には衣服を出したのだろう。
私にはないのか? 人員を手配してやったのだ。
それくらいあっても罰は当たらないだろう?」
俺は手を叩き、返事をする。
「承知しました。
えっと……どのような衣服がお望みでしょう?」
ガオト様が笑みを浮かべる。
「リンドウに任せる。私に似合うと思う服を出せ。」
突然の難題に頭を悩ませる。
正直、何を着ても似合いそうではあるが……。
いくつかイメージを浮かべ、詠唱する。
「衣類製造!」
服を出し、ガオト様に手渡した。
ガオト様は受け取り、席を立つ。
「待っていろ。着替えてくる。」
◇
そしてガオト様が戻ってきた。
「どうだ、似合うか?」
俺は見蕩れながら正直に答える。
「はい。よくお似合いです。」
渡したのは黒のチャイナドレスと扇子。
真紅の髪が映えると思ったのだ。
ガオト様は自分の姿をまじまじと見つめる。
「しかし、これは中々……。
足を上げるとスリットで太ももが丸見えだな?
そうか、リンドウはこういう服が好きか。」
俺の返事が詰まる。
「いえ、その……そういった意図があったわけではなくてですね。」
ガオト様がクスッと笑う。
「リンドウ、立て。」
俺が立ち上がると、ガオト様が近づいてきた。
そして──俺の首に腕を回す。
吐息が触れる距離。心臓の鼓動が跳ね上がる。
俺は覚悟を決めた。
「ガオト様……実は言わなければならない事があります。」
「言ってみろ……。」
俺は全てを打ち明けた。
この世界の住人ではないこと。
神様からご褒美でポイントと能力を貰ったこと。
この世界に来た理由。
そして──名前のこと。
その間、ガオト様はずっと黙って聞いていた。
「今まで本当の事を言えず……すみませんでした。」
ガオト様がゆっくりと口を開く。
「名前が林同 偉臣……。
そうか、タケオミか。
そうだな、お前の判断は正しかった。
初対面でそんな夢みたいな話をされて、
信じられる者はいないだろう。」
そして、少し呆れた顔をする。
「この世界に来た理由が“善い行いが出来るから”というのが……
今となっては疑う余地がない。」
気が付くと、ガオト様の肩が震えていた。
「なぁ、タケオミ。
異世界から来て、この村に初めて訪れた時……どう思った?
怒りはしない。正直に言え。」
なぜ今そんな話を──と思ったが、
俺は聞かれた通りに答えた。
「そうですね。住居だけの感想になりますが……
文明が発展していないと感じました。」
「正直に言えと言ったのに……言葉を選んだな。」
ガオト様が続ける。
「私はずっと悩んでいた。
この亜人族の窮状を、満足に食べることすらできない現状を
どうにかしたいと。
土地に魔力を送り活性化させても、焼け石に水……ジリ貧だった。
そんな時に突然現れて、何も求めず助けてくれたのが──
タケオミ、お前だ。」
俺は、かねてからの疑問を口にしてしまう。
「ガオト様以外の……紅狼族は……」
ガオト様は静かに、はっきりと告げた。
「私以外は、既に滅んでいる。」
「……すみません。」
「もう二百年以上前のことだ。
とっくに吹っ切れている。」
そう言いながらも、ガオト様の瞳はわずかに潤んでいた。
「それでも、寂しくなかったと言えば嘘になるがな。
なぁ、タケオミ。
お前はこの世界で“善い行い”をするのが目的だったな?
それを止めるつもりはない。
だが……私を側に置くつもりはないか?」
俺は慎重に言葉を選び、返事をした。
「そうですね。
この世界で善い行いをすることをやめるつもりはありません。
そういえば、神様が私に言っていました。
“自身にメリットがないと理解した上で行った善行のみ、
ポイントは加算される”と。
ですが……今後、ポイントがたまることはないでしょうね。」
ガオト様が不思議そうに眉を寄せる。
「何故だ?」
俺は、自分にできる一番の優しい笑顔を向けた。
「この世界で善いことをして、この世界が良くなったら……
それはガオト様の住む世界が良くなるということです。
それは、私にとっての“幸せ”になってしまうから。」
ガオト様の目から、水滴がこぼれ落ちた。
「……馬鹿。
そんなことを言われたら……」
ガオト様がそっと俺の胸に体を預ける。
小さく震える鼓動が伝わってきた。
せきを切ったように涙を流す顔を、俺はそっと両手で包み込む。
──そして、どちらからともなく唇を重ねた。
最後までお読みいただきありがとうございました。
本作はプロットなしのライブ感で、毎日コツコツ書き進めております。
もし「続きが気になる」「このテンポが好き」と感じていただけましたら、
応援代わりに【ブックマーク】や【★評価】、感想など
足跡を残していっていただけると励みになります。
次の話への大きな原動力になります。




