13話 お人好しとスタートアップ
翌日、ガオト様が召集をかけた亜人が集まる場所へ向かうと、
そこにいたのは──猫人族、翼人族、蜘蛛人族、羊人族だった。
俺は全員に向かって挨拶をする。
「初めまして、リンドウと申します。
今回は私のわがままに付き合わせてしまい申し訳ありません。
皆さんのお名前をお聞かせ願えますでしょうか?」
猫人族が一歩前に出る。
「猫人族のミアにゃ。手先は器用だと思うにゃ。」
翼人族が軽く翼を揺らす。
「翼人族のユーリよ。言うまでもないけど、空が飛べるわ。」
蜘蛛人族が静かに名乗る。
「蜘蛛人族のレイネだ。糸の扱いには長けている。」
最後に羊人族が短く言う。
「羊人族のガルガだ……。」
「ありがとうございます。
ミアさん、ユーリさん、レイネさん、ガルガさん。
これからよろしくお願いします。」
ミアが少し遠慮がちに手を挙げた。
「私たちに敬称は不要にゃ。
私もあなたに“様”はつけないが……それでいいにゃ?」
「はい。お好きに呼んでいただいて構いません。
私もその方が気楽です。」
その時、ガルガが舌打ちした。
「ちっ……気に入らんな。」
俺はガルガに問いかける。
「私に何か……?
あいにく魔界の常識にも疎く、
もし気分を害することをしていたら申し訳ない。
できれば理由を教えていただけると助かります。」
ガルガは睨むように言った。
「その態度が気に入らんと言っている。
お前は凄いことをやって、俺たちは魔王ガオト様に呼ばれて来ている。
なのに何故そこまでへりくだる?
力ある者が下手に出る姿は見ていて気分が悪い。
何を企んでいるんだとな。」
「なるほど……一理ありますね。
少し考えさせてください。」
俺は短く思案し、言葉を選ぶ。
「今から言うことで、ガルガが納得するかはわかりませんが……。
ガオト様に呼ばれたとのことですが、
それは“ガオト様が凄くて偉い”のであって、
私とは関係のないところです。
次に──私はあなた方に出来ないことが出来ます。
ですが、それは“凄い”のであって“偉い”のではありません。
そして……きっとここにいる皆さん全員が、
私に出来ないことを出来るでしょう。
仮にそれがなかったとしても、
そのことは私が敬意を払わない理由にはなりません。」
俺はガルガに手を差し出した。
「これから、お互いに信頼関係が築けたら、
もっと気安くなるかもしれません。
そうなれるといいですね。」
ガルガはしばらく俺を睨んでいたが、
やがて呆れたように息を吐いた。
「なるほど……ただのお人好しか。
ふっ、毒気を抜かれてしまったな。」
そう言って、俺の手を握り返してくれた。
ミアがガルガを揶揄う。
「相変わらず、ガルガは変なところで頑固だにゃ。
昨晩、呼ばれてあんなに喜んでたくせににゃ。」
ガルガが狼狽する。
「ミア、余計なことを言うんじゃない!」
……なるほど。
ガルガはツンデレというか、
“認めた相手には威厳を持っていてほしいタイプ”なのだろう。
自分で分析すると、少しくすぐったい。
ユーリが場を引き締める。
「それで、私たちは何をすればいいのかしら。
ガオト様には“リンドウの指示に従え”としか聞いていないけど。」
今回は建設と違い、できれば原材料の加工から始めたい。
だが、どう説明するべきか……。
よし、ゴールを先に見せよう。
「衣類製造!」
万能魔術で、四人に似合いそうな服を作り出し、手渡した。
ミアの目が、驚いた猫のように丸くなる。
「今、何をしたにゃ……。
この服、着てもいいにゃ!?」
俺は頷き、説明を続ける。
「はい、これは皆さんへのプレゼントです。
今の服は魔術で出しましたが、
最終目標は──このような衣服を、様々な素材で、
自由にデザインして作れるようにすることです。」
続けて詠唱する。
「衣類図録!」
現代日本の衣服が掲載されたカタログを渡す。
「こうやって、皆が自分の魔力で物質化したものではなく、
その日の気分で“購入した服”で着飾れるようにしたい。
そのために、皆さんのお力を貸してください。」
ユーリが着替えた服を軽くつまみながら言う。
「へぇ……耐久性は心もとないけど、かわいいわね。
気に入ったわ。」
レイネが続く。
「耐久性については、素材にもよるのではないか?
魔力を通した糸なら、もっと頑丈にできそうだ。」
ガルガが俺の方を見る。
「ゴールはわかった。
要するに──魔界で取れる材料から衣服を作りたいんだな?」
俺は頷く。
「はい、その通りです。
では、これからの段取りを説明します。」
こうして、亜人村での“衣服工房”への取り組みが始まった。




