その96・不良の姉
私には、二つ上の姉がいる。
幼いころから私と姉は、笑顔で手を繋いで歩くほど、とても仲が良かった。
小学生の時も、私は気弱で人見知りの激しい子であったが、姉はいつも私の傍にいてくれて、一緒に遊んでくれた。
本当は姉にも友達が欲しかったと思うが、私のためにその時間や気持ちを割いてまで、傍で支えてくれた。
だが、高校に進学したタイミングで、姉は崩れてしまった。
毎日夜遅く帰ってきては、部屋に籠って出てくる素振りもない。
右手にはタトゥーを入れたり、金髪でスカートもかなり丈が短い。
それどころか、怪我をして帰って来る時もある。
噂では、タバコや酒もやっていると耳に入ってしまった。
何故、姉はこんなにも不良になってしまったのか。
私のせいなのかもしれない。
気弱な自分のせいで、姉は友達を作るタイミングも失ってしまった。
毎日、後悔をするばかりだ。
そんなある日。
私はいつも通り、高校から帰宅すると、奥のリビングから母親の怒鳴る声が聞こえた。
テーブル席では姉と母が対面で座っており、姉は聞く耳を傾けておらず、ただ爪をいじっている。
「未成年でタバコなんて、法律で禁止されていると知っているでしょ!」
「うるせぇな。法律とかなんだかと知らねぇよ」
「あんたね。人生棒に振ってもいいの?」
「人生なんて、私が決めることなんだよ。黙っていてよ」
「私はあなたの親なの。言うことは聞きなさい」
姉はため息をしてから
「うるせぇ、耳障りだ」
そう言って立ち上がって、私の横を通り過ぎてから階段に向かって行った。
私は姉を追いかけてから
「お姉ちゃん」
姉は立ち止まって舌打ちをしてから
「あんたもあの人の味方?」
「違う」
「だったら何?」
「私のせい? 確かに私は気弱で人見知りが強い。だからこそお姉ちゃんには迷惑かけたと思っている。でも、あの時のお姉ちゃんは大好きだった。私のためにずっとそばにいてくれたし、笑顔で話も聞いてくれた。今のお姉ちゃんはなんか嫌だ。何があったか分からないけど」
すると、姉は私の方に振り返り
「別にあんたのせいじゃないし、私がこうなったのも、ただ私が弱いだけの話だから」
「だったら、昔のお姉ちゃんに戻ってよ」
「馬鹿なこと言わないで。そしたら、誰があんたを守るのよ」
そう言って階段を上がって行った。
今の姉の一言に、私は驚愕した。
まさか、私を守るために不良になったのか。
強く生きるために不良の道を選んだのか。
すると後ろから母親が来て
「あなたも可哀想に。あんな姉を持って」
私はしばらく黙ってから
「そんなこと言わないで。私にとっては大好きな姉だから」
そう言って私も階段を上り始めた。
どんな姿になろうとも、姉は私のことを想ってくれていたのだ。
姉の印象はかなり変わった。
あの一言で。
~終~




