その100・新作発表会
出版会社の編集者をしている俺は、担当している小説家先生のパーティー会場にいる。
ベストセラーを何本も出し、直木賞を既に何度もノミネートされているベテランの小説家だ。
代表作は「氷の魔術」というサスペンス小説であり、ドラマ・映画もされたほどの大ベストセラーを記録した一作である。
俺はそんな作家の担当編集者に選ばれて、とても光栄に思う。
だが、今回はかなり代表すべき日になるかもしれない。
何故なら、小説家先生が作家デビューして100作目の小説出版になるのだ。
既に内容は完成しており、今回のパーティーでは「タイトル」が発表されるのだ。
一体どんなタイトルになり、どんな内容なのか、とても気になることだ。
誰も詳しい内容は知らない。
編集者の自分としては、タイトルを聞いた後に作品を見せてもらう予定だ。
小説家とはまた別に、ドラマの脚本をしている時もあるため。いつの間に書いていたのかと思うと、驚きを隠しきれない。
だが、やはりジャンルなどは気になるため、俺はシャンパングラスを持ちながら、近くにいる編集長に近づく
「今回、ジャンルは分かっているのですか?」
「それも分からないんだ」
「サプライズがお好きな方ですからね」
「そうだ。まぁ記念すべき作品だから、余計にだよな」
「サスペンスですかね」
「俺はそれに賭けている」
「デビュー作も代表作もサスペンスですからね」
「そうだ。それに、ここのところは別のジャンルに挑戦していることもあって、サスペンスを望んでいるファンも大勢いる」
「なるほど」
作家先生の本業は何だと言われると、俺は分からない。
とにかくマルチに書いており、恋愛・ホラー・コメディなどのジャンルを問わずに書いている。
だが、中にはサスペンス色の強い作家だと言われることもあるため、本業はサスペンス作家なのかもしれない。
しばらくして、小説家先生が壇上に上がり、マイクに近づく
「今日はお集まりいただききありがとうございます。今回、記念すべき私の100作目の小説のタイトルを発表したいと思います。早速行きましょう。今回の100冊目のタイトルは」
そう言って、大きな垂れ幕が上から降りてきた。
そこには黒い太文字で「勝利」と書かれている。
「ジャンルは恋愛です。主人公のサラリーマンの男性が一目惚れした女子中学生について回り、勝利を勝ち取ろうとするストーリーです!!」
それはまずいだろ。
完全にストーカーの話だ。
それに犯罪だ。
俺は頭を抱えながらも編集長に
「どうします」
「ビリビリに破いてこい」
「分かりました」
この件がきっかけで、作家先生がパーティーを開くことは二度となかった。
~終~




