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11話 お人好しと竣工祝い

意識改革から数か月後。

カイの住居がついに完成し、無事竣工を迎えた。


俺は前回の問題がすべて解消されていることを確認し、

最後に万能魔術で非破壊検査(NDT)を行う。

全ての基準値を満たしていた。


家の前に全員を集め、俺は深く頭を下げた。


「皆さん、本当にお疲れさまでした。

 この家は、どこに出しても恥ずかしくない品質です。」


デインがライに向き直り、頭を下げる。


「ライ……お前を。お前達一族を軽んじる発言をしてすまなかった。」


ライは首を振り、手を差し出した。


「いや、力仕事ではワーベアの方が優れているのは事実だ。

 俺の方こそ、建設中は色々と厳しいことを言った……。

 それでも、お前たちが応えてくれたから完成できた。」


デインはその手を握り、二人は固い握手を交わした。

ワーベアの中には、感涙している者もいた。


デインが俺に向き直る。


「リンドウ様、ありがとうございます。

 今回の建設を通して、物を作る厳しさを学ぶことが出来ました。

 ですが、それ以上に……この胸の内から、

 かつてないほどの達成感が込み上げています」


「ぜひ誇ってください。

 皆さんは、それだけのことをしました。

 さぁ、今日は盛大にお祝いをしましょう。

 カイ、お願いします。」


カイが扉を開け、中へ入ると、皆に手招きをした。


「さぁ、入ってくれ。

 皆が俺のために建ててくれた家だ。」


その日は、カイの家で飲めや騒げの大宴会だった。

そして主役であるカイと語らった。


「リンドウ様、ありがとうございます。

 まさかこのような立派な住居を頂けるとは思っていませんでした。

 それにしても……広すぎないでしょうか?」


竪穴式住居から、現代日本の5LDKへ。

縄文時代から一足飛びと言っていい。

カイの驚きも当然だ。


「えっと……一人だと広いかもしれませんが、

 カイに良い相手が見つかっても問題ないようにと。

 土地は余っているようなので、広めにしました。」


「良い相手、ですか……いやぁ……

 それが中々難しいですね。」


するとライが口を挟む。


「何だ? こないだ口説いてた子は駄目だったのか?

 何なら俺の一族から紹介してやろうか?」


俺は思わず、好奇心で聞いてしまった。


「ゴブリンとワーウルフ……というより、

 異種族でも問題ないんですか?」


デインが乱入してくる。

この手の話は、やはり酒の肴になりやすいらしい。


「特に問題はありませんね。

 産まれてくる子供は、親の特性のどちらかを色濃く受け継いだり、

 新種族になったりします。

 それでカイ、何ならうちの一族でもいいぞ。」


カイは言葉を濁す。


「とりあえず……気持ちだけ受け取っておく。」


この手の話題は、本人が嫌がっていたり乗り気でなければ

深く追及しないのがマナーだ。

俺は話題を変える。


「それにしても……下水。

 排水を気にしなくて良いのは便利ですね。」


カイが笑う。


「あぁ、そういえばこの村に来た時も、

 ペットスライムに食べさせることについて驚いていましたね。」


「えぇ。まさか各世帯でスライムを飼っていて、

 それが不要になったものを全部食べてくれるなんて……。」


究極のエコシステムだなぁ……と思った。


デインが杯を飲み干し、真剣な表情になる。


「それでリンドウ様。

 今回の件で、まだ我々では

 リンドウ様の深いお考えに及ばぬと

 つくづく思い知らされました。

 今後はどのようになさるおつもりなのでしょう?」


俺は全員に聞こえるよう、少し声量を上げた。


「そうですね。まずは今回建築に関わったワーベアの皆さんを

 リーダーとしたチームを編成したいと思います。

 今回皆さんが“感じて”“学んだこと”を伝えてください。

 これで建設チームが一つから七つほどになりますので、

 それを繰り返し、チームを増やしていきたいと思います。」


ライが挙手して言う。


「つまり、建設の速度を増やすということですね。

 それで次に建てる家は、ガオト様の宮殿でしょうか?」


「いえ、次は皆さんの住居を順次建設していきましょう。

 その中で、実際に建てた家に住み、

 自分で体験したことを建設に生かしてほしいのです。」


製作者は使用者でもある必要がある。

自分が知らないものを、人に説明することはできない。


俺は話を続ける。


「並行して、今は建材を私が供給していますが、

 建材そのものを作る部隊を作りたいと思っています。

 私の手から離れて、真の自給自足を目指してもらいます。」


デインが我慢しきれず問いかける。


「それで……ガオト様の宮殿はいつになるのですか?」


俺はわざと口角を吊り上げた。


「ある程度、住居の建設が終わったら、

 各チームから腕の良い優秀な者を選抜します。

 なので皆にはこう言ってください。


 “ガオト様の宮殿建設に関わる誉れを得たければ、

  常にどうすれば良い物が仕上がるか考え、腕を磨くように”と。」


今は理解できなくてもいい。

だが、自分で考える思考を育てれば、

きっとこれからの場面で役に立つだろう。


気が付けば、場は静まり返っていた。

やがてカイを先駆けに、拍手が送られた。


俺は頭を下げ、場を仕切り直す。


「すみません。祝いの席で興が冷めることを語ってしまいました。

 さぁ、飲みましょう。皆さん、また明日からよろしくお願いします。」


こうして宴が終わると、俺は帰路へ──

というより、いつの間にかなし崩し的に住むことになっている

ガオト様の家へ戻った。


家に入ると、ガオト様に呼び出された。


「随分と、私がいない席で楽しんだようだな?」


……なぜだろう。

別に悪いことをしていないのに、どこか罪悪感を覚える。


ガオト様は、少し拗ねたような表情で話を続けた。

気のせい……ではない。


「それで、リンドウよ。

 お前はこれで亜人族の“食”と“住”を劇的に改善してくれたわけだ。

 住の方はまだ時間がかかるだろうが、

 それでも走り始めが可能な土台を敷いてくれた。」


そして、ほんの少しだけ不安そうな顔になる。


「次は……どうするつもりだ?」


俺は考えていたことを、打ち明けた。

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